第81戒 必殺の策略
「よくやった。離れてろ」
陽炎は小さく呟いて、魔法を唱えた。すると、フェルルとファルルの姿が消える。それを見ると、陽炎は背中の剣を抜いた。
「さて、俺はお前らを殺そうと思うのだがお前らはどうする?」
陽炎はそう聞いた。その問に七星剣の皆は笑う。
「そんなの決まってますよ」
『殺すに決まってるじゃないですか』
陽炎の問いに七星剣は揃ってそう言った。陽炎はその答えを聞いて不敵に笑う。
「フフ、それならこっちも本気を出そうかな」
そう言って剣を抜く。そして、魔力を流して発火させた。剣に炎がまとわりつく。螺旋を描いてまとわりついた炎は辺りの温度を上げる。
「”炎流・遠炎”」
炎が七星剣を襲う。しかし、炎は切り裂かれ辺りに巻き散らかされた。
「こんなものが今更効くと思っているのですか?」
「舐めるのも大概にしろよ!」
口々に言ってくる。確かにそこまで強い魔法は使ってないがさすがに言い過ぎだと思ってしまった。陽炎はそんなことを思いながら剣を地面に突き立てた。
「”土流・地裂壊波”」
陽炎が剣を押し込むとその部分を中心として波が起こる。その波は周りの木々をなぎ倒し、大きな地震を起こした。
「何してんの?無駄すぎるだろ!馬鹿だなお前は!」
七星剣の1人が言ってきた。確かに七星剣は全員飛んでいる。だから地震は効かないし、関係ない。だが、地震が必ずしも地上だけにしか有効ではない訳では無い。
「無駄かどうかはこれを見てから言ってみろ」
陽炎はそう言って剣を抜いた。そして、すぐにその場から飛び去る。
「待てよ!」
「追いかけます・・・よ・・・っ!?」
七星剣の1人が止まった。目の前に突如黒い壁が現れたからだ。その黒い壁は禍々しいオーラを放ち触れたものを腐食させている。
「さて、これで準備は完了した。お前らとの戦いはあまり面白くなかったよ。もうちょっと歯ごたえが欲しかったかな」
「なっ!?てめぇ!俺たちを舐めるなよ!」
「小生達に勝ったつもりかもしれませんが、まだ勝敗は決してはいないのですよ」
七星剣は口々にそう言ってきた。陽炎はそんな七星剣の全員を見て上を見る。上には禍々しいオーラが屋根を作り外へ出すまいとしている。
「言ったろ、準備は完了した。俺ばっか気にしてたら足元をすくわれるぞ」
そう言って下を指さす。
「いや、違うな。足元から焼き殺されるぞ」
その言葉と共に足元から溶岩が吹き出してきた。
「何っ!?」
「どういうことよ!?」
「このままだと殺される!」
七星剣は慌てだし口々にそう言う。陽炎はその場を離れるともう1つ結界を張る。
「かーくん!どうしたの!?」
「まずいな・・・やりすぎた。このままだとマグマが漏れてくる」
そう言って指を指す。その方向を見ると、マグマが漏れだし結界をにぶつかっている。結界はマグマを遮ってはいるが長くは持たなそうだ。
「ま、どうでもいいや。”封印術式立方体”」
キューブは結界ごと中のものを全て封印した。中にあったマグマや、中にいた七星剣の人達は封印された。
「クッ・・・さすがにこの大きさだとキツイな・・・」
封印して小さくなったキューブを拾うとそっと投げる。そして、魔法を唱えた。
「何か起こってくれよ。”天罰”」
すると、空間に黒い穴が空いた。その穴は凄い勢いで全てを飲み込もうとする。キューブはそのまま吸い込まれて消えてしまった。
「今回はいつもと違うな・・・」
そう呟いて空を見上げる。空は雲ひとつない晴天。さらにここはエルフの国。
「外からの魔法をかき消す何かがあるのかもな」
また呟いて振り返る。後ろには既に大きくなったフェルルとファルルがいた。2人をみて街の方へ足を向けた。
「さて、行こう・・・か・・・っ!?」
