12・木に名前をつけました
木に案内されて、どうにかこうにか、森をぬけることができた。やっと、人間の住処にこれた。涙が。
道中、暇だったのでいろいろ話しながら来たのだが、ふと気になったことが。
「そういえば、あんたの名前って何?」
先頭をスタスタ歩く木に聞いてみた。
「おいらは名無し。そんなスペシャルなものなんて、無縁の存在さ~♪」
「そっか、それじゃあ、エミちゃんがつけてあげれば?」
簡単に言うわねえ。
あれからリナリアは私のことを、エミールからエミと呼ぶようになった。冒険者登録名だ。単純すぎと言われたけど、変更できませーん。
「そうねえ。私、ネーミングのセンス皆無なのよ」
前世の家族に言われたわね。全てのセンスをどこかで紛失したと。
そんな私にメルヘン魔法を与えた神様って、何が見たいのかしらね。
「まいっか。んじゃあ、あんたに名前を授けるわ。その名はズバリ!」
少々ためる。
「あんたの名前は、キムラサン!」
「なんじゃそらああああ!」
リナリアが盛大に突っ込んだ。
だが、木、改めキムラサン(仮)は、下を向いて微動だにしない。
「やっぱ、ダメ?」
「そりゃそーでしょ?」
「ご、ごめんね…」
謝りつつ前方のキムラサン(仮)の方へ行って顔を覗き込む。
にへら。
そんな単語の顔が。
影がかかって暗い顔が、にへら。
「なんか、キモいんだけど」
思わず後ずさる。
キムラサン(仮)が、ゆっくり顔を上げて我々の方を向いた。
「オイラの名前は、キムラサン〜♬とってもナイスなキムラサン〜♬」
「やばいスイッチ入れたかな」
それから歌が止まらなくなった。
「これは気に入ったってことよね。ナイスなネーミングだったってことよね」
「それ、ちゃうからな」
激しいリナリアのツッコミを無視して我々は進んだ。
生まれて初めて、私のネーミングを気に入ってもらえた。正直すんごく嬉しかった。ありがとう、キムラサン(確定)じーん。
ってことがあって、なかなか陽気なメンバーが、下界に降りてきたわけだ。ようやく道らしきものを目撃して、ようやく歩きやすさに感動しつつ進むと、第一村人を発見した。
「すみませーん、ちょっとお聞きしたいことが…」
第一村人は、おばあさんだったけど、超高速で逃げていった。第二も第三も以下同文。
「ここ、忍びの村?」
「んじゃなくって、どう見ても我々が不審者だからでしょ?」
キムラサンがな。私は違うよな。
「木だもんな」
「あと、いい加減に歌うのやめたほうがいいと思う」
「そっかー。キムラサン、歌うのやめて」
「ほいさ」
そこからは、静かに進んだ。
そうか。はじめからそうすればよかった。




