第79戒 急行、エルフの国へ
しばらく陽炎達はベンチの上で抱き合っていた。フェルルは裸だったが陽炎は裸じゃなかったので横から見ても悪いようには見えなかったはずだ。そんなことをしているうちに日が暮れてきたので中に入り準備の途中をしようとした。
「陽炎様、準備が整いました。出発しますか?」
準備は出来ていた。そう問われた陽炎は少し考えて言った。
「あぁ、今から行く。夜の方が気づかれる心配はない。それに、こっちは古代眼があるからな。暗くても見える」
「分かりました。では、お気をつけて行ってください」
陽炎は頷くと再びベランダに向かった。ベランダに着くとさっきのあのベンチがある。陽炎はそれを横目にベランダの端まで行く。
「ギルシア、作戦通りに頼む。何かあったら呼んでくれ」
「了解しました」
「それと、ディリーとルーシャは心細いかもしれないが少しの間信奉してくれ」
『んっ!』
陽炎は皆の返事を聞くと、フェルルとファルルの手を握った。そして、一気に足に地下を込める。爆発的にその場から飛んで行った陽炎はすぐに見えなくなってしまった。
『行ってらっしゃーい!』
遠くからそんな声が聞こえる。陽炎は振り向くと碧く紋章の浮かんだ右目で見つめた。そして、更にスピードを上げる。
「ちょっと待って!足が、追いつかないよ!」
後ろからフェルルの声が聞こえた。陽炎は急ブレーキをかけて止まった。すると、フェルルとファルルが飛ばされる。
「悪いな」
陽炎は茂みの中にそう言った。すると、その中から2人が出てくる。2人は出てくるなり陽炎頬をふくらませて怒ってポカポカと殴ってきた。
「悪かったって。ほら、機嫌直してくれよ。何でもしてやるからさ」
「じゃあここで子作りしたい」
「は?」
何を言っているのか理解出来なかった。これが俺の知らない異世界ジョークなのだろうか?俺も今度やった方がいいのだろうか?そんなことを考えていると2人は服を脱ぎ始めた。
「おい!何脱いでんだよ!?」
「何も言わないってことはいいってことでしょ。たがらやるの」
「かーくんは力を抜いてて良いよ。私達で気持ちよくさせるから」
2人はそんなことを言って見つめてくる。
「いや、なんで俺が今すぐここでやりたい人みたいになってんの!?俺はテムを追いかけたいんだよ!子作りやりきたわけじゃねぇだろ!」
陽炎はそう言ってフェルルとファルルの服を拾う。そして、2人に返すと着てもらうように言ったが中々着て貰えない。
「わかった。じゃあ、そのまま行こう」
陽炎はそう言うと2人を担ぎ走り出した。服は落としそうなのでキューブで封印して全速力でテムを追いかける。早く走りすぎたせいか、2人がやけに静かだ。見てみると、寝ていた。
「あ、・・・疲れてたのか。なんか悪いな」
陽炎が小さくそう呟くと静かにスピードを上げた。
━━一方その頃エルフの国では・・・
テムは手足に枷をつけられ裸にされて宮殿の中を歩かされている。そして、大きな扉の前に来た。
「さあ!入れ!」
そんなことを大きな声で言われながら押される。中に入ると、凄く豪華な作りになっていて1番奥の方に高い階段がある。その上には誰かが座っている。
「遅かったわね。2分遅刻よ。あなた達は後でお仕置があるわ」
「そ、そんな!?私達は任務をちゃんと・・・」
「口答えは許しませんよ。今日のお仕置は普段の3倍程度に厳しくするわ」
『ヒィッ!』
「返事が無いですわね。さらに3倍にしますわ」
『は・・・はい・・・』
2人のエルフの兵士は小さく返事をすると顔を暗くして後ろに下がった。
「お母様!やりすぎです!あんなの王がすることではありません!」
「お黙りなさい。やってることは貴方のとこの王と変わらないことよ。恐怖で部下を縛ることの何がいけないの?」
