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126/131

126・アッコンチ侯爵邸にて-①

 

「俺たちの体は大丈夫かな」

「わからないわ。このまま来ちゃったから」

「見つからないほうがいいけど、それはそれで困るよな」

「私が倒れているのがバレたら、兄上が危険だ」

 

 慌てふためくフランソワ様の様子が想像できて、全員でうんうん頷く。危険ね。でもま、仕方ないからいいよね。

 

 

 私達は、風の精霊様にひっぱってもらって、アッコンチ侯爵家のお屋敷の中に入った。

 どうやら私達の姿は誰にも見えず、声も聞こえないみたい。これならじっくり観察出来るわね。

 

「まずは執務室か」

「そこなら大事な書類もあるだろうし」

 

 大抵の屋敷の構造は似たようなものだ。だから適当に当たりをつけて部屋に入った。

 以前来た時は応接室しか入れてもらえなかったし。

 んで、そのまま簀巻きにされたし。

 

「簀巻きが懐かしいわ」

「そんなの体験したくない」

「そうね」

 

 テオなら人生いろいろで、いつか体験するかもしれないわね。

 

「今なんか失礼なこと考えたろ」

「どき」

 

 しれっと、壁を通りぬけた。透明って便利ね。

 入った部屋には大きな机があった。

 

「執務室か?」

「でも書類とか、何も置いてないわね」

 

 机の上には、何も置かれていない。

 

「引き出しは……この体じゃ開けられないか」

「風魔法は使えるぞよ」

 

 風の精霊様が指差すと、机の引き出しが開いた。

 

「めちゃ器用ですね」

「おや、褒められたのう」

 

 素直に感想を言ったら、なぜか笑われた。

 

「そなたもやってみるがいい」

「はい」

 

 透明な体だけど、自分の中の魔力を感じることが出来た。そのまま指先に魔力を這わせて、他の引き出しの取手を引っ張る。引き出しがすっと開いた。

 

「出来たわ。あ、でも、何にも入っていない」

「こんなに立派な部屋なのに、何もないとは」

 

 壁際の本棚には本が入ってはいるが、少し埃が溜まっている。

 

「他の部屋に行ってみましょうか」

「そうだな」

 

 引き出しを風魔法で押して閉じた。

 そのまま隣の壁を通り抜ける。そこにも机があったが、やはり中身は空だ。

 

「なあ、そもそもこの屋敷、人の気配なくね?」

「テオの言う通りだ」

「多分使用人さんとかはいると思うけど」

「ああ、そういう気配はある。だが、主人はいないと思える」

「そなたら、だいぶその状態に慣れてきたようじゃな」

「どういう意味です?」

 

 風の精霊様がふふふと笑った。

 

「風は大気。そなたらは今、魂でその流れを感じ取っているのじゃ。ほれ、屋敷全ての大気を感じ取ってみよ」

 

 魔法はイメージが大切と習ったことがある。それなら自分の風魔法を広げてみようか。

 風魔法で屋敷全てを覆うイメージ。そこから人の流れを探す。

 人がいるのは、厨房とか洗濯室とか。あとは掃除をするのに散らばっているって感じね。

 

「確かに、使用人がいるだけだ。騎士もいない」

「みんな、どこに行ったのかしら」

「いや、一部屋。誰かいる」

 

 デレクが上を指差す。

 

「上の部屋に誰かいる」

 

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