120・鶴さんとサギさんず
騎士団の精鋭部隊が、侵入者の鎮圧に出ていった。
相手が攻撃してくれば討って出ることも可能だけど、何もしなければそのまま見守るしかない。
「アッコンチの奴らが『魔王対策のために応援に来ました』とでも、しれっと言ってくる可能性があるからな」
そう言って辺境伯様が唸っていた。
ミサイルが失敗して、辺境伯領が破壊されなければ、そう言って逃げればいいだけだから。
「魔物より魔物なのは、人間ですねー」
狼さんのコメントが痛いわね。
今のところ新しいミサイルが飛んで来る気配はないけど、いつ来るかわからない。
「ねえ、狼さん。辺境伯領のどこにミサイルが飛んでくるかわからないから、ずっと見張るのも大変よね」
「結界にかかればわかりますし、それから我々が出向けばいいだけですよう」
「そうなんだけど、他にも武器が来る可能性もあるわよね」
そう、あちらの世界にはミサイル以外にも武器はあるから、それを持って来る可能性がある。例えば、
「拳銃とか、それこそ戦車とか来たらどうしよう」
「ねえ、エミ」
「何、リナリア」
「拳銃はともかく、戦車ってどうやって動かすのよ」
「あ、そうか」
「相手がどんなスキルであれを動かしているのかわからないけど、戦車とかは燃料がいるでしょ。あと、絶対必要なのが」
「運転手さんよね」
「せめて操縦士とか言ってよ」
異世界から誰かを召喚しないことには、多分無理よね。
「召喚ですって?」
「フランソワ様」
息を弾ませて、フランソワ様がやってきた。しれっとあかりの隣に立って、状況を聞いている。
「フランソワ様。いくら固有スキルでも、召喚は難しいですか?」
「でも、相手は異世界の武器を召喚してきたんでしょ?それはないとは言い切れないわね」
「そうですよね」
敵の攻撃があっても、結界の中にいれば安全だけど、恐らく相手には結界のこともばれている。
だから、結界内に事前に侵入していて、しかも上空からのリナリアの目を搔い潜っている。
「厄介な敵ね」
「とにかく見つけたら無傷で捕まえて、その後は」
「私の出番ですね」
「そう・・うわっ、出た!」
いつの間にかルカスの背後に、鶴さんが立っていた。
「鶴さん、こんにちは」
「エミさん、こんにちは」
「ひかりちゃん、マイペースだね」
挨拶は基本よね。
「で、鶴さん、またお願いしたいことがあるのよ」
「わかっております。捕らえた敵からニョロを取り出すと。うふふ」
なんか楽しそう?
「鶴さん、うれしそうね」
「もちろんです、エミさん。どれだけのギャラが入るか、うふ、う、うふふふふ」
「怖いです」
着物姿でロン毛の美女バージョンだった鶴さんの顔が、鶴に変化した。
「正体、ばれてるわよ」
「しまった、正体がばれてはここにはいられません」
「鶴って名乗ってる時点でダメな気がする」
あかりのツッコミを無視して、鶴さんがふかぶかお辞儀をする。
「んで、どこに行くの?」
「とりあえず、あっちに」
鶴さんが示したのは、アッコンチの部隊が出たと言う方面だった。
「一人で大丈夫?誰か助っ人呼ぼうか?」
「いいえ、私のバックコーラスがいるから大丈夫ですよ」
それって、サギの子達よね。あんなキャピキャピな子達だけで大丈夫かしら。
「エミさん安心してください。あの子達はああ見えて、プロです」
「何のプロ?」
詳しく聞きたいけど、なぜかしら、背筋がぞわぞわしてきたわ。
「それでは手拍子をお願いします」
「でた」
デレクも突っ込みつつ、手拍子を始めた。こいつも慣れてきたな。
戸惑うフランソワ様にはあかりが手拍子を教えていた。
音楽も流れだし、みんなで一緒に手拍子をする。
「へいっ、へいっ!」
「ほうっ、ほうっ!」
謎の掛け声の中、踊る鶴さんの横に出現した光の輪から、サギさん達が飛び出してきた。
「あら」
服装がこの前と違うわね。
「「「私達、サギでぇーす♪」」」
挨拶は一緒だけど、全員迷彩服だった。




