124・天井にファスナー
「そやな、妖精の中で、一番スパイになれそうな奴か……」
伝言妖精さんが腕を組んで唸っている。どんなポーズをとっても可愛いわね。
「仕方ない、オーデションや」
「「「オーデション?」」」
「こんな目立つ配役、勝手に決めたら、怒られるわ」
「いや、そんなに時間がないのよ。いつまたミサイルが飛んでくるのかわからないし」
「そやなー」
また妖精さんが唸り出した。困ったわね。
それにしても、スパイか。前世で見たアニメや映画を思い出した。かっこよかったわよね。
「本当は自分がスパイになって、見に行きたいところよね。無理だけど」
「はっはっは、それが出来ればいいけどな」
「エミは毎回とんでもないこと言うなあ」
「本当に」
そんなウケるネタのつもりで言ったんじゃないけど。
『ほう、その心意気、良いのう』
「え、誰?」
「なんか声が聞こえたよな」
「あかん!」
「え、伝言妖精さん、どうしたの?」
謎の声が聞こえた途端に伝言妖精さんが、凄い勢いで部屋の上を八の字に飛び始めた。思わず全員頭を抱えて、その場にしゃがみこむ。
「聞こえてしもた!あのお方に!」
『おや、私が聞いてはいけないこと?』
「ひいいいっ!」
突然、天井に棒状のものが現れた。あれ、見たことある……。
「なんだあれは」
「あれ、ファスナーだわ」
「なんだそれは」
天井に現れた棒状のものは、巨大なファスナーだった。でも持ち手がこちら側にあるんだけど、これ、誰が開けるの?
とりあえず様子を伺ったけど、当然勝手に開かない、わよね。
「……何も変化ないな」
「どうする?」
「ほっとく?」
「……さて、見張りの交代に行くか」
「そうね」
私達、忙しいもんね。無視しても仕方ないよね。
『ゴルァっ!妖精、開けるんや!』
「エミはん、すんませーん!」
伝言妖精さんがファスナーを一気に引っ張ると、そこからぴょこんと顔が出てきた。銀色の長い髪がふわりと垂れ下がる。瞳も銀色。私達よりも年上の、きれいなお姉さん。
その彼女が笑顔で私達を見下ろす。
「わらわが助けてやろうぞ」
「えっと、どなた様?」
「わらわは、風の精霊ぞ」




