130・敵を探しました
デレクが風魔法を使いこなせそうでよかったわね。
「それは後でじっくり訓練するとして、今は他の人間を探さないと」
ルカスに言われてハッとする。そういえば私達スパイ活動中だったわね。
「スパイ忘れていたわ」
「そうだった。すまん、つい」
「デレクにしたら、大切なことだったんだから仕方ねえよ」
「よかったな、デレク」
この中で唯一デレクの苦悩を間近で見てきたであろう、ルカスが両手を差し出す。デレクがルカスの手を軽く叩いて返した。
ついでに私とテオも手を差し出した。全員でハイタッチね。
さあ、これでエンジンも掛かったわね。いくわよ。
「さて、奴らを探しましょうか」
「それなら風魔法だな」
「大気の流れを探るということか」
「俺は音を探してみる」
全員で円陣を組んだ。互いの肩に腕をまわす。
そのまま集中。
私はイメージで魔法を広げた。魔法でこの地域を丸ごと包むイメージ。
さあ、どこにいる。
あれ、いない。ここらにはいない?
でも、何かおかしい。
「見つけたぞ」
「さすがデレク。どっちだ?」
「かなり遠くにいる。エミ、あそこはどこにあたる?」
デレクが指さす方向を見る。
「わかるか?辺境伯領のかなり北側になるが」
私もデレクが示す場所に魔法を送ってみた。確かに人が大勢いる気配がする。しかしあの場所は。
「テオ、わかる?あの場所。地図を思い出してちょうだい。確かあそこは」
私はデレクが示した場所から右手にある大きな木を指さす。
「あの木が目印よ。一本だけ大きな木があるの」
「ってことは、あそこはまさか」
「そう、ガーデン領だわ」
私の実家。元がつくけど。
「私の実家のガーデン伯爵領は、少しだけ辺境伯領に近い場所があるのよ。そこに大勢人の気配を感じるわ」
「もしかしてアッコンチがガーデン伯爵領を欲しがった理由っていうのは」
考えたくないけど、恐らくそうなのだろう。
「多分このためよね。それに義弟にも恐らくニョロが入っている」
「ガーデン領の兵士もここにいる可能性があるな」
なんてこと。領民の顔が脳裏に浮かんだ。優しい人もいた。その人たちが今どんなことになっているのか。
「エミ、そのことは後だ。とりあえず出来ることをしなければ」
「そ、そうね」
ぼーっとしている暇はないわ。しっかりしないと。
「とにかく現状よね。あそこに大勢人がいる」
「私も感知した。あそこから辺境伯領にすでに入り込んでいるな。急いで叔父上に連絡しなくては」
「でも、このままの状態で連絡できるのか?」
「やってみる」
「やめておくがよい。精神体のままでは魔力の消費が激しい」
「それなら戻るか」
「待って」
「エミ?」
すでに敵が入り込んでいるのなら急いで戻らなくてはいけないのはわかっている。
だけど、この違和感。
「風の精霊様、伝言妖精さんを呼び出すのは大丈夫かしら」
「それなら我が呼んでやろう。……おい」
「ひえええ、お呼びですか」
「早いな」
「何気に圧がすごかった」
「関係性が良くわかった」
伝言妖精さんが、風の精霊様の横に即出現していた。
「伝言妖精さん、緊急事態よ。カンガルー四姉妹に連絡して、あかりのダイヤモンドをすぐに設置させてちょうだい。あと、辺境伯様にも伝えて」
「へい、すぐに!」
伝言妖精さんが姿を消した。これで結界は大丈夫。
「ルカスも先に戻って、固有スキルでみんなに連絡を」
「エミはどうするんだ」
「もう少し探すわ。あの火魔法の大きいやつを召喚した奴を見つけなくては」
皆、はっとする。
「そうだな、あれほど多くの人間が辺境伯領にすでに入り込んでいるのだとしたら、火魔法の大きいやつがまた放たれる可能性が高い」
「わかった、私だけ戻る」
「しかし、ルカス!」
デレクがルカスを引き止めた。そっか、デレクはルカスの護衛だから。
「私の護衛は兄に頼むことにする。だから、デレクは二人を頼む」
「わかった。フランソワ様なら安心だ」
「私は不安だけどね」
ルカスがフランソワ様に「私を守って」なんて言ったら、絶対超過保護モードになりそう。
「ルカス、がんば」
「お、おう」
「で、どうやって戻るの?」
全員で風の精霊様を見る。
「そうじゃった、帰る方法を伝えるの忘れていたのう」
風の精霊様がてへぺろ顔をした。