かけの言葉は止まった。なぜなら、目の前で2人が倒れたからだ。2人は腹から血を流している。それに、剣が刺さっている。その後ろには人がいて、剣を握っていた。
「やっと・・・やっと隙が出来ましたね」
そう言って剣を引き抜いた。その人は、陽炎に近づくと剣を構えた。
「お前っ!なぜ生きている!?」
陽炎は怒りを混ぜそう聞いた。それもそのはず、目の前の人は女性で見たことがあり、声を聞いたこともある。その女は剣をさっきまで見た奴らと同じように構える。
「私だけ、そう言う能力があるんですよ。ねぇ、魔王様・・・」
「七星剣・・・やってくれたな・・・」
陽炎はそう呟いて背中の剣に手を伸ばす。しかし、後ろから突如剣で刺されてしまった。その剣も見たことがある。
「2人・・・生きてたのか・・・!」
陽炎はそのまま倒れ込んだ。体に力が入らない。普段は傷もすぐ治るが、何故か治りが遅い。急激な眠気と痛みが体を襲う。
「ど・・・く・・・か・・・!?」
陽炎は意識を失った。七星剣の2人は陽炎とフェルル、ファルルの3人を担ぐと城の方へと足を進める。
「私達は上出来ですね。5人も失いましたが、それだけの価値はあった」
七星剣の女はそう言って不敵に笑った。
━━それから数時間がたった。陽炎は気づいたら地下の牢獄に閉じ込められていた。壁は石造りで抜け出せそうではない。
「ここはどこだ?牢獄・・・にしては、警備が薄すぎる。だがこの部屋は抜け出せそうではない。やはり牢獄か」
陽炎は部屋中見渡した。穴を空けれそうでもないし、隙間もない。フェルルの小さくなる魔法では逃げられそうもなかった。
「っ!?そういえば、アイツらは大丈夫なのか?」
ふとそう思った。2人は意識を失う前に刺されていた。かなり致命傷になっていたから生きているのかも分からない。
「生きてますよ」
突然そんな声が聞こえた。声がする方を見ると男が立っていた。
「七星剣の・・・またお前か。いい加減にしろよ」
「フフフ、そんなことを言っても良いのですか?人質がいることを忘れないようにしないと・・・」
「黙れよ。軍事介入してもいいんだぞ」
まぁ、既にしてるけど陽炎は半分脅しに近いような物言いで七星剣の1人と話す。しかし、七星剣の1人は面白そうに笑うだけだ。
「フフフ、無理ですよ。この場所は魔法を受け付けない。だから通信をすることもこの場所を壊すことも出来ないんですよ」
そう言って笑う。陽炎はそれを見て不敵な笑みを浮かべた。
「笑っていられるのも今のうちですよ。諦めてください。・・・あ、あと、小生の名前はルウェルです。七星剣の中で最も強いんですよ。それでは」
そう言って出ていった。陽炎は誰もいなくなった部屋でおもむろに立ち上がると壁際まで歩く。
「どうしようか・・・」
陽炎は壁を触る。何かを調べるように壁を触ると、突然何かを思いついた。そして、また不敵に笑う。
「フフフ・・・あいつも馬鹿だよな」
流石は魔法に特化した国だ。この牢獄も・・・
「魔法の対策しかしてねぇな!”土流・砕岩翔”」
壁を殴ると壁は轟音を立てて崩れていく。
「さて、逃げるか。スタートオブプリズンブレイクだ!」
そういった矢先、七星剣の2人に追いつかれてしまった。
「まさか、あんな方法で逃げ出すとは・・・予想外でした」
そんなことを言って剣を構える。コイツら、すぐ剣を構えるな。
そんなことを思いながら背中の剣に手を伸ばす。しかし、背中には剣がない。
「残念でしたね。持ち物は没収させて頂きましたよ」
「やられたな・・・」
陽炎は2人を見つめて不敵な笑みを浮かべた。
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