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107/131

107・誰かのことを忘れました

 

 夕飯も終わってお風呂にも入って。後は寝るだけ。

 毎日のその眠る前の僅かな時間に、私はいつも何をしていたのだろう。

 何か大切なことを忘れている。

 誰か大切な人を。あれ、人だったかしら。

 

「何かしら。何を忘れているの、私」

 

 フラフラと歩く。

 どこに向かっているのかしら。

 

 リナリアの秘密基地の横を通って、更に奥へ進んだ。

 謎の看板群を素通りして、その奥に現れたのは、小屋だった。表札にはキムラサンの名前が彫ってある。

 

「キムラサン、いるの?」

 

 恐る恐るドアを開けた。

 中は暗くて、何も見えない。火魔法を浮かべて辺りを見回した。中には家具が備えてあった。

 キムラサンが住むように見えないんだけど。あいつは木の中にひっそり立ってみんなを驚かすのが趣味で……。

 

「あら?」

 

 気がついたら涙が止まらなかった。中に入って、ソファの上のクッションを抱きしめた。

 

「マスター……」

 

 背後からキムラサンの声が聞こえた。振り返るとキムラサンがドアの前に立っていた。

 

「ねえ、キムラサン、私は何を忘れてしまったの?大切な大切なことだったのに」

 

 クッションを抱きしめたまま、キムラサンに問いかける。

 嫌だ、嫌だ、忘れたくない。

 

「マスター、これを」

 

 キムラサンが、手にしていた紙を私に見せてくる。

 そこに描かれていたのは。

 

「タヌキ?」

 

 ノートの切れ端に描かれていたのは、タヌキの絵だった。

 

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