10・辺境伯領を目指すことになりました
感動しているところではあったが、一旦小屋に戻った。今後の動向を決めなくてはならない。
「そういえば、飲食もできるのかしら」
「どうかしら。でも、さっき外で見たんだけど、影がなかったのよね」
足元を示す。
「それじゃあ、物は持てる?」
目の前に白湯が入ったコップを置いてみた。彼女はコップを簡単に持ち上げた。
「大丈夫そうね」
「ええ、でも重いというか。正直つらいわ」
「やっぱり、何かの力で霊力を保っているのかもしれないわね」
「そうね。恐らくあなたの魔力が弱まると、私も見た目が薄くなるのかもしれないわ」
「多分ね。でも余程のことがない限り大丈夫だと思うのよ。メルヘン魔法って、あんまり魔力を使っている感じがしないのよね」
「コスパ最高じゃん」
それじゃあ、このまま辺境伯のところに行っても大丈夫かな。
「歩くのは大丈夫そう?」
「歩くというか、浮いているわね。幽霊だし」
「それじゃあ、地面ギリギリを進んでドレスで足元隠すしかないわね」
幸い今の服装は足元まで隠れるドレスだから、なんとかなりそう。
「それで、このまま辺境伯のところに行くの?それともいきなり犯人襲撃?」
「そこなのよね」
「そもそもリナリアが死んだのって、何年前なの?身内は生きているの?」
「多分生きているんじゃないかしら。私が死んだのって、10年くらい前だし」
「元の婚約者って、隣の領って言ってたわよね。ということは、アッコンチ侯爵ってこと?」
「そうよ。隣国メルカンテ国、アッコンチ侯爵領の」
やはりそうか。
「私、そこの領主の娘と結婚する予定だったのよね」
「はあっ?」
「なのにその子と私の弟がタッグを組んで、私を殺そうとしたのよねえ」
「ってことは、もしかしたら私たち」
「「義理の姉妹になっていたのねえ」」
世間は狭いな。
「ということは、アッコンチ家のこと知っているわよね。今どうなっているの?」
そうねえと、思い出す。
「領主ご夫妻とその子供が4人よね。後継者の長男、スペアの次男。あとは長女と末の娘か。私の元婚約者は、末っ子よ」
「私の婚約者は、長男だったわ」
「私が婚約したときは、長男は結婚していたわよ」
「そうよねえ、相手は誰かしら」
「残念ながらそこまで詳しくは知らないのよ。そもそも今回は顔見せのためにここに来たんだし」
「で、殺されそうになったと」
「簀巻きで川へドボンよお〜」
「えげつないわねえ」
うんうんと、義理の姉(未完)が頷く。
こうして白湯で女子会は続いた。キリがないのでまとめた。
元々政略結婚で嫁ぐ予定だったリナリア。だが何者かに殺された。
「結局誰に殺されたのよ」
「うちの、騎士よ。弟の護衛その3くらいだったわね」
あ、それと一つ確認しないと。
「リナリアの死体ってどこにあるのよ」
「あんたの下」
目線を椅子の下に向けた。板が外れそうな感じ…か。
「もう、ここいたくないいいい」
「だからここ、心霊スポットだって言ったじゃん」
こほん。
「んじゃ、とりあえずリナリアんちに向かえばいいわけね」
「そうね。んで、犯人はお前だっ!て言えばいいのね。一度は言ってみたかったセリフランキング絶対上位よね」
「直球よね」
「なんかいい作戦思いつけばいいけど」
「無理無理〜」
わっはっは。
とりあえず、出発することにした。ここにはいたくない。二泊なんてむり。うん。
「家の場所わかる?」
「わけないじゃん、私、お嬢様よ。こんなとこ来たことないわよ」
「だよねー。そうなると…」
外に出て、メルヘンと唱える。メルヘンサークルが現れて、私達を包んだ。
「妖精さん、教えて~♬辺境伯のお家にはどうやって行くの?」
私達の頭上に小さな光が複数現れた。それが小さな人間の形に変化していく。羽を羽ばたかせ、近寄ってきた。
「ここをまーっすぐ降りて21本目の木を右に曲がって更にそこから38本目の木を斜めに降りて…」
「すんません、わかりません」
しょうがないわね、このわからんちんの人間めって顔、やめてほしいわ。
「誰か、連れて行ってくれませんか?」
また、しょうがないわねって顔をした妖精が口笛を吹いた。
ずんちゃずんちゃ…。
嫌な音が聞こえてきた。
「呼ばれたよーん、木ー!」
「呼んでないやんけ」
また、木がやってきた。
「あんたが案内するんだぜ」
「へい、姉御」
「まさかの舎弟か」
「あとはまーかーせーたー♬」
「そこだけミュージカルかよ」
勝手に妖精さんたちは去っていってしまった。
残るは木。
期待感満載の、木。
やめてええええ。
「仕方ないわね」
はああと、ため息が出た。
「木」
「へい、おやびん〜♬」
「あんたをー、道案内にー、任命しまーす♬変身っ!」
木を指差すと、光が木を包んだ。やがて光が消えて、現れたのは。
「やっぱ、木ー!」
木だった。
だが、幽霊と一緒で、3頭身。頭、体、足。うん、それで3頭身なんだが。
「…顔、でかっ」
一応目鼻立ちはある。だが、顔は基本、丸太のまんま。
髪は葉っぱ。ブロッコリーを彷彿させる丸い頭。一応セットしました的な。
細い腕と足。まんま、木だった。一応ズボンは穿いている。
「木で出来た人形のような出立ちね」
顔の大きさが80センチくらいあるよな。かける3で、240センチ…でかっ。
「…で、道案内、頼める?」
「まかせなはーれ!」
誰かこいつのテンション、下げて。




