第80戒 強襲!七星剣
陽炎は七星剣と言った女を見つめる。この女はルーンファールと言うらしい。この女からは何か嫌な感じがする。
「か、かーくん・・・」
フェルルの様子が少しおかしい。何故か凄く怯えている。ファルルにも目をやると、同じように怯えている。
「どうした?」
「どうしたって、陽炎さんは知らないの!?七星剣と言えば、この世界で最も剣の実力が高い人達だよ!七星剣のトップは剣聖と言って、戦えば骨も残らず切り殺されると言われてるよ!」
怖っ!なんかヤバいやつに絡まれちゃったな。
陽炎はそんなことを思いながらルーンファールと向き合った。そして、対話を試みる。
「なぁ、帰ってくんない。俺はお前と戦いに来たわけじゃないんだよ」
「それはできかねます。私はあなたと戦いに来たのですから」
「じゃあ仕方ないね。2人とも、先に行ってろ」
そう言うと、2人は頷いて走っていった。陽炎はそれを見届けると背中の剣に手を伸ばす。
「遅いですよ。”スターダストピアス”」
ルーンファールの剣は陽炎の体に突き刺さった。無数の攻撃は陽炎に、いくつもの穴を開け血を吹き散らかした。
「・・・何だか呆気ないわね。まぁいいわ、急いで追いかけないと・・・」
「まぁ待て。そう焦ることもない」
突然後ろから陽炎の声がした。振り返ると傷一つない陽炎がたっている。ルーンファールは何が起きているのか全く分からなかった。
「そう驚くな。感情も何も、すぐに消えるから。”水流・水神の太刀”」
水を帯びた一太刀は円を描きながらルーンファールを切り裂く。白刃はルーンファールの体を2つに分けた。しかし、ルーンファールの体は霧のように朧気になる。
「消えた・・・?」
なんと、消えてしまった。恐らくやつの魔法だろう。七星剣と言う割には魔法ばっかりだ。剣の実力は低いのだろうか。そう思えるほどに魔法ばっかり使っている。
「お前、本当に剣使えんのか?」
陽炎は聞いた。その問いに対しルーンファールは嘲笑うかのように答える。
「おかしな質問をするのですね。ご自身の体をよく見てはどうですか?」
ルーンファールはそんなことを言う。何を言っているのか分からなかったが、すぐに分かった。なんと、陽炎の体に無数の穴が空いている。その穴からは血が吹き出して地面を真っ赤に染める。
「これはまずいね」
「そうですね。では、最後としましょうか。七星剣にはそれぞれ1つの技を授けられる。それが私の最大の技ということになります」
ルーンファールはそう言って剣を構える。
「では・・・行きますよ!」
そう言ってルーンファールは前に足を進めた。しかし、すごい速さで迫ってくるルーンファールは陽炎の前まで来ると、そのまま倒れ込むように陽炎の後ろの茂みへとダイブした。
「フフフ・・・」
陽炎は不敵に笑う。そして、振り返ると茂みの方へと足を進める。
「どうした?1人で遊んで楽しいか?」
「クッ、貴様何をした!?」
ルーンファールは茂みの中から体を乗り出しそう聞いてくる。話してやっても良いのだが、この世界は厳しいということを教えてあげないといけない。そんな気がした。だから、教えない。
「自分の頭で考えろ。七星剣なんだろ」
そう言って剣を構える。それを見てルーンファールは後ずさる。
「逃げるなよ。七星剣なんだろ」
そう言って剣に魔力を溜める。すると、剣は白い光を帯び始めた。
「何故こんなにも追い込まれるのだ!?私は、私は七星剣なんだぞ!」
「簡単な話だ・・・」
陽炎は目の前を見据える。そして、一気に剣を振り下ろす。溜めた魔力が解放され辺り一体を吹き散らしながらルーンファールにぶつかる。
「グォォォォォ!私は七星剣なんだぞぉぉぉぉ!」
「諦めろ。お前が戦いを挑んだ時点で負けは決まっていた。これが実力の差だよ」
