128・風の魔法
「侯爵は、ニョロの力で、大人しくしているということか」
「そうでなければ、今頃大暴れしていると思うのよね。閉じ込めるなんて無理よ」
「侯爵の性格がなんかわかった」
理解してもらえてよかった。婚約者のパパ(仮)として何度か話したけど、なかなか俺様キャラで、お付き合いが結構大変だったのよね。
私でも苦労してたから、本当の家族は何倍も大変だったでしょうね。
「ここに鶴さん呼ぶわけにはいかないから、とりあえず放置ね」
「そういう性格なら、ニョロを外したほうが面倒そうだぞ」
「それに、今の我々では尋問も出来まい」
「なあ、他も見に行ってみようぜ」
テオの提案で、私達は、この部屋を出ることにした。
部屋を出る時に、振り返ってアッコンチ侯爵を見る。一人で黙々と食事をする侯爵の背中が、少し寂しそうに思えた。
「それじゃあ上に行って、そこから周りを見てみようぜ」
私達はその場でジャンプして、侯爵邸の屋根に出た。そこから更に浮上する。
上空からアッコンチ侯爵領の地図を思い出した。
「えーっと、簡単に言うと、西側がスヘルデン辺境伯領。東がアッコンチ侯爵領ね」
「本当に簡単だな」
「森が邪魔で、上からだとさっぱりわからない」
「ほほほ、まだ風の力を使いこなせてはおらぬか」
「風の精霊さん?」
私達と一緒に空に浮かんでいた風の精霊さんが、口元に手を当てて優雅に笑う。
その目はなぜか、デレクを見ていた。
「デレク?」
「あの、風の精霊様」
「なんじゃ」
デレクは風の精霊様に話しかけてから、一度俯いた。だが軽く頷くと、今度は勢いよく顔を上げて風の精霊様に近づいていった。
「俺は、風魔法がうまく出来なくて。その、家族は皆、優秀な風魔法使いでして」
「知っておる。そなたから風魔法使いの匂いがするからの」
「ですが、俺は、落ちこぼれなんです」
「え、デレクんちってそうなの?」
「ああ、あいつの一族は皆、風の使い手だ。だが、デレクは」
「火魔法、だったよな。得意なのは」
そう、デレクは剣の使い手であり、火魔法のエキスパート。
風魔法は苦手って言ってたわよね。
「お願いです。俺に風魔法の極意を教えてもらえませんか?」
デレクの目は真剣だった。




