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12/17

12・木に名前をつけました

 木に案内されて、どうにかこうにか、森をぬけることができた。やっと、人間の住処にこれた。涙が。

 

 道中、暇だったのでいろいろ話しながら来たのだが、ふと気になったことが。

 

「そういえば、あんたの名前って何?」

 

 先頭をスタスタ歩く木に聞いてみた。

 

「おいらは名無し。そんなスペシャルなものなんて、無縁の存在さ~♪」

「そっか、それじゃあ、エミちゃんがつけてあげれば?」

 

 簡単に言うわねえ。

 あれからリナリアは私のことを、エミールからエミと呼ぶようになった。冒険者登録名だ。単純すぎと言われたけど、変更できませーん。


「そうねえ。私、ネーミングのセンス皆無なのよ」

 

 前世の家族に言われたわね。全てのセンスをどこかで紛失したと。

 そんな私にメルヘン魔法を与えた神様って、何が見たいのかしらね。

 

「まいっか。んじゃあ、あんたに名前を授けるわ。その名はズバリ!」

 

 少々ためる。

 

「あんたの名前は、キムラサン!」

「なんじゃそらああああ!」

 

 リナリアが盛大に突っ込んだ。

 だが、木、改めキムラサン(仮)は、下を向いて微動だにしない。


「やっぱ、ダメ?」

「そりゃそーでしょ?」

「ご、ごめんね…」


 謝りつつ前方のキムラサン(仮)の方へ行って顔を覗き込む。

 にへら。

 そんな単語の顔が。

 影がかかって暗い顔が、にへら。

 

「なんか、キモいんだけど」

 

 思わず後ずさる。

 キムラサン(仮)が、ゆっくり顔を上げて我々の方を向いた。


「オイラの名前は、キムラサン〜♬とってもナイスなキムラサン〜♬」

「やばいスイッチ入れたかな」

 

 それから歌が止まらなくなった。

 

「これは気に入ったってことよね。ナイスなネーミングだったってことよね」

「それ、ちゃうからな」

 

 激しいリナリアのツッコミを無視して我々は進んだ。

 生まれて初めて、私のネーミングを気に入ってもらえた。正直すんごく嬉しかった。ありがとう、キムラサン(確定)じーん。

 

 ってことがあって、なかなか陽気なメンバーが、下界に降りてきたわけだ。ようやく道らしきものを目撃して、ようやく歩きやすさに感動しつつ進むと、第一村人を発見した。

 

「すみませーん、ちょっとお聞きしたいことが…」

 

 第一村人は、おばあさんだったけど、超高速で逃げていった。第二も第三も以下同文。

 

「ここ、忍びの村?」

「んじゃなくって、どう見ても我々が不審者だからでしょ?」

 

 キムラサンがな。私は違うよな。

 

「木だもんな」

「あと、いい加減に歌うのやめたほうがいいと思う」

「そっかー。キムラサン、歌うのやめて」

「ほいさ」

 

 そこからは、静かに進んだ。

 そうか。はじめからそうすればよかった。

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