そう言って振り返る。その後ろは、えぐり取られたように消し飛んだ森の残骸だけが残されていた。
その後、急いでフェルル達を追いかけた。流石に森を破壊したのは良くなかった。これ以上その場に留まると援軍が来る恐れがあったのだ。
「ん?」
少し、おかしな場所を見つけた。周りの魔力の流れがおかしい。それに、1部分だけ魔力が高密度に圧縮されたようになっている。
「良くない気が・・・」
陽炎は魔力が1番集まっている部分へと向かった。そこに着くと、少し開けた場所となっている。
「・・・罠か。ちょっと失敗したな・・・」
そこには2人の女の子がいた。2人はフェルルとファルルの首筋に剣を当てて待っていた。
「そう、ここに来るべきではなかったのだよ。わざわざ敵地まで来て・・・死にに来るようなものだよ」
「そうだね。それで、七星剣が2人・・・そこまで俺に行かせたくないのか?人質までとって、恥ずかしくないのか?」
陽炎は目の前の女の子達を見つめた。どうやら、帰ると言えば話してくれるみたいだ。だが、ここまで来て帰るわけにもいかない。
「押し通るまでだ」
そう言って右眼を光らせる。しかし、向こうからは戦う気が全く感じられない。
「ま、それもそうだな・・・」
それもそのはず、人質を取られているのだ。普通ならここで終わりだろう。しかし、陽炎は終わらない。
「本物と偽物の区別くらいはつけた方が良い。足元をすくわれるぞ」
突如後ろから陽炎が現れた。一瞬にして両腕を切り裂きフェルルとファルルを奪い取る。
「なぜ!?やつはここにいるはず・・・っ!?」
「今気づいたのか?残念だったな。これは俺の影だ」
そう言ってずっと立っていた陽炎が黒く染まっていく。全身が黒く染まると、形を崩し陽炎の影の中に入っていった。
「さて、七星剣2人がかりでも止められないんだ。全員でかかってきたらどうだ?」
そう言うと、周りからエルフが出てくる。さらに、先程倒したエルフもいる。
「七星剣が全員そろうか・・・なかなかの光景だな」
陽炎はそう言って目の前の2人に目をやった。2人は切られた腕を振り回すとすぐに腕を再生する。そして、下へと降りてきた。
「残念だったね。もう、君に勝ち目はないよ」
「七星剣を相手にできたことを光栄に思うんだね」
「そんなことはどうでもいい。早くやるぞ」
全員がそれぞれそんなことを言ってくる。確かに七星剣を全員相手にするのは困難だろうが、できなくも無いはずだ。
「もっとも、剣の技量は俺の方が上みたいだがな・・・」
そう呟いた。その言葉が尺に触ったのか殺気が強まる。案外戦うのは楽かもしれない。そう思っていると、突然後ろから何かが飛んできた。それを捕まえ見ると、光ボールだった。
「これは・・・?」
『死ね』
七星剣が揃ってそう唱えるとその玉は光を強くし爆発した。辺りに煙が立ち込める。七星剣は剣を構えるとその煙に向かって斬撃を放つ。
「不意打ちとは卑怯だな。剣が泣くぞ」
陽炎は空中からそう言う。どうやら、爆発の瞬間に上へ逃れたみたいだ。
「とっくに泣いている。そこまでしてでも貴様には勝たないといけないんだよ」
そう言いながら斬りかかってきた。陽炎は背中の剣を抜くと迎え撃つ。
「俺も負ける訳にはいかない。”水流・漣”」
陽炎の剣は水を纏い辺りに巻き散らかす。その水は小さな波を無数に形成しながら七星剣へと向かっていった。
『はぁっ!』
掛け声と共に剣が抜かれる。その度に攻撃は切り裂かれ、斬撃が飛んでくる。陽炎はその斬撃を避けるとすぐに体制を整える。
「かーくん!準備できたよ!」
突然下の方からそんな声がした。下を見ると小さいフェルルが居る。陽炎はその声を聞くと不敵な笑みを浮かべた。
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