第60戒 契約違反の罪
「私達にお仕置き?」
「クスクス」
「やめた方が身のためですよ」
皆それぞれ言ってくる。ギルシアも、やめてと小さくつぶやく。皆勝手だなぁ、そんなことを思いながらリリス達の方に目をやった。
「まーくんと戦うのか・・・なんだか嫌だなぁ」
「でも、殺さないといけませんわ」
「そゆこと、じゃあ死んで」
ギルドで大爆発が起こった。たまたま2回には誰もいなかったためかけが人は出なかった。
「あらあら、女性の服を剥ぎ取るなんて良くないですわよ」
「そうしなきゃ服が丸焦げになるところだったんでね」
「ふふふ、ご冗談を。服じゃなくて体がですわよ」
リリスはそんなことを言って笑うがこれは冗談なんかでは済まされない。もし、今の攻撃をギルシアに貸していたマントで防がなかったらおそらく俺は火傷をしていただろう。それに、ギルシアは消し炭になっていたかもしれない。
「なぜギルシアを殺そうとする?」
「契約だから」
「クスクス」
「ごめんねまーくん。契約違反には罰が下るの」
「だから殺すのか・・・契約・・・ね・・・」
陽炎はギルシアを見た。日本にいた頃や、こっちに来てからのギルシアとは思えないほど弱っている。おそらく、精神的に追い込まれているのだろう。
「主殿、拙者は主殿を殺したくはありませぬ。どうかその者をこちらに渡してはくれぬか?」
リエはそう言ってきた。ギルシアを渡せばこいつらは何もせずに帰ってくれる。そう言って手を出てきた。この手を取れば何事もなく解決するのかもしれない。
「もう・・・良いですよ。私が悪いんです。全部私が勝手にしたことなんで、魔王様は私を見捨ててください・・・」
そう言ってギルシアはベッドから降りた。そして、地面に両膝を着くと額を地面に擦り付けるように頭を下げた。
「どうか・・・どうか、魔王様は殺さないでください!私はどうなっても構いません!ですが魔王様だけは!」
「別にいいわよ。どうせあなたしか殺そうと思ってなかったから」
リリはそう言ってギルシアの頭を踏みつけた。それでもギルシアは安心したような顔をして、陽炎に少し微笑んだ。本当は微笑んでなんかいないかもしれない。でも、陽炎にはそう見えた。そして、それと一緒に・・・ギルシアが泣いているようにも見えた。
「それじゃあ逃げてちょうだい。巻き込むといけませんから」
「・・・そうだな」
そして陽炎はギルシアの近くによった。ギルシアの体に触れると静かに微笑んで不敵な笑みを浮かべた。
「何を・・・っ!?」
「やっぱダメだわ。ギルシアを見捨てることなんてできねぇな」
「まーくん!死にたいの!?」
「なぜ俺がお前らより弱いって思ってんだよ。いつでも殺せると思ったら大間違いだぞ」
「ちょっとぉ、それどういうこと?お姉さんに殺されたいの?」
全員上から目線で言ってくる。本気で殺そうとは思ってないみたいだ。それでも、普通の人が気絶するくらいの殺気を放つ。陽炎はギルシアに目をやると、俯いて泣いている。
「ダメって言ったのに・・・」
「愚痴なら後で聞く。今は俺を信じろ」
「そんなこと言ったって・・・」
「初めてじゃないか?姉弟で共闘するのって」
陽炎のその言葉でハッとした。陽炎が自分のことを自分達のことを姉弟と言った。私の事も、家族のことも嫌いなはずなのに、私のことを姉と認めてくれた。それが凄く嬉しくて涙が溢れてきた。
「姉さん、捕まってろ!」
「う・・・うん!」
「逃がさないよ!”夜弾”」
黒い球体が飛んできた。それは触れるものを黒く染めあげる。なにか当たってはいけない気がする。陽炎はギルシアをお姫様抱っこの容量で持ち、振り返ると全力で壁を蹴り壊し外に逃げた。
「ハハッ!面白くなってきやがったぜ!悪魔の襲来・・・サタンズウェーブだ!」
「ま、魔王様!前!前!」
「え?うわっ!危ねー!」
前を向いたら黒い球体がとんできていた。何とかスレスレで避けることが出来たがやはりその球体はUターンして、追いかけてきている。陽炎は振り返ると手を掲げた。
