113・飛来するもの - 1
その日は快晴だった。雲一つない青い空がどこまでも広がる。
いつもの一日がはじまる。そのはずだった。
「あら、リナリア、おはよう」
「おはよう、エミ。今日も洗濯室?」
洗濯室に向かう途中で、リナリアを見かけて声をかけた。
「そうよ。リナリアこそ、今日は遅くない?また偵察でしょ?」
「そうよ。でも光魔法部隊からの報告で、城下町のスパイらしい人が複数見つかったらしいの」
「そうなの?」
「だから、そっちの話を先に聞こうかと……」
「何?」
何か音が聞こえた。キーンという、どこかで聞いたような音。遠くから響くその音は。
「何、この音」
「ねえ、これ、前世で聞いた音だわ」
二人で顔を見合わせた。
「「飛行機?」」
リナリアがすぐに上に飛んだ。
「双子妖精さんっ!」
「おはよう、エミ……って、どうしたの?怖い顔だよ」
「ごめんね、急いでリナリアと話をさせてくれる?」
「「わかった!」」
双子妖精は頷くと、一人がリナリアの元へ飛んだ。
私の横から受話器が現れて、それを掴む。
「リナリア、何か見える?」
「ううん、何も見えない。でも、あれは飛行機の音よね?」
「飛行機と断言はできない。でも、何かの飛行する音よ」
私も周りを見回す。
慌てている私の姿を見て、側に誰かが走ってくるのが視野に入った。テオだ。
「エミ、どうかしたのか?」
「テオ!お願い、ルカス達を呼んできて!何かこっちに来るのかもしれない」
「……わかった。すぐに呼んでくる」
真剣に頷いて、テオが走る姿が見えた。お願い、間違いだといいけど。
「エミ!見えた!」
受話器からリナリアの悲鳴に近い声が響いた。
「何が飛んでくるの?」
「あれは、うそ、まさかそんな……」
轟音が近づいてくる。
「飛行機じゃないなら、まさか」
「エミ、みんなに逃げてって伝えて!」
「どっちに向かっているの?」
「こっちにくる!」
間に合わない。
「伝言妖精さん!」
「なんや、急に……」
「お願い、例のやつよ。辺境伯領全てに結界を張って!」
「わかった!」
以前あかりからベース三個とホームベースは預かっている。それはすでにカンガルー四姉妹のお腹に入っているのだ。
「エミ、何があった!」
「どうした!」
ルカスとデレクが走ってこっちにやってきた。後ろにテオもいる。
「恐らく敵が来る。それも強力な武器だわ。だからこれからあかりの固有スキルで結界を張る。全部守れるかわからないけど」
ルカスが息を呑む。
「わかった。私の固有スキルを使う」
ルカスが大きく息を吸い込んだ。
『叔父上、敵襲です。指示をお願いします』
ルカスの固有スキルは『指示』。味方全員にどの場所に居ても、指示を送ることが出来るのだ。
『わかった、今どこにいる?』
『宿舎から出たあたりです。これから中央に向かいます。それと、エミが、勇者の結界のスキルを使うと報告がありました。一般市民の避難も指示します』
『頼む』
ルカスが辺境伯とのコンタクトを終えた。
「よし、次に、避難指示を行う」
「ええ。私はあかりのところに向かうわ。あの子のスキルが発動することを教えないと」
「わかった」
すでに伝言妖精さんはここにはいない。今頃カンガルー四姉妹が動いているはず。
「間に合って!」




