第78戒 絶望と希望
「クソッ・・・クソッ、クソッ、クソォォォ!」
陽炎はその場にうずくまった。地面を殴ってなんとか気を収めようとする。しかし、中々気は収まらない。遂には涙が出てきた。
「うぅ・・・テム・・・っ!?」
陽炎はそう呻いて気を失った。
「・・・陽炎くん・・・」
━━目が覚めるとそこはベットの上だった。周りには最近よく見るものがある。どうやらここは別荘の寝室らしい。
「ん・・・」
陽炎は重たい体をなんとか起こし周りを確認した。
「なんでここにいるんだ?なんか悪い夢を見ていたような・・・っ!?」
そこで言葉を止めた。自分の手になにか握りしめてあるのに気づいたからだ。恐る恐るその手の中を開く。
「っ!?」
そこにはテムの指輪があった。
「・・・やっぱり、夢じゃなかったのか・・・」
「ごめんなさい!」
突然声が聞こえた。声がする方を見るとフェルルがいた。フェルルは泣きながら陽炎を見つめている。
「お、おい・・・別に謝るようなことはしてないだろ・・・だから・・・」
「ううん、違うの・・・私が悪いの」
陽炎はなんとなく察した。だから、フェルルの話を静かに聞こうと思った。
「やっぱりお前のせいじゃねぇよ・・・実際止められなかったのは俺だしな」
「・・・そんなことは・・・」
フェルルは顔を曇らせる。自分のせいだと言って自分を戒め追い込んでいる。陽炎は、悪いのは自分だと言ってフェルルを慰める。戒める必要はないと言って追い込ませないようにする。
「それじゃダメ!それじゃあ陽炎さんが自分を追い込んじゃうじゃん!」
フェルルはそう言ってきた。まるで心を読んだかのようにそう言ってきた。
「陽炎さんが私を助けようとしてくれるのは分かるよ!でも、それじゃあ陽炎さんが助けられないじゃない!そんなの嫌だよ!」
フェルルは泣きながらそう言ってきた。大粒の涙で床をびしょびしょにしながら怒って来た。
「・・・フフフ、ハハハハハ!」
突然陽炎は笑いだした。そんな陽炎にびっくりして体をびくんっと震わせる。
「俺としたことが・・・まさかこんなに落ち込むとはな」
「ど、どうしたの?」
フェルルは震える声で聞いてきた。
「どうしたかって?忘れてたんだよ。俺が何者かをな・・・」
陽炎はそんなことを言いながら立ち上がってフェルルに近寄った。フェルルは突然怖くなって後ずさる。それでも陽炎は追いかけてくる。とうとう壁際まで追い込まれたフェルルは震える声で問いかけた。
「ど、どうしたの?何を忘れてたの・・・?」
「フッ、簡単な話だ。俺は魔王・久遠陽炎だ。俺達の幸せのために世界を征服すると決めた男だ」
「そ、それが・・・何なの・・・?」
「これから俺の物になる世界だ。俺がどうしようと勝手だろ」
その答えでなんとなく察した、陽炎のやろうとしたことを。それに気づいてフェルルは顔を明るくする。そして、まるでおちょくるかのような顔で近寄り指でつんつんする。
「なんだ?嫌か?」
その問いに首を振る。そして、テムの変わりと言ったら失礼かもしれないけど、テムのように陽炎に言った。
「かーくんなら出来るよ!」
その言葉で陽炎は元気が出た。そして、いつものように不敵な笑みを浮かべて言った。
「まだ何をするかは言ってないだろ。まぁ、出来ると言うなら早速お前と子供を作るとするかな」
「え!?こ、こ、こ、子供作り!?」
「冗談だ、やるのは今じゃない。・・・フッ、俺はエルフの国との戦争はなるべくしないようにしようと思っていたんだかな。気が変わった。今からエルフの国にテムを取り戻しに行く。そして、エルフの国を・・・ん?」
気がついたらドアが開いていた。そして、ディリー達が部屋の中に入ってきている。皆笑顔でこっちを見ている。・・・そうか、皆知ってるのか・・・
