表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/45

第二章 ①⑤

ふくらはぎを差し出したものの、サヨリさんはガッツリとしがみついているものだから、寝ていても気になって仕方がなかった。


お陰で早くに目が覚めて寝不足だった。身体を丸めて微かな寝息を立てながら眠る重美さんを他所に、僕はオシッコをする為に身体を起こした。


ライトを持ち少し離れた針葉樹の影に入ってチャックに手をかけた。


「おはようございます」


サヨリさんがふくらはぎにしがみついたまま顔を覗かせ下から僕を見上げた。


「サヨリさん。起こしちゃったかな?」


「いえ。とっくに起きていました」


「そうなんだ?なら寝不足じゃないですか?」


「はい。気になった事があり、それを考えていると眠れなくなってしまいました」


「そうなんですね」


「はい」


「どんな事が気になったんですか?あ、いえ、話せるのであればで、良いです」


「それは全然平気です。寧ろ、貴方様たちの会話の中に出て来た言葉ですので私めの方から教えを請いたいとお願いしたいくらいです」


「へぇ。サヨリさんとは普通に会話が出来ていたので、わからない言葉があるとは思いもしなかったですよ」


僕が言うとサヨリさんは見上げた顔を左右に振った。


「で、そのわからない言葉ってなんですか?」


僕はいいチャックを下ろす。そろそろ我慢の限界だ。そこから手を入れ、朝立ちしているチンコを掴んだ。


「チンコって言葉です。私めはそれが何を意味しているのか、さっぱりわかりませんでした。だから気になって気になって……」


「ちょい待ってくれますか?」


僕はいい一旦、サヨリさんにふくらはぎから離れて貰った。そして更に奥へ行き、用を足した。


ライトを掲げ戻ってくるとサヨリさんは重美さんの胸に抱かれていた。


「あ、重美さんおはようございます」


「チンコくらい教えてあげれば良いじゃん。せっかく朝立ちしてたんだろうからそれを見せてあげれば済んだのに。つか眩しいだろ!」


「あ、すいません」


僕はライトを地面に置いた。


「大魚が教えてあげないから私が教えたから」


重美さんが言う。視線を重美さんからサヨリさんに移すと心なしか顔が赤くなっているようだった。


「こんな顔しててもサヨリも女の子なんだよ。私が説明したら、照れてやんの」


「重美さんが恥じらいが無さすぎるんです」


「瞬間欲情勃起野朗に言われたくないわ」


「これは自然現象ですので欲情しているわけではありません!」


「へー。そうなんだ。そうなんだねぇ」


薄闇の中にライトの灯りで浮かぶ重美さんのニヤけた表情を見て、少しばかり背筋がゾッとした。

僕に対して復讐を誓ったようなその表情を怖いと感じてしまったのだ。


「まぁとにかく、サヨリが気になって眠れなかった原因の勃起とチンコの事はこれで一件落着って事でさ。サヨリ」


「何でしょうか?」


「サヨリの種族の男のチンコは、ヒヨリ達の言葉で何ていうの?」


尋ねられたヒヨリは一瞬、僕を見てから重美さんに耳打ちした。


「トーテムポール?へぇ。なら女性のあそこは?」


秘密にしたかったから耳打ちしたヒヨリさんの気持ちを重美さんは台無しにし、更にあっさりと破壊しちゃうような事を尋ねた。


再び恥ずかしそうに耳打ちするサヨリさん。 


「いや、サヨリさんそこは言ったらダメでしょ!」


「とびっこ?ふ〜ん。とびっこねぇ」


お寿司かよとツッコミそうになるのを僕は我慢した。


「寧ろ、とびっこって名前がついた理由が知りたいわ」


三度、耳打ちされた重美さんは突然、笑い出した。


「確かに確かに。そんな風に見えちゃうね」


「え?重美さん、何です?僕にも教えてくださいよ」


「は?やらねーよ」


結局、重美さんはとびっことついた理由は何度もお願いしたが教えてくれなかった。勿論、サヨリさんもだ。


少し不貞腐れた僕だったが、女同士、さっきの会話で打ち解けたのか、森の終わりを求めて歩き出した時、サヨリさんは重美さんの肩に座って首にしがみついていた。


