第67戒 ミストルティン第2形態
「・・・緊張感がないですね」
ギルシアは呆れたように言う。
「緊張感があろうがなかろうが何も変わらん」
まぁ、そうだけど・・・そんなことを考えているとふと疑問に思った。
「どうやって生きてるのですか?」
ギルシアは凄くシリアスに聞いてきた。ま、誰でも疑問に思うよな。陽炎はそんなことを思いながら話した。
「忘れてると思うけど、俺は自動回復のスキルを持っている」
陽炎は当然のように言う。そう言えばそうだと思った。
「もう1つ良いですか?これほどの技だと街への被害があるのではないでしょうか」
「街の人なら既に逃げている。屋根の上通ってきただろ。α達に頼んで、俺が特定の行動をとった時に避難しろと伝えてもらっていた」
なるほど、と思う。
「さて、ギルシア、お前も逃げろ」
陽炎はそう言って離れる。
「ダメです。私は魔王様の護衛です」
「いや、そう言うと思ったけど、普通に邪魔だから離れてろって意味だったんだけど・・・」
「すみません!」
陽炎の言葉を聞いてギルシアは全速力で離れた。陽炎はそれを見ると不敵な笑みを浮かべて手を上に掲げた。
「太陽だろうがなんだろうが、封印しちまえば終わりだよな。今度から俺も気をつけねぇとな。”立方体式封印術”」
太陽は一瞬で封印された。あんなに大きかった太陽がこんな小さなキューブの中に入るとは誰も思わないだろう。そう思えるくらい太陽は大きかった。そんな太陽は瞬く間に吸い込まれて行ったり陽炎が太陽を封印した時、ギルシアの方まで魔力の余波が向かってきた。
「うわっ!」
ギルシアは爆風に飛ばされまいとその場に踏みとどまる。少しすると風はおさまった。
「終わったよ。それじゃあ行くか」
陽炎はそう言って向かってきた。だが、ギルシアは中々行く気にならない。陽炎はその様子を見てギルシアに言った。
「突然だけど、俺はお前に2つ言いたいことがある。1つ目は、敬語を使うのか使わないのかどっちかにしろ」
「え?」
陽炎から言われたのは予想もしないことだった。陽炎なら自分の心を読み取ってなにか説明してくれるだろう。そう思い込んでいたからこそ意外なことで少し戸惑ってしまった。
「ま、お前はあれだから、周りに誰もいない時と俺が許可した時だけ敬語を使わないでいいと許してやろう」
「う・・・うん・・・て、あれってなんですか!?あれって!」
「あれはあれだろ。てか、俺の話はまだ終わってないぞ」
陽炎がそう言うと、ギルシアは頬を膨らませ怒るような素振りを見せた。
「2つ目は長いから走りながら話そう」
陽炎はそう言って走り出した。ギルシアはそれに追いつくように遅れて走り出した。少し走ったところで陽炎は話の続きを話し出した。
「2つ目は、俺が弱いということだ」
「え?どういうこと?」
「お前らは俺が普通の時でも強いと思っているだろうが違う。俺は古代眼を使わないとステータスは普通の冒険者と変わらない。さっきも見ただろ」
確かに、と思った。さっきも、いつもならすぐに勝てるのに苦戦していたし、相手の攻撃を食らってしまっていた。
「それで・・・?」
ギルシアは恐る恐る聞いた。
「それだけだよ」
陽炎は普通にそう答えた。どうやら特に言いたかったことは無いらしい。何事もないかのように陽炎は走っていく。
「・・・」
ギルシアは呆れて何も言えなくなってしまった。
「あ、そうだ、お前には立方体式封印術がどんな技なのか教えといてやる」
陽炎は急に深刻な顔で話し始めた。その様子にギルシアも少し気圧されるが気を引き締めて聞くことにした。
━━一方その頃テム達は・・・
「右〜、左〜・・・右が3個来たら次下ね〜」
ηのそう言った声が聞こえる。すると、その声の通りにδが結界を張った。そして、ηが言った通りにロキの生やした木が攻撃をしてくる。
「フフフ、凄いね。小生の技をこんなに防げるなんて・・・初めて見ました」
ロキはそう言いながらも不敵な笑みを浮かべ攻撃を繰り出し続ける。その攻撃は回数を増す度に速く強くなっていく。δ達は平然と防いではいるが防戦一方だ。
「そろそろ限界なんじゃないですか?」
