14・名探偵・村人が現れました
先ほど逃げた第一村人であるご高齢の女性を筆頭に、第二第三村人を後続に従えて、全員武器を手にこちらへ突進してきた。正直非常に怖い。
「あんたたち、何者だっ!」
「ここで何してるんだっ!」
そーっと片手を上げて、一歩前に出る。
「ええと、道に迷いまして。辺境伯様のお宅はどちらでしょう」
「怪しいやつだっ!捕まえてしまえ!」
「いやいや、普通の冒険者ですよ?」
「冒険者がこんなところで迷うかっ!ここは冒険者ギルドの隣町だぞ」
「え、そんな近くだったの?」
村人ずが、じーっと我々を見る。
「あれ、そういえばもう1人いないぞ?」
「もう1人って?」
問えば、第一村人が、ぽっと頬を染めた。
「ほれ、あの、ズボンだけしか着ていない、たくましい…」
「そうじゃそうじゃ、ズボンしか着ない大胆なお方…」
「セクシーセクシー」
第二第三もぽっと頬を染めてモジモジする。
「需要があったのって、そっち?」
「まさかのキムラサン、モテ期到来」
「それならキムラサンを戻せば助かるかしら...」
メルヘンとコソッと唱える。
「キムラサンを第二形態に戻して」
光の輪がキムラサンを包み込み、先ほどリナリアには好評でなかった、パンイチ姿に戻った。
「やあ、マダム、ご機嫌いかがかな」
「キャー!」
「ぎゃー!」
二種類の悲鳴が辺りにこだました。
そして、多数決の結果、我々は捕縛されたのだった。
「…少数派あ」
「ドンマイ、キムラサン」
とりあえず、第三形態に戻しておいた。
一部の愛好家は、泣いていた。
大多数は、ホッとしていた。
我々は、村人達によって、辺境伯の城に連行された。というのも、
「あれ、この子、お嬢様に良く似てるのう」
という証言からだ。村人の中に、リナリアの顔を覚えていた者がいたのだ。
「そう、その件で、辺境伯様にお会いしたいのです」
ようやく話が出来そう…そう思ったこともありました。
「そうか…あんたがお嬢様を誑かした犯人か」
「はい?」
「犯人は、お前だーっ!」
「それ、我々が言う予定のセリフー」
ビシッと指を刺し、第四村人(好青年的なやつ)は語る。
「このお嬢様にそっくりな子供。お前はお嬢様を拐かし、結婚してこの子を…」
「いやこれ本人」
「お嬢様が3歳児なわけあるかーっ」
確かに3頭身では説得力がなさすぎた。
しかも、これ、全部キムラサンに向かって言っているのよね。
「パパは、キムラサンか…」
「頼むから、やめて」
「それなら私は何よ」
「ガヤ?」
やめい。
という訳で、我々は辺境伯のお嬢様を拉致した犯人として、お城へ連行されたのだった。
*****
逃亡の恐れありとして私とキムラサンは縛られているが、流石に女の子も縛るわけにはいかず、我々は荷馬車に乗せられている。その周りをグルリと村人が囲う形で進んでいる。
荷馬車の高さもあるから、子供はそこから飛んで逃げることも出来ないだろうと。
まあ、飛べるだろうけど、幽霊だし。
でもこのまま辺境伯の元に運んでくれるというのだ。ありがたく乗って行くことにした。楽だし。
「どうなるかと思ったけど、すんなり会えそうね」
「かなり状況は複雑になっているけどね」
自称名探偵村人によって、ドラマは作られているようだが。荷馬車を警護しつつ、名探偵村人が何やら隣でブツブツ名推理を披露しているんだが。
「まずは2人の出会い編、次は駆け落ち編、そして愛のお別れ編」
「すごいわね、作家になれるわ」
また、この語り口調がすごいのだ。名演技だ。何かの仮面をかぶっているのか。
彼の演じる推理ドラマで、村人も我々も全員が感動して泣いていた。
「おお、なんという悲劇」
「救われないわあ」
「そして二人は手と手を取り合い「愛しております」「私も…」」
「おおお」
「そこで二人は…」
「お前ら何してんのー?」
城の警護をしていた騎士達に声をかけられて、全員ハッとする。そう言えば、連行されていたんだった。
「辺境伯さまーっ!どうか、どうかお慈悲を!」
「そうだ、愛の逃避行なんだーっ!」
「…私、メルヘン魔法使ってないわよねえ」
村人が、天然メルヘンだった。
騎士達は、なんだこりゃって顔してた。
*****
困った騎士達に質問されて、ようやく現実にただいまー出来た村人何人かが、我々の説明をした。
「怪しい奴らが山から降りて来まして。その内の一人が、リナリア様にそっくりなのです」
「何っ」
ハッとして騎士がリナリアを見た。
「確かにお嬢様にそっくりだ。年齢的にも、お嬢様のお子か」
「わかった、話をしてくるから待ってろ」
騎士の1人が城内へ走っていった。
やがて何人かの騎士が出てきて、我々は城内へと連れていかれた。だが、そのまま連れていかれた場所は、牢獄だった。
「え、すぐに辺境伯様に会えないの?」
「今は忙しいのだ。とりあえずここで待て」
牢獄の中には、私とキムラサンという構図。リナリアはお嬢様のお子様(疑)ってことで、他所へ連れていかれた。
「まあ、リナリアが事情を説明してくれれば、我々も助かる…わよね?」
「そうですなあ…知らんけど」
「あんたも、なんか、慣れたわね」
いざとなればメルヘン魔法で逃亡出来るか。
だよね、だよね?