「全てです!全て悪いです!魔王様は恐怖で部下を縛ったりしません!」
テムは堂々と言ってのけた。その言葉を聞いてテムの母親は少し顔を強ばらせる。そして、1度ため息のようなものをはくと平然と言った。
「テム、貴方にはこの国の姫となってもらうと思ったけど・・・1度お仕置が必要なようね。そう言えば、昔に言ったわよね。次のお仕置は泣いても許しませんって。あなた達!行ったら伝えなさい!今日のお仕置は全員普段の10倍きついものでやると!」
「そ、そんな!?お願いします!それだけは・・・」
「また口答えしたわね。普段の30倍にするわ」
テムの母親がそう言うと2人の兵士は絶望したように膝から崩れ落ちた。そして、涙を流し、更には恐怖のあまり漏らしてしまった。
「こんなの・・・うぅぅ・・・かーくん・・・」
テムが小さくそう呟いた。すると、後ろから何のかに掴まれた。陽炎かと思い振り向くと、エルフの兵士だった。その兵士はテムと他の2人の兵士を連れ歩き出す。
「ここよ。入りなさい」
その兵士はそんなことを言って押し込んできた。そして、2人の兵士も投げ込まれる。
「ここは・・・どこ?」
「ここは拷問部屋だよ」
突然そんな声が聞こえた。誰かがいる。その誰かはテムに近寄ってくると、微笑んで言った。
「今から君達を痛ぶれるのかぁ!今日は30倍だと言うし、楽しみだなぁ!」
「ヒィッ!」
「そんな怖がらないでよ。痛いだけだからさ。大丈夫、気持ちいい時もあるかもしれないからね」
その誰かはそう言って更に近寄ってくる。それは男だった。エルフではない男、その男はテムの服を破ると他の2人のエルフの兵士の服も破った。
「うふふ、始まりだぁ!」
それから、テムの地獄のような日々が始まった。
━━一方その頃陽炎は・・・
「へぇ〜、じゃあエルフは女の子しか生まれないんだな」
陽炎がそう言うと2人は頷く。
「だから、かーくんは大丈夫なのかなって思って」
「何がだよ?別にそんな良くないことをするわけじゃないんだからいいだろ」
陽炎がそう言うと、2人は満足そうな顔をする。マジでわけわかんなかった。
「ねぇ、今どこにいるの?」
ファルルが聞いてきた。確かにどこにいるかは気になる。現在陽炎達はエルフの国の領地には入っている。王都まであと10分程度のところだ。
「でも、何も見えないよ。あと10分じゃあつかないと思うよ」
「確かにな。・・・いや、違うな。これは魔法だ」
陽炎がそんなことを言ってきた。
「どういうこと?」
「これは幻覚を見せる魔法だ。いつの間にかやられてたな」
陽炎はそう言って小さく笑う。どうするのかと思っていると突然背中の剣に手をかけた。
「こうした方が早い!”霊光・幻惑の修羅”」
そう言って何も無いところを切る。
「え?何した・・・」
「ぎゃああああ!痛い!いだぁい!いだいよぉ!」
突然どこからか悲鳴が上がった。その悲鳴がする方に歩いていくとエルフがいた。
「今のは間接的に俺の魔力をぶつける技だ。直接じゃない分効果は薄いが、こんだけの範囲で魔法を使えば当然自分もその範囲の中にいるはずだろ。見つけるのに使えるんだよ」
そんな使い方があったのか・・・その場の全員がそう思った。
「そんなのあるんなら前から使えばよかったじゃん」
「この技は条件が限定的なんだよ。だから、こういう範囲的な魔法を使うやつに有効なんだ。・・・それで、何者?俺らを足止めするってことは、テムが関係してんのか?」
陽炎がそう聞くと、茂みの中から女が出てきた。
「羽・・・それにその耳・・・エルフか」
「失礼いたしました。私はエルフの国、七星剣の1人、ルーンファールです。以後お見知り置きを」
ルーンはそう言って頭を下げると剣を構えた。
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