131・懐かしい曲が流れてきました
「簡単すぎて言い忘れておった。体に戻りたいと強く願えばいいだけじゃ」
「それだけか」
全員ほっとした。正直このまま戻れなかったらって考えが、脳裏によぎらなかったと言ったらウソになるからね。
「それじゃあ、お先に」
ルカスが軽く手を振って、そこから消えた。
「無事に戻ったようじゃな」
「よかったです」
風の精霊様が確認してくれたみたい。それなら我々はもう少しスパイ活動をしなくては。
「さあ、もう一度探しましょう」
「おう」
「デレクは音で、さっきの集団を見つけたんだよな。他に音はなかったのか」
「そうだな。そういえば何か聞いたことのない音が」
そう言ってデレクが指さしたのは、先ほどのアッコンチ侯爵んちの近くだった。
「行ってみましょう」
「そうだな」
みんなでそこに降りる。侯爵家より100メートルくらい離れたところか。
「道があるな」
「でも生活道路と言うより、裏道か?」
その道は侯爵家の裏口からつながっていて、そのまま東に向かっている。南側には町があったわね。
「音がしたのは東?」
「そう。音楽のような。でも俺はあのような音楽ははじめてだ」
「デレクが聞いたことのない音楽って、もしかして」
異世界の音楽かしら。
近づくにつれて、その音楽が私達にも聞こえてきた。これって。
「アニソン?」
「なんだそれは」
「えっと、勇者の世界の大変有名な音楽というか」
「それってさ、この先にいる奴が黒幕確定ってことか?分かりやすいな」
そうよね。おそらく黒幕の固有スキルは、あっちの世界から物を持ち込むことが出来るってことだと思う。
その能力を遺憾なく発揮して持ち込んだのが、
「アニソン……」
それって誰なのかしら。反乱起こさなきゃ、お友達になれたのに。
道なりに進むと、建物が見えた。小さいけど、貴族のおうちよね。
「侯爵家の離れか?」
「多分そうよね。でもそれにしてはかなり離れていたというか」
「離れというより、隔離じゃね?」
テオの意見に全員頷く。
ここまでの道も細くて、意識的に木々で隠していたように思えるし。
そんな隠れ家的な隔離ハウスなんだけど。
「なのに、大音量で音楽流しているって、どういうこと?」
「隠す気ねえな」
「アッコンチ侯爵を拘束したから、隠す意味がなくなったんじゃないか?」
「そうかもな」
シリアスなんだけど、流れているのはアニソン。しかも私の大好きなアーティストなのよね。また聴けるなんて思わなかったわ。
「エミ、音楽聴けてうれしいのはわかるけど、無意識に歌って踊るの、やめろ」
「お前が歌うと、いろいろ起こるだろ?」
「はい・・」
人はそれを「フラグ」と言う。