ロキはそう言ってさらに技を出す。そして、ついに2人の体が宙に浮いた。
「残念でした。ミー達にはどこからの攻撃でも当たらないよ」
「知ってますよ。だから、分けようと思いましてね。ふたりが揃わなければ防ぐことも出来ない」
「そんなことが出来るならやってみなよ」
ηがそう言うとロキは杖を振り上げた。そして、地面に突きつけた。すると、いつもの通り木が生えてくる。
「同じことばっかやったって無駄だよ」
「某達に通用はしない」
2人はそう言って構える。ロキはその様子を見て攻撃するのかと思えばなかなかしてこない。
「君達にはいいことを学んだよ。仲間で協力することはいいことなんですね」
『・・・?』
「”これは世界の命・・・これは命の大樹・・・世界の大樹・・・我は世界を束ねる大樹の使徒なり”」
ロキは詠唱をした。その詠唱は誰も聞いたことがなく、ただ恐怖心だけを掻き立てる。その場の全員はそれぞれ結界を張り構える。
「フフフ、無駄ですよ。さて、終わりです。”神器解放・ミストルティン・オーバーワールドエンド”」
そう唱えるとその場の全員が木の根のようなもので体を拘束された。ηとδは結界を張っていたため何とか防ぐことは出来たが、自分達の足元に巨大な魔法陣があることに気がついた。
「まずいっ!」
気づいた時には遅かった。魔法陣からは巨大な木の根が生えだしδの結界をいとも簡単に破壊してしまった。そして、木の根に吹き飛ばされた2人はそれぞれ別のところに飛ばされ離されてしまった。
『しまった!』
2人はすぐに戻ろうとしたが、聖十字連合国の兵士達によって阻まれ戻ることは出来ない。
「君達!ミー達が戻るまで何とか持ちこたえてくれ!」
「某達のことは心配するな!」
「わ、分かったわ!」
ルーシャはそう返事を返しロキと向き合った。ロキは満足そうな顔をして目を血走らせている。
「ハハ・・・ハハハハ・・・アハハハハハハハハ!これで・・・これで君達をいたぶることが出来るよ!やっとだ!」
ロキはそう言って叫ぶ。
「あぁ、気分が高揚する。早く・・・早く君達の苦しんで、悲しんで絶望して泣き叫ぶ顔が見たい」
ロキは顔を赤くして言う。その様子は誰がどう見ようと、ただの変態だった。日本で見かければ、即逮捕のレベルで気持ち悪かった。しかし、実際目の前でそれを見たテム達は恐怖以外の何物でもない。足がすくんでしまい、逃げられない。
「アハハハハ!そろそろ痛みを感じる時間だよ」
ロキは優しく言う。それが更に恐怖心を掻き立てる。
「”変形しろ、ミストルティン”」
そう唱えると、ロキの杖は槍へと変化していく。
「皆、余り抵抗しない方がいいよ。どうせ痛いから」
そう言って笑顔で見てくる。顔を赤く染め上げ疼いている。どうやら今すぐにでもいたぶりたいようだ。テム達は恐怖に縛られその場から動くことが出来ない。足はすくみ、手は震えている。
「さぁ、死なない程度にいたぶらせてもらいます。”激痛槍”」
ロキは槍を振り上げた。槍は薄紫に光り出す。それはまるで、自分の死のようなものに見えた。ロキは1度テム達を見ると、ソルトに向かって槍を投げた。
「ソルト!」
「逃げてソルト!」
「ソルトちゃん!」
その場の全員がソルトの名前を呼ぶ。ソルトは意識はあるし、投げられていることも気づいている。しかし、恐怖で足がすくみ動けない。
「ソルトちゃん!危ない!ハァッ!」
ディリーが間一髪のところでソルトを木で投げ飛ばした。ギリギリのところで槍は外れた。ロキはそれを見ると、目から血が出るほど怒りのオーラを放ち出した。
「ふざけるなよ・・・お前のせいで、聞けなかったじゃないか!お前を先に痛めつけてやるよ!二度と小生に反抗できないような体にしてやるよ!」
ロキはそう言うと手を横に出す。すると、地面から槍が現れる。
「やっぱり、どこからでも出せるのね」
「・・・皆!気を引き締めて行くわよ!」
テムの声がその場に響く。その声に掻き立てられた全員はロキを倒そうと構えた。
「痛めつけてやるよ」
ロキの言葉がその場に響き渡った。
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