第92戒 勇者との対決
「一体その目がなんだと言うのだ?そんなもの1つで僕達に勝てるとでも?」
当然のようにリヒトは聞いてくる。それに対し陽炎は何も言わずに不敵な笑みを浮かべた。そして、少し目に魔力を溜め何時でも使えるように準備をする。
「お兄ちゃん、早くこいつを殺そうよ。なんだか嫌な予感がするわ」
「そうだな。”シャイニングソード”」
リヒトはいきなり攻撃を仕掛けてきた。当たればやばいのだろうが、当たらなければ意味は無い。謎の男の技がわかるまで様子見といきたいところだが、それではやられてしまう。陽炎は初めから本気で行くつもりだ。
「殺す」
そうとだけ呟くと、背中のヴェルトラウムに手をかけた。そして、素早く引き抜くと、闇のオーラを纏わせる。そして、左目を見開いて言った。
「”もっと近くに寄れ。リフレイン”」
「何?急に……っ!?」
突如、リフレインの体が陽炎に引き寄せられる。リフレインは引き寄せられないように全力で抵抗した。しかし、引き寄せる力の方が断然強い。リフレインはあっけなく陽炎の目の前まで引き寄せられてしまった。
「クソッ!”シャイニング……”」
「”黙れ””動くな”」
その言葉で、声が出なくなる。さらに、手足が動かなくなり避けることも出来なくなった。陽炎はその隙を見逃さない。ヴェルトラウムを触れあげると、凄まじい速さで振り下ろす。
しかし、それがリフレインに当たることはなかった。なんと、リヒトがギリキリのところで防いだのだ。そのため、リフレインには刃が当たらない。
そこで手こずっていると、謎の男が魔法を唱えた。
「”インフェルノバースト”」
陽炎の周辺の温度が少しずつ上がっていくのがわかる。しかし、こんなものは陽炎に通用しない。
「”下がれ””こっちに来い””黙れ”」
この3連コンボで温度の上昇はとまり、謎の男は引き寄せられてきた。そして、リフレインと同じように声が出なくなっている。
陽炎はそうなった謎の男の首をはねた。そして、リフレインの心臓に目掛けてヴェルトラウムを向ける。
「っ!?やめろ!」
リヒトの声が聞こえた。しかし、聞こえないふりをする。陽炎の持っていたヴェルトラウムはリフレインの心臓を難なく貫いた。
リフレインの胸から紅い液体が吹き出てくる。その紅い液体はリヒトの頬に飛び散る。リヒトはそれを手に取ると、絶望の目で見つめた。
「なぜこんなことを……!?」
「お前らが俺を殺そうとするからだ。お前らの仕事は俺を殺すこと。勇者が魔王を殺すのは普通だからな。だが、なぜ魔王が勇者を殺してはならないと思っている?お前は俺に殺されないという確証がどこにある?」
「だが、勇者を殺してはならないというのがこの世の理だ!」
「俺にそんなものは通用しない。理さえも歪めてしまうからな」
陽炎はそう言ってリヒトの目の前に立った。リヒトは目から血の涙を流しながら、悲しい目を向けてくる。しかし、陽炎はそんなこと何も気にしない。ヴェルトラウムを振り上げるとリヒトに向かって勢いよく振り下ろした。
リヒトの首が飛んでいく。そして、紅い液体が辺りに飛び散った。まるで噴水のように出る紅い液体は、少し時間が経つと収まっていく。
そして、リヒトは絶命した。
「ククク……フハハハハハ!」
その時、街の入口らへんで爆発が起こった。目を向けると、勇者達が何者かと戦っている。
その敵は、どこかで見たことがある。特殊な魔法具を使っているようだ。糸のようなもの……やはり来たか……
「かーくん、何者かが侵入したよ」
突如テムの声がした。気がつけば後ろにテムがいる。どうやらここまで駆けつけてきたらしい。
「そうだな。侵入者は排除しないとだよな」
「うん!じゃあ行こっ!」
「……フフッ、そうだな」
陽炎はテムに向かって優しく微笑みかけると、一瞬で悪に満ちた不敵な笑みを浮かべてテムをヴェルトラウムで突き刺した。
剣先から黒い魔力が溢れ出てくる。それは、ある程度放出すると今度は吸収し始めた。そして、テムの姿は別人へと変わってしまった。
「やはり偽物か!ふざけるなよ!」
陽炎はそう言って偽物テムの首を切り裂く。そして、左目に太極図を浮かべながら言った。
「”消えろ”」
陽炎がそう言うと、偽物テムの体は消えていった。
「……ったく、一体なんだったんだよ。早く向こうに行かないといけないってのに……っ!?」
唐突に魔力が体の中から抜けていくのを感じた。しかし、魔力が減ったような感覚は無い。そんなことを思っていると、左目から血が流れ落ちてきた。
「あぁ、なるほどね。使いすぎも注意しないといけないわけね」
そう小さく呟くと、陽炎は急いで近くの建物の屋根の上に飛び乗る。そして、周りを見渡してから爆発の起こった方向まで急いで向かった。
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