129・おちこぼれデレク
「極意のう」
風魔法の使い手一家の中で、一人だけ火魔法使いって、それは確かに辛い。
だけど、風の精霊様の応えは残酷だった。
「教える必要はなさそうだがの」
デレクが息を呑みこむ。私達も黙り込んだ。
「そ、それは」
ようやくデレクが反論しようと口を開くけど、なんて言えばいいのか、迷っているみたいだたった。
なので、私達も援護にまわった。
「風の精霊さん、それはいくらなんでもデレクに悪いんじゃ」
「そうだ。いくらデレクに風魔法の才能がないと言っても」
「テオ、誰もそこまで言ってない」
「やべ」
慌ててテオが両手で口元を押さえる。デレク、き、聞いてないよね。そう願いながら、全員でそーっとデレクの様子を伺う。
「あ、一人だけ沈んでる」
デレクがすーっと、沈んだ。私達の足元から一メートルくらい下に。
おまけに両手で膝を抱えている。こっちに背を向けて、あ、なんかぶつぶつ言ってる。
「……どうせ、俺は、昔から。けっ、風なんて、風船飛ばすだけじゃねえか」
「あ、やさぐれた」
「ああなると、めんどくさいんだよな」
「ルカス、本音が漏れてる」
普段はさっぱりしているデレクだけど、落ち込むとめんどくさいのよね。
私は風の精霊さんに近寄って、コッソリ聞いてみた。
「ねえ、風の精霊さん、本当にデレクには風魔法の才能がないの?」
「あの子は、固有スキルがあるからのう」
「デレクの固有スキルって」
「確かよく聞こえるやつだよな」
テオと頷きあう。二人でルカスを見ると、彼も頷く。
「ああ、デレクの固有スキルは『早耳』。遠くの音が聞こえるんだ。おかげで遠くにいる奴がこっちを向いてコソコソ悪口を言っていても、筒抜けで助かったよ」
ルカスの笑顔がなんか怖い。私達の知らない何かがあったのかしら。
デレクは固有スキルのおかげで、情報をつかむことが容易い。それに剣の腕も立つ。
ルカスの護衛には最適よね。
「それでも、その固有スキルがあるからどうなの?」
「エミもわからぬか?音を早く拾う。遠くの音を」
音を拾う方法。それは、
「もしかして、それって無意識に風魔法で音を拾っているってこと?」
「ああ、そういうことか」
テオが手を叩いた。
「先程も上の階の人間を、誰よりも早く見つけることが出来たのは、こやつじゃ。風魔法使いだからこそ、そなた達の中で一番早くの」
いつのまにかデレクがこちらに浮上してきて、風の精霊さんの横に立っていた。立ち直りが早くね?
「そうなのですか。私は落ちこぼれじゃ」
「固有スキルに風魔法の力が全て注がれていたようなものじゃ。だから風魔法だけ使おうとすると、バランスが崩れていたのだろう。此度、風魔法を存分に使ったであろ?これで力の流れが掴めたと思うがのう」
デレクが自分の手のひらを見る。その両手が風の流れを感じとっているのだろうか。
「これが、風魔法か」




