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111/130

111・ぶっつけ本番に強い姉妹(弟)ですから

 

 私はルカス・デレク・テオ、そして辺境伯様とリナリアを呼んだ。魔王のことを話さなくてはいけない。

 

「それじゃあ、エミは魔王に会っていたのか」

「そう、魔王とは知らずにね」

「そりゃ、魔王がこんなに可愛い生き物とは思わないよなあ」

 

 キムラサン画伯が描いたたぬきちの絵を眺めて、テオがぼやく。

 

「そうか、異世界の物であれば、魔王のことは記載できるのか」

「あかりに頼んでノートを分けてもらいましょう。そこに書いておけば、次回の魔王に対処できるはずよ」

「そうだな」

 

 辺境伯様も驚いている。

 

 とりあえず私がたぬきちから聞いたことを伝えた。

 魔王は世界に呼ばれる。この世界を滅ぼそうとする悪意あるものを倒すために。そして、それが終われば再び眠る。それを行うのが、勇者と呼ばれるもの。

 

「たぬきちは今朝、世界に呼ばれたと旅立ってしまったわ。これから魔物の量も増えるし、何か禍も起きる。これからが本番よ」

「そうだな」

 

 ルカスが頷く。

 

 あかりの結界の話もした。

 辺境伯領の皆さんに、いざという時に避難する場所を再度確認するようにとか、武器の準備や食料とかの備蓄関連も同様に。

 

「まあ、いざとなったら、王城から食料は手配可能だ。城内に転移陣があるからな」

「そこはありがたいわね」

 

 やれることは全て行おう。

 私達は、他のメンバーも集めて更に念入りに打合せを行った。

 

 

*****

 

 

「あかり」

「やっほ、ひかりちゃん。どったの?」

 

 訓練所のあかりを尋ねた。打合せが長くて、かなり遅くなってしまった。

 

 私は今まで打ち合わせしていた内容を教えた。魔王のこと、魔王の目的のこと。そして、これから本当の戦いが行われることを。

 

「そっか。とうとう始まっちゃうんだ」

「怖いね」

「うん、すごく怖い」

 

 あかりの手を握った。

 

「大丈夫。私がいる。絶対あかりを守るから」

「うん。私の固有スキル、全然使いこなせていないんだけど、がんばる」

 

 あかりの手が震えていた。

 

「ねえ、よく考えたらさ」

「何、ひかりちゃん」

「うちの家系って、ぶっつけ本番に強かったよね」

「そういえば……そうかも」

 

 脳裏に今までの家族の様子が浮かんだ。

 

「うちって、テスト勉強したことあったっけ」

「……あんまり」

「マラソン大会あっても、練習したことないよね」

「お姉ちゃん達が頑張る姿って、趣味以外ないけど」

 

 うん、大丈夫な気がしてきた。

 

「そうだね、なんとかなるか」

「だよねー」

 

 それでも、二人とも、手の震えは止まらなかった。

 

 大丈夫。絶対、大丈夫。

 失踪して半年後には、あかりはちゃんと家に帰ってきたから。

 

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