第88戒 死の光
陽炎はエルフの女王の目を見つめる。どうやら目で幻術にはめるタイプの技は持ってないらしい。もしくは使ってないかのどっちかだ。
だが、そんなことはどうでもいい。とにかく今はこいつを殺すだけ。そして、この国を世界から抹消する。それが俺のやるべきことだ。
「私を殺すといのですか?無駄なことです。あなたは私に勝つことは出来ません。もし、今すぐに降伏するというのであれば捕虜として生かしてあげますが……」
「そんなものになるくらいなら死ぬね。それに、なんで俺が負けるって決めつけてんの?もしかして口で勝負したいの?そういうのは書面で送ってくれないかな。ちゃんとした会議の場を設けるから」
陽炎は生意気そうにそう言う。そして、不敵な笑みを浮かべると地面に手を付き魔法を唱えた。
「”加工”」
陽炎の周りの木々がなぎ倒されていく。そして、だいたい半径3キロくらいの木々が無くなった。これで戦いの準備は万全だ。あとは、自分の実力を信じるだけ。
「かーくん、勝てるの?」
「勝てるよ。テムもいるし、皆もいる。あとついでにエニムもいる。気づいてんだよ。出てこいよ」
「あはは……バレちゃってたか」
そう言って陽炎の影から現れたのはエニムだった。どうやら陽炎に着いてきたのはいいが、結界で外に出られなくなったらしい。しかし、陽炎が力を取り戻して外に出られるようになったみたいだ。
まぁ、力を取り戻したって言っても全部ではないがな。それでもエルフの女王を殺すくらいの力はあるだろう。
「よし、家に帰ったらご馳走だな」
陽炎はそう言うとエルフの女王に向かって走り始めた。凄まじいスピードでエルフの女王に迫り、一瞬にして距離を詰めた。陽炎の間合いにエルフの女王が入る。
「”炎流・紅蓮血斬”」
アロンダイトを引き抜いた。アロンダイトに炎がやどる。そして、その炎はエルフの女王を包み込んだ。その上から陽炎は剣を振り下ろす。アロンダイトは綺麗に女王へと向かっていったが、攻撃が通らない。
なんと、女王は仲間を盾にした。なんでそこに仲間がいるのか分からないが、その死体をなげつけてくる。陽炎はその死体を切り裂くとその血を使って剣を強化した。
「終わりだ。”残血斬”」
陽炎の姿が消えた。そして、気がつけば陽炎は後ろにいる。エルフの女王は一体何が起こったのか分からなかった。陽炎がなぜ後ろにいるのか、何をしたのか、さっきの技はなんなのか、分からないことばかりだ。だが、一つだけ言える。それは……
「それは、お前がもう負けているということだ」
陽炎のその言葉と同時にエルフの女王の腹の当たりが切り裂かれた。血が吹き出す。地面にはエルフの女王の血が飛び散り真っ赤に染まった。
陽炎はそんなエルフの女王に気にすることもなく、剣をかまえ追撃をする。
「私を舐めないで貰いたいわ!”プリズムフォトンブラスト”」
「そんなもの効くか。”雷流・霹靂神の閃電”」
陽炎の体が光る。そして、雷のような轟音を立て光線の隙間を抜けていった。陽炎は一瞬にしてエルフの女王の間合いに入り込む。そして、剣先を向けた。
「終わりだ」
陽炎はそう言うと心臓に剣を突き刺した。エルフの女王は血を吹き出す。そして、その場に倒れ込んだ。陽炎は剣を抜くと鞘に収める。そして、周りを見た。
人が沢山いる。何故かエルフの兵が囲っているのだ。しかし、攻撃しようとするそぶりはなく殺気も感じない。それどころか生きている気がしない。
「まさか……!”封印術式立方体”」
陽炎は咄嗟にテム達を封印した。そして、キューブをエニムに渡す。
「え?何してん……!?」
陽炎はエニムを影の中に詰め込む。そして、影を閉ざした。そして、この空間を消し飛ばす時空爆発が起こったのはその2秒後だった。
空間が白く染まる。そして、キィィィンという甲高い音が響き渡った。とてつもない魔力の波が陽炎を襲う。陽炎はその波でアバラの骨を折った。さらに、飛んでくる木々が腕にぶつかり腕の骨を、足にぶつかり足の骨を折った。
陽炎はそれでも踏ん張る。飛ばされまいと踏ん張る。しかし、その波は強く到底抵抗できるものでもない。遂に陽炎は吹き飛ばされてしまった。そのせいで地面に何度も体をうちつける。
と、その時突然波が止まった。そして、すぐさま新しい波が襲う。今度は中心に吸い寄せられる。中心には黒い玉があり、入ったものを塵に変えている。
入ったら終わりだろう。頭の中ではわかっている。しかし、陽炎は抵抗できない。両手両足の骨を折られ抵抗する力がない。陽炎は為す術なく吸い寄せられていく。
「どんなことが起こるんだろう……」
陽炎は小さく、誰にも聞こえないようにそう呟くと右目を見開いた。そして、そこには何も無くなった。
━━少ししてエルフの女王は目を覚ました。どうやらまだ生きていたらしい。蘇生魔法でも使ったのだろう。そして、エルフの女王は目覚めてすぐ頭が真っ白になった。
なぜなら、エルフの森がなくなっていたからだ。確かに、自分が死んだ時に発動する魔法を使ったが、ここまで消し飛ぶことは無い。それに、消し飛ぶのレベルが違いすぎる。自分が使ったのは消し飛ぶと言っても木々がへし折られその場に散乱する程度のもの。この消し飛ぶは本当に消し飛んでいる。ここにあったものは全て塵と化し、地面に落ちている。遠くを見れば城や街はあるのが見える。しかし、本当は木々が邪魔で見えないのだ。
「一体……何が起こっているの?どうしてこんなことに……」
「それは、俺が消したからだ」
どこからかそんな声が聞こえた。その声に聞き覚えがある。陽炎だ。しかし、どこにも見当たらない。
「わかったわ……後ろね!」
しかし、居ない。大抵こういう時は後ろから不意打ちを狙ってくるはずなのに……。
「どこ……どこなの?出てきなさいよ!」
「ここだ!」
そう言って陽炎は塵の中から飛び出してきた。よく見れば、折れた骨は治ってはいるが身体中に傷がある。それに、火傷のあとも多数ある。
「最終決戦だ。お前達は離れてろ」
陽炎はそう言ってキューブを開けた。すると、影の中から声が聞こえてきた。どうやら影の中でキューブが開いたらしい。
「あなた、私と1体1で戦うと言うのですか?馬鹿なことを」
……そうだな。確かに今の俺では何も出来ない。魔力も底をつき力も出ない。古代眼の能力もあまり使えない。だが、まだ打つ手はある。
「目で語って教えてやるよ」
陽炎はそう言うと、右手を天に掲げた。
読んでいただきありがとうございます。感想などあれば気軽に言ってください。




