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16/23

16・リナリア VS パパ

 あれからだいぶ放置んぐされて、暇だったから、寝てた。考えたら今日は、起きるの早かったもんな。

 

「おい、起きろ」

 

 なんか怒った声で目を覚ました。声のほうを向くと、すでに扉は開いていて、キムラサンが連れていかれるところだった。

 

「こんなところでよく眠れるなあ」

「昔からどこでも眠れるのよねえ」

「変な喋り方だな」

「これもクセなのよね」

「まあいい、お前も出ろ。辺境伯様がお会いくださる」

「やっとかあ」

 

 牢獄に入る際拘束は解かれていたが、再度腕を縛られ、引きずられるように連行された。


 そこは広間だった。おそらく謁見用の、城内で1番大きな部屋だろう。どうして、こんな広い場所に連れてきたのか。


 奥には一段高い場所があり、いくつか椅子が設置されていた。その前に連れていかれて、頭を押さえつけられ、跪く。


 扉が開く音がして、そこから来た人が上段の椅子に座る気配がする。その後に後方からも複数人が入ってくる気配がした。どうやら、見せ物になるようだ。

 

「さて、時間がないから早速始めよう。顔をみせろ」

 

 若い男の声が、広間に響く。それを合図に、我々を拘束する者の手で、顔をあげさせられた。


 台の上には、中年の男性がいた。緑がかった黒髪と赤い目、手入れされた髭が余計に貫禄を誇張する。目は鋭く我々を見ている。はち切れんばかりの張筋が、ムキムキマッチョなボディが、圧が、ぱない。


 この人が、リナリアのパパンね。


 その横にはパパンを若くしたような人が。多分お兄ちゃんよね。


 その隣にはこれまたリナリアに似た可愛い男の子が。いや、なんか黒いオーラを感じるわ。口元は笑っているけど。あ、目が笑っていない。これやばい感じだわ。


 いやあ、リナっちファミリーって感じねえ。怖い。泣いちゃう。帰りたい。

 

 気持ち的には泣いてるワンコなんだけど、私の隣にリナリアもやってきて、少しホッとする。

 

「ここ、極道か何かのお家かしら」

「違うから、マイスィートホームだから」

 

 リナの目が笑ってないんだが。

 

 そんな空気の中、話し合いがスタートした。

 

「お前ら、何者だ?」

 

 若頭の問いに、リナリアが答えた。

 

「私の名前は、リナリア・スヘルデン。お兄様、帰ってまいりました」

 

 そう言うと、リナリアはカーテシーを披露した。

 とても悲しい、話し合いの始まりの合図だ。

 

「我が妹が行方不明になったのは17歳の頃。あれから10年が経っている。君はどう見ても3歳程度にしか見えないが。ああ、そういえば、魔法で姿を変えていると部下が言っていたが。それでは元に戻ればいいだろう」

「それはできません」

「なぜだ」

 

 パパンが問う。渋くていい声だわー。

 その問いに、レナは即答出来なかった。

 そうだろう。躊躇う。自分の家族に私は死んでいるのだと告げることに。

 

「そなたと共にいるこ奴らは、何者だ。そなたを拐かしたものか?」

「いいえ、彼らは私の恩人です。私を連れ出してくれた人」

「監禁されていたと」

「そのようなものですわ」

「そうか、そいつらがリナリアを監禁していて、そこから連れてきたと」

「いや、違いますって」

 

 なんだか会話の流れが変わってきたわね。

 

「そもそもお前は誰だ?」

 

 リナリアのお兄ちゃんが私を睨む。どうしよう、正体を明かすべきか。


 もし、アッコンチ伯爵領から何か連絡がいっていたら、マズイことになる。

 相手は私を殺そうとした。

 私が生きているとマズイから『もしかしてそっちにうちの娘の婚約者、流れてきていませんかねええ。え、います?それはよかった、返却ありがとうございますうう〜』からの、グサっって感じで、今度こそ殺されちゃうかもしれないわよねええ。

 

「おい、答えろ。名は」

「はいい、わ、私は冒険者のエミと申します。こっちは仲間のキムラサンと」

「変わった名前だな」

「うす」

 

 キムラサンが一応挨拶する。こいつ、大分慣れてきたな、人間の世界に。適応力ぱないわ。

 

「おい、冒険者ギルドに連絡しろ。身元紹介だ」

「へい、すでに手配済みっす」

 

 仕事早いわ。出来る男やん。正直困るわ。

 

「こちらが確認書です」

 

 もう確認終わっているんかい。

 料理番組の「3分煮たものがこちらですねー」じゃないんだからさ〜。

 

 参考までに、ギルドは世界共通組織である。そのため、偽名等で複数アカを作ることは不可能である。

 ギルド登録するときに個体認証を登録するんだけど、絶対偽れない、偽造出来ない、身元保証はバッチリってやつなのよね。

 なので、犯罪者の可能性がある場合は、ギルドの権限で身元を調べることが出来るのだと…あ、さっき、ギルドカード回収された。

 

 リナ兄ちゃんが、確認書を見て、それをパパンに渡す。なぜかパパンがふうと息を吐いた。

 

「手間が省けてよかったな。お前を探している奴がいるんだよ。なあ、ガーデン伯爵んちのエミール坊ちゃんよお。あんた川に落ちて流されたんだって?お家から連絡きてるぜえ」


 部屋中の人間が、大声で笑った。どんくせえとか言う声が聞こえるんだが。どんくさくないんだが(ここ大事)。

 やはり、連絡が来ていたのか。

 

「待ってちょうだい。お父様、エミは川に落とされたのよ。アッコンチが…」

「まだ、お前が娘とは決まってねえ」

 

 リナリアの助言をパパンが打ち消す。威圧感たっぷりに、彼女を睨む。

 

「お前がリナリアだというのなら、なぜ消えた?お前がいなくなって、みんながどれだけ困ったのか、おめえ、わかってここにいるんだろうなあ、ああ?」

「それは、違います!」

 

 思わず親子喧嘩に口出ししちゃったよう。部屋中の猛者どもの視線が痛い痛い。

 

「リナリアの話を聞いてやってください。彼女は、何も悪くありません」

「ああん?」

「エミ、ありがとう。大丈夫よ、私ちゃんと話すから」

 

 リナリアの口元に僅かに笑みが戻る。

 

「リナリア、あんた、ここに来てからずっと強張った顔をしてるよ。ここはリナんちなんでしょ。ここにいるのは、家族なんでしょ。ちゃんと話すんだよ。大丈夫、家族なんだから、受け入れてくれるって」

 

 リナリアの目が潤む。でも涙は溢れない。リナリアは笑みを浮かべた。

 

「うん。大丈夫。ちゃんと話す」

 

 リナリアは自分の父に向かい、

 

「聞いてください、お父様!」

 

 声を張り上げる。その途端、部屋中の人間が黙る。その表情には、驚きが混ざっていた。

 

「まさか、本当にお嬢様か?」

 

 小声で話す連中がいる。リナリアを思い出したのか。

 彼女は数歩父親の方に歩み寄った。

 

「あの日、私がいなくなった日。その日に私は」

 

 リナリアの目から、涙が溢れた。

 

「私は、殺されました」

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