13・木が変身しました
「ねえ、逃げた人達、武器持って帰ってきたらどうしよう」
リナが物騒なことを言い出した。
「え、何で?」
「だって、山から見知らぬ変質者が降りてきたら、普通は戦うんじゃないの?」
「そんな普通は知らないけど」
流石、辺境伯家ご令嬢か。変質者代表のキムラサンを見る。
「どう見ても木のコスプレ」
「この世界では、コスプレはメジャーじゃないから」
「そうなのよね、いっそのことキムラサンが、完全な人間体に擬態してくれたらいいんだけど」
すると、キムラサンがおずおずと手を挙げた。
「はい、キムラサン」
「先生、私は先生のイメージで変形してます。なので、これは先生のせいです」
「あらま」
センスないからな。これは困った。ないものはない。イメージも浮かばない。
「たとえばなんだけど、リナリアがイメージしたキャラに変身できたりする?」
「はあっ?」
人はこれを丸投げ方式と呼ぶ。
「多分できるとは思うけど」
キムラサン、なんか気乗りしてない様子ね。
「どうしたの?」
「せっかくマスターが作ってくれた姿なのに、そこのお姉さんのイメージなんて」
「なんか、悪かったわね。まだやってないけど、悪かったわね」
「とりあえず、仮の姿ってことで。キムラサンも人に後ろ指刺されたくないっしょ。それに、私をマスターと呼ぶなら私に苦労させたくないでしょ」
「そーですね。んじゃ仕方ない。そこのお姉さん、お願いしやす」
キムラサンがリナリアに頭を下げた。
「どうやるのよ。私はこれでも木との対話なんて初めてなんだからね」
「普通はそうだって」
とりあえずやってみるか。
「メルヘン」
メルヘンサークルが私達を包む。
「キムラサン、リナがイメージする、イケメンに変身〜♫」
「ぐぬぬぬぬ」
リナがうなりつつ、キムラサンの方へ頭を向ける。これ、電波を送っているイメージなんかな。よしよし、このまま受信したまえ。
「なんか、キタキタ来たよ〜♫」
キムラサンが淡く光を放つ。メルヘンサークルがキムラサンに集中する。
やがて、光の中から、イケメンが出てきた。あれ、なんか見たことある。
「これ、なんかのゲームに出てた…」
「私が前世で好きだった、乙女ゲームのキャラですわ」
「ああそれで」
そこには、短めに整えた黒髪と、鋭い目つき黒い瞳、背は高く、細身だけど筋肉は隠してあります的な、冒険者風な男が立っていた。
「これって、クールだけど、好きになったら、俺だけのお前、離さないぜ的な病んでデレなキャラっぽい匂いがするわね」
「流石ね、アミーゴ」
「いいわねー、流石ね、リナちゃん、サイコー」
「ふっ、いい仕事をしたわ」
お互いを褒めあっていたが、キムラサンは浮かない表情だ。
「なによ、なんか文句あんの?」
リナリアが噛みつく。
「誰もいない時は、元に戻ってもいい?」
イケメンがしょぼんとしている。しょうがない、あとでね。
だって、リナリアの予想通り、村人ずが、大量に武器持って走ってきたから。
やっぱここ、忍びの村じゃね?




