第90戒 世界の変動
アロンダイトは目の前の全てを切り裂いた。空間さえも切り裂かれる。陽炎の目の前にいたエルフの女王は右肩から左の脇腹まで真っ直ぐ切り裂かれた。
エルフの女王は体が2つに別れる。そして、その直後に爆風が吹いた。その風は切り裂いた場所から吹き出している。吹き荒れる風はその場にあるものを全て吹き飛ばした。
陽炎は吹き荒れる風の中静かに振り返る。そして、アロンダイトについた血を払うと鞘に戻す。そして、テム達の元へ歩き出した。
風はますます勢いを強くする。まるで台風が直撃したのかと思うほどに強くなった。両断されたエルフの女王は体が離れないように両手をしっかり繋ぐ。それでも、気を抜くとすぐに離されそうだ。
ある程度風が吹くと、風は勢いを弱めていった。その場にあった灰が吹き荒れ地面が見える。灰が舞う中陽炎はテム達の元まで歩いてきた。その直後、吹き荒れていた風は陽炎が切り裂いた場所に向かって吸い寄せられていく。舞い上がった灰は全て吸い寄せられていった。
エルフの女王は、突然吸い寄せられ対応できない。耐えることも出来ずに簡単に吸い込まれてしまった。そして、二度と出てくるなとはなかった。
その風は、瞬く間にエルフの国全体に広がった。エルフの国にあるもの全てを吸い込もうとする。と言ってもあるものは全て陽炎が灰にしてしまった。だから、吸い込まれていくものは全て灰だ。
「お前ら、俺につかまっていいんだぞ。別に特訓してるわけじゃないんだから助けを求めてもいいんだぞ」
陽炎は少し呆れたように言った。なぜなら、目の前にはテム達がいるのだが、今にも吸い込まれそうなのである。まぁ、吸い込まれれば死ぬだけだから耐えるのは分かるが、自力で耐えなくても良い。
陽炎は小さくため息をつくと、テム達に向かって手を伸ばした。その直後に、テムが力尽きて吸い込まれそうになる。陽炎以外の全員で捕まえて何とかなったがそれでもキツそうだ。
陽炎はテムを掴むと皆の元に持ってきた。そして、全員を一気に抱いてその場を離れた。
「”燃えろ”」
離れる瞬間に、左目を見開き太極図が浮かぶ目で見ながらそう言った。すると、何も無いところが燃えだす。その炎は吸い込まれていき何故か大爆発した。
多分、風が強すぎて炎が一瞬で強くなりすぎたのだろう。その炎によって発生した風で吸い込んでくる風が収まった。
「終わったな」
「うん……」
「……かーくん、大丈夫なの?」
「何が?」
「その左目……ずっと使ってるでしょ」
フェルルとファルルは心配そうな顔をしてそう聞いてきた。確かに沢山使ったがどうやら今回は命に関わる代償ではなかったらしい。どうやら今回の代償は永久的なもの……
「フッ、まぁ、魔法が1つも使えなくなったこと以外なんともないよ」
「え!?」
「じゃあ、まーくんはもう魔法が使えないの?」
「あぁ、使えない。それに、俺が前に使っていた技を全て忘れてしまった。それらも全て使えない」
『え!?』
皆は素っ頓狂な声を上げた。しかし、陽炎の落ち着き具合を見て何故か落ち着く。陽炎は少し微笑むとエニムの元まで歩いていき肩手を置いて言った。
「ま、そう言うことなんでよろしくな」
『……』
全員は呆れて何も言えなかった。だが、それ以上にテムが帰ってきたことが陽炎のおかげということもあって何も言えなかった。
エニムは少し笑うと魔法を転移魔法を発動した。そさて、その日からエルフの国はこの世界から消えた。
━━陽炎は久しぶりに魔王城に帰ってきた。すると、何故かすごく慌ただしい。泣いている人も多い。陽炎達は急いでディリーとルーシャの元まで急いだ。
「ディリー!何があった!?」
「か、陽炎くん!皆が……!」
ディリーも泣いている。一体何が起こったのだろうか?陽炎は が急いで駆け寄ると、驚きの真実が待っていた。そこには、白い布を被せられ眠っているα達がいた。
「な、なんでこんなことに……?ギルシアはどこだ?」
「ギルシアなら今国の修復をしているわ。そして皆は……!」
「私が話します。かげくんが出て行って2日ぐらい経った時だった。突如、魔王城の前にロキが現れたの。ロキは、オーディン、デュスノミアーを殺したと言って来たわ。そして、私達を殺すって……!α達は私達を守ってくれたわ。そして、そして……!」
「もう良いよ。分かったから。ありがとな、教えてくれて」
……まさか、俺が居なくなっている間にこんなことになっていたとは……
「これからどうするかだな。まずは……」
「魔王様!ご報告があります!」
「なんだ?」
「大北魔道連盟国が北の大陸を制圧しました!そして、セントクロスがダークインベージョン、カオスアトランティスを滅ぼし吸収しました!」
何!?嘘だろ!?俺がテムを取り返そうとしている間に何が起こったんだよ。
いや待て、そうなると今この国で大きな勢力を持った国は大北魔道連盟国、セントクロス、大魔界帝国の3つだということだ。そして、それらをくっつけないようにする壁役となっていたエルフの国は俺が消した。
「これはまずいね。早急に対策を打つ。全員、α達の弔いが終わり次第集まってくれ」
陽炎はそう言うと、部屋に戻って行った。テム達は、戻ってきたことに対する歓迎パーティを開くまもなく次の仕事に取り掛かった。
α達の弔いは秘密裏に行われた。口外すれば、この国が疲弊していることが知れ渡り攻め落とされる危険性があったからだ。そうでなくてもロキが何時攻めてくるかも分からない。油断したり隙を見せたり出来ない。
陽炎は弔いが終わったあとすぐに会議を行った。そこでは、これからの方針を話し合い再度敵を確認した。ここで1つ気になったのが、陽炎の母親と祖母はどこに行ったのかだ。祖父と父、姉へ見つけたがその2人だけは見つからない。
だが、大体の予想はつく。もしかしたら、本気で殺し合わないといけないかもしれない。まぁ、その時は本気で行かせてもらうがな。
「よし、これで方針は決まった。恐らくこれから忙しくなるだろう。だから、皆も気を引き締めて欲しい」
陽炎はそう言って解散させた。そして、真っ直ぐ部屋に戻った。
「まさか、俺が居ない間にこんなことになるなんてな。さて、どうしようか?」
……恐らくセントクロスのボスはあの人だ。だから、先に大北魔道連盟国を潰すべきだ。だが、勇者が面倒臭い。しかも1人じゃないときた。
「フフ、これから忙しくなりそうだ」
陽炎はそう小さく呟いて不敵な笑みを浮かべた。
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