途中、サヨリさんが甲高い声をあげて上の方を指差した。僕達は足を止めてその木を見上げた。


針葉樹の森の中にとても小さくて赤い果物の木があった。枝には見た目がリンゴに似た果物が沢山実っていた。


サヨリさんの話だと、果物は一年中実っているそうだ。取っても10日もすれば新たな実がなっているという。


「それなら、その木の周りを棲家にすれば移動しなくて済むじゃん。ね?」


重美さんの言葉に目から鱗じゃないがサヨリさんは何度も頷いた。


「重美様は本当頭が良いお方です。私めは勿論、家族や仲間もこれまで一度としてそんな事を考えもしなかったです」


「マジで?」


驚きを隠さず重美さんが言う。そしてサヨリさんを抱き上げ、伸ばした鼻が届く位置くらいの場所の木を掴ませてあげた。


「マジです」


サヨリさんはいい、その長い鼻を持ち上げ果物へと伸ばした。だがいつまで経っても果物を取ろうとはしなかった。


「どうしたんですか?」


「あ、いえ。掴んだ時に感じる痛みの事を思うと恐ろしくてですね……」


そう言えばサヨリさんは鼻先は凄く敏感で何かに触れたりすると痛みが生じると話していた。

だから取れずにいるのか。


見かねた僕が果物を取ろうと手を伸ばすと、その手を重美さんが叩いた。


「ダメでしょうが。サヨリとはいつか別れなきゃいけないんだよ?ずっと一緒にいるなら構わないけど、サヨリには家族もいる。いつになるかわからないけどその家族の元へ帰るつもりでもいるね。こんな所で私達が手伝ったりしたら、今後、果物を見つけた時どうすんのよ?サヨリは私達が戻ってくるのを待つわけ?」


厳しい言い方だけど、確かに重美さんの言う通りだ。


「そうですね。サヨリさん。頑張って」


「はい。頑張ります」


サヨリさんは意を決して鼻先で果物を掴んだ。


「痛い痛い痛いんじゃボケが!」


そう喚き散らしサヨリさんが鼻を引っ込めた。


その様子を見た重美さんが深刻な表情を浮かべていた。だが直ぐに崩れ腹を抱えて笑い出した。


「ギャハハハハハ!」


「重美さん、笑う所じゃないでしょ!」


「悪い悪い。あんな痛がるとは思わなかったし、それにサヨリの言い方がツボで」


身の危険を感じた時に、サヨリさん達種族はさっきのような言葉を吐く。怒鳴るような言い方をする事で襲い掛かろうとして来たモノを驚かせ萎縮させるそうだ。つまりサヨリさんは果物に対して身の危険を感じる程の痛みを覚えたという事のようだ。


「サヨリにはあんだけくっつく力があるんだからさ。木に登って手で取れば良くない?爪だってあるんだからさ」


重美さんを見るサヨリさんの目が潤んでいた事に僕は胸を打たれた。きっとそういう事を考えすらした事もなかったのだろう。  


言われたサヨリさんは直ぐに木登りに挑戦し、あっという間に果物をもいで、口にした。


ムシャムシャと食べながら新た果物へ手を伸ばす。お礼と言わんばかりに僕と重美さんに手渡した。


「ありがとう」


「これでサヨリ達種族は、新たな進化へと突入する事になるんだね。私達は一種族のそれをまさに今、この瞬間、この目で目の当たりにしたんだよ。歴史的快挙だわ」


そう言い重美さんはスマホを取り出した。


「動画撮るから、ほら、サヨリ?もう一度果物を取って見せて。あ、いや、鼻で取ろうとする所から始めてさ。それが出来ず、悔しがり、爪で樹の幹を引っ掻いて、暴言吐いた後にそうだ!って閃いた顔をして、果物を取ってみせて!はい。よーい!スタート!」


サヨリさんは頷いた。サヨリさんの鼻が果物に触れた瞬間、悲鳴と怒号が入り混じり、スマホを持った重美さんの馬鹿笑いが森の中に響き渡った。


笑い声が入った為に一度カットを入れた重美さんだったけど、その後も繰り返し撮影する度に笑ってしまう為それもありだわと開き直ってから、ようやくサヨリのお食事タイムというどうしようもないタイトルをつけたヒヨリさんの動画撮影が終わる頃には、サヨリさんの長い鼻先は赤く腫れ傷ついていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