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11・閑話 リナリアの告白

 私は、リナリア・スヘルデン辺境伯令嬢。

 家族は両親と兄と弟。仲はいいと思う。うん、両親ラブラブ。子供を溺愛。兄弟仲バツグン。

 

 この口調でお気付きと思うが、私には前世の記憶がある。自我が確立しつつあるあたりの年齢ではっと気がついた。異世界転生キターだよね。

 でも、これといって生活で困ることないし。お嬢様だし。何かを作る技術もないし製法もしらぬ。とりあえず惰性で生きた。だって、お嬢様だったし。

 

 領地は辺境だけあって、殺伐としている。毎日繰り広げられる魔物との戦い。それ以上に厄介なのは、近隣領地との腹の探り合いか。

 

 そのせいで、私は隣国メルカンテのアッコンチ侯爵家へ嫁ぐことになった。

 アッコンチきらーい。あいつら、ネチネチと毎回嫌がらせしてくるし、怒ったらごめーんって反省の色ないし。何あのタッチアンドゴー的な嫌がらせ。天才か。

 

 初めて婚約者に会った時も、不快感はあった。見た目はイケメンだったけど、目がね。笑ってないんだもん。

 笑顔でもダメだわ、あれ。あいつの父親のタヌキ属性まで到達してないわ。修行が足らんわ。バレバレだわ。

 って心でダメ出ししつつ交流を図ったけど、こいつと結婚するんか。やだな。

 でも、私も辺境伯家の娘。それなら裏で牛耳ってやるって、いろいろ考えていたんだけどね。

 それ、顔に出でいたのかしら、私も。

 

 それで、こうなったのかしら。

 

 結論から言って、私は死んだ。弟の第3付き人が、私に近づいてきた。


「お嬢様は、お可哀想ですね。あんな隣国の男の元へ嫁ぐなんて」


 とか、とにかく私を可哀想なご令嬢扱いするのよね。

 何よ、戦うわよ、私。これでも辺境伯家の人間よ。あの両親の娘よ。どうみても強いやんけ。

 

 なのに、可哀想可哀想〜ばっかり。

 

 んで、私が1人のときを見計らって、連れ去ったわけだ。

 

 目が覚めると、まったく知らない天井が見えた。

 狭い小屋の狭いベッド。手足が拘束されていて、身動きできない。

 それでも逃げ出そうと動いたら、近くの椅子に座っていた第3付き人が動き出した。

 

「お目覚めですか、お嬢様」

「ねえ、今なら間に合うわ。私を帰してちょうだい」

「お嬢様は、お可哀想なお方だ。私がお救いしたのです」


 ダメだ、会話にならない。この人、元々こんな感じだったのかな。

 

 奴がベッドに乗って、私の首を両手で掴む。

 

「あんな男はやめて、私のものに…」

「あんたよりマシよ」

 

 速攻で引き金を引いてしまった気がする。普通はさあ、もう少し会話のキャッチボールを楽しむよね?でも、時すでに遅し。


 今の私は、天井で浮いている。ベッド上で空な目をした自分を、上から覗きこんでいる。

 その私は、まったく動かなかった。

 

 それからずっとここにいる。

 家に帰りたかったけど、なぜかこの小屋から出ることは叶わなかった。

 時々猟師か冒険者か知らないけどそれっぽい人がやってきたから、助けてって声をかけたけど、私には気が付かなかった。

 悔しくて悲しくて感情が爆発すると、部屋の物が飛んだ。

 

「わああっ、なんだこれはっ!」

 

 みんな逃げて行ってしまう。それが何度も続くと、誰も来なくなった。

 

 それからしばらくして、1人の青年が入ってきた。彼は部屋を魔法で掃除して、まったり寛いでいる。

 ここで大声をあげて、逃げられては困る。彼が寝静まった頃、声をかけてみよう。

 

 カタカタ

 カタカタ

 ガタガタ

 

 …ダメだこいつ、まったく起きねえっ!

 

 ようやく起きて話をして…

 あれ、話が出来る。私のことをわかってくれる。

 それがどんなに嬉しいことか、彼はわかっていないんだと思う。

 おまけに私の姿を常時見える状態にしてくれた。家族の元に連れていってくれると。

 

 彼が見ていないところで私は泣いた。

 

 ありがとう、ありがとう。エミ。

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