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124/131

124・天井にファスナー

 

「そやな、妖精の中で、一番スパイになれそうな奴か……」

 

 伝言妖精さんが腕を組んで唸っている。どんなポーズをとっても可愛いわね。

 

「仕方ない、オーデションや」

「「「オーデション?」」」

「こんな目立つ配役、勝手に決めたら、怒られるわ」

「いや、そんなに時間がないのよ。いつまたミサイルが飛んでくるのかわからないし」

「そやなー」

 

 また妖精さんが唸り出した。困ったわね。

 それにしても、スパイか。前世で見たアニメや映画を思い出した。かっこよかったわよね。

 

「本当は自分がスパイになって、見に行きたいところよね。無理だけど」

「はっはっは、それが出来ればいいけどな」

「エミは毎回とんでもないこと言うなあ」

「本当に」

 

 そんなウケるネタのつもりで言ったんじゃないけど。

 

『ほう、その心意気、良いのう』

 

「え、誰?」

「なんか声が聞こえたよな」

「あかん!」

「え、伝言妖精さん、どうしたの?」

 

 謎の声が聞こえた途端に伝言妖精さんが、凄い勢いで部屋の上を八の字に飛び始めた。思わず全員頭を抱えて、その場にしゃがみこむ。

 

「聞こえてしもた!あのお方に!」

『おや、私が聞いてはいけないこと?』

「ひいいいっ!」

 

 突然、天井に棒状のものが現れた。あれ、見たことある……。

 

「なんだあれは」

「あれ、ファスナーだわ」

「なんだそれは」

 

 天井に現れた棒状のものは、巨大なファスナーだった。でも持ち手がこちら側にあるんだけど、これ、誰が開けるの?

 とりあえず様子を伺ったけど、当然勝手に開かない、わよね。

 

「……何も変化ないな」

「どうする?」

「ほっとく?」

「……さて、見張りの交代に行くか」

「そうね」

 

 私達、忙しいもんね。無視しても仕方ないよね。

 

『ゴルァっ!妖精、開けるんや!』

「エミはん、すんませーん!」

 

 伝言妖精さんがファスナーを一気に引っ張ると、そこからぴょこんと顔が出てきた。銀色の長い髪がふわりと垂れ下がる。瞳も銀色。私達よりも年上の、きれいなお姉さん。

 その彼女が笑顔で私達を見下ろす。

 

「わらわが助けてやろうぞ」

「えっと、どなた様?」

「わらわは、風の精霊ぞ」

 

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