第87戒 再会
1人が陽炎に向かって走り出した。それに続いて衛兵が全員向かってくる。魔法でどうにかしようと思ったが、さっきの魔法を見た感じ弱まっているので使わないでおこう。
「フェルル、ファルル、殺す気でいけ」
『ん!』
「ルーンファール、お前は俺とこい」
4人は武器を構え走り出す。そして、思った。そういえば、魔法を封じているものを壊そうと思ったが忘れていた。まぁ、どうせなかっただろうから探すだけ無駄だっただろう。
「”炎流・炎遠”」
一振で当たり一体を焼き払う。しかし、さすが側近とでも言うのだろうか。あまり効果は期待できない。それどころか、逆に怒らせてしまったようだ。
こうなってしまっては仕方がない。他の技で倒す、と言いたいが恐らくそこまで意味は無い。女王を殺せば早いのだがそれも厳しそうだ。それに、テムの居場所も気になる。
「やっぱやめた。皆集まれ」
陽炎は全員を呼び戻すと体が密着するほどに近寄らせる。
「どうしたの?」
「いや、こうした方が早いと思ってな。”土流・土龍降臨の大地”」
背中からアロンダイトを抜き床に叩きつける。すると、床に大きなヒビが入り瞬く間に大きくなっていく。そして、城全体が大きく揺れ砂煙を巻き散らかし始めた。
「”樹戒呪・探魂”」
木々は振動を放ち、人の生命力を感知する。隅々まで行き渡ったところでテムらしき反応を見つけた。それは、ちょうどこの部屋の真下にあった。
「よし、お前ら掴まれ。このまま下に落ちるぞ」
「へ?」
「え?」
「なんで?どゆこと?」
3人は口々にそういうがすぐに気がついた。なんと、地面が沈んでいる。と言うより城が壊れている。そして、床は砂煙を上げながら崩れ落ちた。陽炎達はそれに巻き込まれ1階下へと落ちる。下に落ちた陽炎達はすぐさまその場を離れると、部屋の中の確認を始めた。
そこには、特に変わったものはなかった。しかし、落ちた衝撃で少し瓦礫が多い。陽炎は瓦礫を退けながらテムを探す。フェルル達は何が起きているのかわかっていない様子だったが、陽炎が何かを探す姿を見て探し始めた。それに、何を探しているかはわかっている。
「”フレアフレイム”」
「っ!?”封印術式立方体”」
咄嗟に封印するどうやらもう体制を建て直したらしい。このままではテムを見つける前に殺されかねない。
「どこだ……テム」
陽炎は目を閉じるとその場に立ち尽くした。当然そんなチャンスを逃すはずはない。エルフの兵達は一気に陽炎に向かって魔法を放つ。
「”次元壁”」
陽炎がそう唱えると壁が現れた。それは魔法が当たると全て飲み込んでしまった。エルフの兵達は魔法がダメだと一瞬で悟り、剣をもつ。そして、飛び立ち陽炎前まで来た。
「死ね!」
白刃が迫る。恐らくあと一秒もあれば当たるだろう。だが、まだ1秒もある。
「俺の勝ちだ。”呪戒古代眼””強制死刑”」
突如エルフの兵はその場に倒れた。よく見なくても死んでいる。陽炎はそんなエルフの死体を見てもう一度目を閉じた。そして、次に開いた時には目は元に戻っていた。
「かーくん!?大丈夫!?」
「問題ない。今はな。早くテムを探すぞ」
「本当にここにいるの?」
ファルルのそんな問いに陽炎は頷く。そして、周りを見た。俺がテムだったらどこに行くだろうか?そんなことを思いながら穴が空いている場所を見つけそこに行く。
あーなるほど。理解した。なんでこんなに探しても見つからないのだろうかと考えていたが、これを見たらすぐにわかった。
「うん、分かった。テムはここから落ちたんだろうな」
『え?』
「さぁみんな、行くぞ!」
なんかすごいやる気を出している。久しぶりこんなに明るい陽炎を見たような気がした。3人はそんな陽炎を見て少し微笑むと飛びつく。
「うぉあ!ちょっ、ヤバっ!」
そのまま陽炎達は穴から落ちていった。落ちる前は何ともなかったのに落ちてみると意外と怖い。なんと言うか、自分が死にそうとかじゃなくて周りの3人が死にそうだ。それがとても怖い。
「なんで押したんだよ。せっかくキューブに入れて行こうと思ったのに……仕方がない。俺の上に乗ってろ」
そう言って地面に背中を向け3人と向き合う。3人は最初は意味がわかってなかったが、気がついたのか上に乗ってきた。
……容赦ないな。今回は特別だぞ。
そんなことを思いながらどんどん落ちていく。そして、突如背中に激痛を感じた。背中がやけるようだ。めちゃくちゃ痛い。ていうか熱い。
……ん?ちょっと待てよ。なんであの高さから落ちて地面が抉れないのだろう?水の上か?だとしたら熱いのがおかしい。
「……くん……かーくん!ここマグマの上だよ!」
「はぁ!?”キューブ”」
陽炎は咄嗟に3人を封印する。そして、足を沈めて顔を上げると確かにマグマの上だった。
「いや、あっつ!」
陽炎はマグマから出ると体に水をかける。どうやら自分の超速再生スキルで死ななかったようだ。陽炎は焼けてしまった部分を魔法で元に戻すとキューブの中から3人を出す。3人は震えながら出てきた。
「なんでそんなに震えてんの?」
「いや、キューブの中が寒かったから」
「あぁ、悪い」
そんな会話を少しして再び足を進め始めた。3人は立ち上がると急いで陽炎に追いつく。陽炎は早歩きでどこかに進み始めた。
3人は陽炎がどこに行くのか気になった。しかし、聞くことは無い。なぜなら目の前にその目的となる人物がいるからだ。陽炎はその女の子を見ると急に走り出した。
水が飛んでくる。雨かとも思ったが空は晴れている。
「……テム!」
陽炎は大声で叫んだ。その声が聞こえたのか、その女の子はピクッと震える。陽炎は走り出すと、誰も追いつけないような速さまでスピードをあげる。そして、飛びつくように抱きついた。
「テム!会いたかったよ!」
「かーくん!?なんで帰らなかったの!?」
「テムに会いたかったかだよ!」
陽炎は涙を流しながらそう言う。テムは少し怒りのオーラを放つが再会できた喜びが勝って涙がこぼれてくる。
「……うぅ……かーくん!私も会いたかったよぉ!うわぁぁぁぁぁぁん!」
「テム!俺もだよ!」
2人は抱き合ってそう言い合う。後から来た3人はその様子を見て微笑むと、自分達も涙目になる。やはり、テムと会えたことが皆嬉しいようだ。ルーンファールも陽炎の姿を見て嬉しくなっている。
陽炎はしばらくテムを抱くと、何か殺気を感じてその場を飛び退く。すると、その数秒後に槍が飛んできた。
「お前ら!逃げるぞ!」
陽炎がそう叫ぶと3人は逃げ出す。陽炎はテムをお姫様抱っこで持ち上げると逃げ出した。
少し逃げると開けた場所に出た。そこには何も無く闘技場のようだ。
「なるほど、ここが最終ラウンドってことか」
「そういうことですよ。早速死んでください」
そう言って現れたのはエルフの女王だった。
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