「フフフ・・・宣言する!我が国大魔界帝国は、全身全霊の力を尽くしてエルフの国を・・・潰す!」
そう言って力強く拳を握った。
━━一方その頃テムは・・・
「テム様、どうなされましたか?」
「ん?何でもないよ。先を急ご」
そう言ってテムはスピードをあげる。メルははぐれまいと全力でついて行く。
「あと少しで着きます」
メルがそう言った。あと少し・・・あと少しで、かーくんとはもう2度と会うことは出来なくなる。
「さよなら・・・かーくん・・・」
そう呟いて、暗い闇の中へと入っていった。
━━一方その頃陽炎達は魔王城へと帰ってきていた。
「ギルシア、今すぐα達を呼び出せ。戦争だ」
「了解しました。直ちに戦闘の準備をさせます」
「急げ」
ギルシアは頷くとすぐに準備に取り掛かった。その間陽炎達は作戦の打ち合わせ。たった1日で陽炎達はかなり忙しくなった。
「かーくん!無理しないで!」
フェルルが陽炎を心配して言ってきた。確かに、ついさっき立ち直ったばかりでこれはきつい。今にも泣き出しそうだ。そんな様子の陽炎を見たディリー達が陽炎に抱きつき慰めようと頑張った。
「ありがとう。その気持ちだけで凄く嬉しいよ。早速だけど今日中には行くつもりなんだ。二手に別れたいからフェルルとファルルは俺に着いてきてくれ。ルーシャとディリーはこっちに残って指揮をとってくれ」
『ん!』
「ありがとう。俺は少し席を外すよ」
「じゃあ、私も着いていく」
そう言ってフェルルとファルルは陽炎についてきた。少し歩くと陽炎はベランダに出た。ベランダにはベンチが1つある。陽炎はそこに座ると一息ついた。
「大丈夫?かーくん無理してない?」
「大丈夫さ。それに、無理してでも助けたいからね」
「でも、陽炎さんが体を崩したら意味無いじゃない」
2人はそう言って陽炎に近づく。
「かーくんにご褒美をあげる」
「陽炎さんにご褒美をあげる」
2人はそう言って陽炎を倒し馬乗りする。
「後でお仕置はいくらでも受けるから、今日だけは許して」
そう言って陽炎の服を脱がせ、自分も服を脱ぐ。フェルルのかわいい体があからさまになる。
「かーくん!いーっぱい!触っていいよ!」
フェルルは手を広げて笑顔になる。そして、陽炎に抱きつき胸を押し付ける。
「かーくん!好きだよ!ずーっとずーっと好きだよ!」
ファルルも、そう言って両手を大きく広げた。その姿が、可愛くて、可愛くて、陽炎の1番の思い出となった。そして、いまの陽炎にとって1番の助けとなった。
「・・・好きだ・・・好きだ!俺はお前らのことが大好きだ!」
陽炎が突然そんなことを言い出した。フェルル達はその言葉を聞いて少し顔が赤くなる。陽炎はそんなことは気にせず続ける。
「俺はお前らの全てが好きだ!会った時は敵同士だったかもしれないけど、それでも好きだ!それに、俺はテムも同じくらい好きだ!ディリーもルーシャも好きだ!こんな皆の事が好きとかいうロクデナシだけど、俺の事を嫌いにならないで欲しい!」
陽炎はそう言って抱きつく。すると、そこにディリーとルーシャも来た。そして、陽炎に抱きつく。
「だから、俺はテムを助けたい!助けて皆で幸せに暮らしたい!力を貸してくれ!」
陽炎は言った。皆に聞こえる声ではっきりそう言った。それを聞いて皆は顔を明るくする。そして陽炎に言う。
「初めからそのつもりだよ。それに、嫌いになんてならないよ。ずっと好きだって言ってるじゃん」
そう言って陽炎に向かって微笑んだ。そして、陽炎の顔に自分の顔を近づけてもう一度陽炎を押し倒す。
「かーくん、好きだよ!」
そう言って陽炎にキスをした。フェルルの言葉はその場に響き渡り、フェルルと陽炎の姿が夕日に映し出された。
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