125・風の精霊さんとスパイ
「「「「風の精霊?」」」」
精霊ってことは、妖精さんより上の存在ってこと?
風の精霊さんが、ファスナーからふわりと降り立った。精霊の大きさは人間サイズなのね。
「そうじゃ、わらわは、風の精霊。この子達のボスじゃ」
「風の精霊……」
デレクが呆然として、繰り返した。
そもそもデレクは火魔法が得意よね。風はそんなにって感じだったはず。
そんなこと思っていたら、風の精霊さまが私の方を向いた。
「スパイごっこをやると申しておったから、わらわが手助けしてやろう」
「どうやるのですか?」
「簡単じゃ。そなたらの魂を取り出して、あちらに連れていけばいいのじゃ。それなら誰にも見つからずに、見れるであろ?」
「魂を、ぬく?」
その瞬間、頭から何かに引っ張られる感覚があった。痛みというより、引きずられたような感覚。
「なんだ、今の」
「おい、エミ!」
テオの方を向いて、目を見張る。
「ここ、どこ?」
テオの後ろに、森が見えた。そう言う私の周りにも。先程の部屋の風景は、何一つ残っていなかった。
「俺達、浮いているよな」
「ああ、森の上に浮いてる」
空が青い。太陽の位置は食事前からそう変わらない。ということは、あのままここに飛ばされたのか。
「そろそろあちらにいかぬか?」
「ここは一体」
「そなたら、アッコンチ領に行きたかったのだろう?ほれ、そこじゃ」
精霊様が指差した場所。見覚えがある。
「エミ、あれは」
「ええ、行ったことがあるわ。アッコンチ侯爵家のお屋敷よ」
私の元婚約者の家。あそこに招かれたのはいつだったかしら。
「まさかまたここに、来ることになるとは」
「だよなあ」
全員呆然と屋敷を見るしかなかった。
*****
(その頃の辺境伯領・リナリア視点)
「あ、お嬢様」
上空からの偵察の帰りに、見張り台の騎士から呼び止められて、そこに降りた。
「なにかしら」
「すみません、実は午後の見張りの交代要員が来なくて」
「この時間なら、お昼休みよね」
「はい、先に休憩に入ったエミさんとテオさんが、なかなか帰って来ないんですよ。あの人達真面目だから、今まで遅れたことなんてないのに。でもここをカラにして探しに行く訳にもいかないから、困って」
「何かあったのかしら。わかったわ、見てくるわね。あと他の交代要員も呼んでくるわ」
「助かります」
先に交代要員を呼んでから、エミ達の部屋に向かった。
部屋の前に誰か立っているわね。
「あら、キムラサン。エミ達いる?」
「今、マスター達は、ミッションの最中なんす」
「何それ?」
キムラサンがドアの前に立っていて、中に入れない。
「怪しいわね。会わせてくれないの?」
「マスター達は、ミッションなんす」
じー。
目を見たら、そそそと、そらされる。
怪しい。
「わかった。またね」
静々と歩いて建物を出た。そのまま空に飛んで、窓から部屋に入る。
そこには床に倒れ込んだ、エミ達四人の姿があった。
「エミーっ!」




