126・アッコンチ侯爵邸にて-①
「俺たちの体は大丈夫かな」
「わからないわ。このまま来ちゃったから」
「見つからないほうがいいけど、それはそれで困るよな」
「私が倒れているのがバレたら、兄上が危険だ」
慌てふためくフランソワ様の様子が想像できて、全員でうんうん頷く。危険ね。でもま、仕方ないからいいよね。
私達は、風の精霊様にひっぱってもらって、アッコンチ侯爵家のお屋敷の中に入った。
どうやら私達の姿は誰にも見えず、声も聞こえないみたい。これならじっくり観察出来るわね。
「まずは執務室か」
「そこなら大事な書類もあるだろうし」
大抵の屋敷の構造は似たようなものだ。だから適当に当たりをつけて部屋に入った。
以前来た時は応接室しか入れてもらえなかったし。
んで、そのまま簀巻きにされたし。
「簀巻きが懐かしいわ」
「そんなの体験したくない」
「そうね」
テオなら人生いろいろで、いつか体験するかもしれないわね。
「今なんか失礼なこと考えたろ」
「どき」
しれっと、壁を通りぬけた。透明って便利ね。
入った部屋には大きな机があった。
「執務室か?」
「でも書類とか、何も置いてないわね」
机の上には、何も置かれていない。
「引き出しは……この体じゃ開けられないか」
「風魔法は使えるぞよ」
風の精霊様が指差すと、机の引き出しが開いた。
「めちゃ器用ですね」
「おや、褒められたのう」
素直に感想を言ったら、なぜか笑われた。
「そなたもやってみるがいい」
「はい」
透明な体だけど、自分の中の魔力を感じることが出来た。そのまま指先に魔力を這わせて、他の引き出しの取手を引っ張る。引き出しがすっと開いた。
「出来たわ。あ、でも、何にも入っていない」
「こんなに立派な部屋なのに、何もないとは」
壁際の本棚には本が入ってはいるが、少し埃が溜まっている。
「他の部屋に行ってみましょうか」
「そうだな」
引き出しを風魔法で押して閉じた。
そのまま隣の壁を通り抜ける。そこにも机があったが、やはり中身は空だ。
「なあ、そもそもこの屋敷、人の気配なくね?」
「テオの言う通りだ」
「多分使用人さんとかはいると思うけど」
「ああ、そういう気配はある。だが、主人はいないと思える」
「そなたら、だいぶその状態に慣れてきたようじゃな」
「どういう意味です?」
風の精霊様がふふふと笑った。
「風は大気。そなたらは今、魂でその流れを感じ取っているのじゃ。ほれ、屋敷全ての大気を感じ取ってみよ」
魔法はイメージが大切と習ったことがある。それなら自分の風魔法を広げてみようか。
風魔法で屋敷全てを覆うイメージ。そこから人の流れを探す。
人がいるのは、厨房とか洗濯室とか。あとは掃除をするのに散らばっているって感じね。
「確かに、使用人がいるだけだ。騎士もいない」
「みんな、どこに行ったのかしら」
「いや、一部屋。誰かいる」
デレクが上を指差す。
「上の部屋に誰かいる」