「”ファイアアロー”」
炎の槍はエニムに向かって飛んで行った。しかし、黒い球体によって阻まれ、更には吸い込まれていってしまった。
「何・・・魔法が吸い込まれた・・・?」
陽炎はその球体を見ていると目の端に何かが写るのが分かった。それはすごい勢いで向かってくる。そして、凄く平べったい。
「まずい・・・」
陽炎は体を仰け反らせて交わした。平べったい何かは陽炎のギリギリを通って抜けていった。
「なるほど、流石ですね。これを躱すなんて、思ってもいませんでした」
いつの間にか目の前にはリリがいた。リリはいつも通りボードのようなものを持っている。
「へぇ、その持ってるやつって武器になるんだ」
「よくお分かりで・・・”直接斬”」
「クソッ!」
陽炎は突然ギルシアを投げた。
「え?」
ギルシアはわけも分からず頭が追いつかない。今の状態もよく分からないまま体が宙に浮く。
「ま、魔王様・・・っ!?」
「残念でしたね。”直接斬”」
何と陽炎はその場で立ち尽くしている。しかし、何故か口元は笑っている。
「フッ、帝王龍の力をもらい五芒星を従えた俺に勝てるとでも?」
「・・・は?」
一瞬固まった。陽炎の口からわけも分からない聞いたこともないような話が出てきた。それで一瞬固まってしまった。そして、陽炎はその隙を見逃さなかった。
「フハハハハ!隙を見せたな!”雷流・稲光”」
「クッ・・・」
雷を帯びた刃はリリを掠めた。しかし、傷をつけることは叶わず、服を少し切り裂く程度でしか無かった。
「ハハ・・・やっぱ逃げるか・・・」
陽炎は落ちてきたギルシアを捕まえると再びお姫様抱っこで逃げ出した。
「ね、ねぇ、逃げる当てはあるの!?そもそも逃げられるの!?」
ギルシアは泣きながらそう言ってきた。
「私怖いよ!死ぬの嫌だよ!死にたくないよ!」
恐怖で錯乱しているのか、それとももう限界だったのか、ギルシアは陽炎に抱きつきそう叫ぶ。
「・・・そんなものはない・・・」
陽炎は小さく呟いた。それを聞いてギルシアの手から少し力が抜けた。
「そんな・・・嫌だよ・・・嫌だよぉ!死にたくないよ!」
ギルシアは大粒の涙を流す。前 前が見えなくなるくらい涙を流す。ここで終わりになる・・・そんな考えで頭がいっぱいになる。しかし、陽炎の話はまだ終わらなかった。
「初めから逃げようなんて思ってないさ。逃げるんじゃない、準備してるんだ。・・・いや、準備した場所に行っていると言った方がいいな」
「え?」
「まぁ、見てろよ。俺は魔王だから悪魔の1人や2人は軽く遊んでやるよ」
陽炎は自信を持って言った。そして、不敵な笑みを浮かべた。
「クスクス・・・」
「っ!?」
突如地面が盛り上がったかと思うと地面から巨大な鋭く尖った岩が無数に生えてきた。それは爆発するかのように大きくなった。
「クスクス!」
「チッ・・・っ!?影が・・・フッ、”天罰”」
雷が落ちた。その光で岩山の影は伸び、大きくなった。
「”影人”そいつらと遊んでな!」
そう言い放つと影の中から人がでてきた。それはエニム達より多い人数出てきて、1人1人足止めを始めた、陽炎はその間に目的の場所まで行くことにした。
━━しばらく走ると何か見えてきた。闘技場だ。これは、陽炎が冒険者達からのお願いで作ったものだ。陽炎は急いでその中に入っていった。そこにはαがいて、陽炎を待っていた。
「魔王様、お待ちしておりました。準備は整っております」
「済まないな。ギルシアを連れて逃げてくれ」
「了解しました。魔王様もお気をつけて」
「あぁ・・・」
後ろで砂埃が舞う。何かが降ってきたみたいだ。
「どうやらお出ましのようだ」
陽炎はαを1度見ると再び前を向いた。αは頷くとその場から逃げた。
「さてと、お仕置き開始だな」
陽炎は小さく呟いた。
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