第59戒 病室の2人
陽炎達がベットで横になって3時間が経った。話を聞いたテム達が慌てて駆けつけた頃には陽炎も気を失うように眠っていた。
「・・・うぅ・・・」
陽炎は静かに体を起こした。周りを見ると隣のベットでギルシアが寝ている。そして、自分のベットの周りに泣きながらこっちを見るテム達がいた。
「あ、おはよ・・・」
「かーくん!」
テムは飛びついてきた。他のみんなも飛びつきたそうに疼いていたがさすがにベットを壊す訳にはいかないと遠慮をした。
「陽炎くん、何があったの?」
「セントクロスとダークインベージョンとカオスアトランティスが襲ってきた。ギルシアは俺を守って気絶した」
「じゃ、じゃあ、あの爆発も・・・」
「俺だ」
皆あまり驚かなかった。まるで予想していたかのようにため息をついた。
「おい、心配はいらないぞ」
「はぁ、なんか慣れちゃってもう出来ないよ」
「それでいい」
陽炎は5人の顔を見ると静かにベットに横になって目を瞑った。
「て、ちょっと待ってよ!まだ寝ないでよ!」
「て、ちょっと待ってよ!詳しく教えてよ!」
2人が言ってきた。
「おい、もうちょっと静か喋れよな。隣で寝てんだぞ」
陽炎は2人にそう言う。2人は恥ずかしそうに口に手を当てた。
「フェルル、ファルル、こっちに来い。教えてやるよ」
そう、その2人というのは、フェルルとファルルだった。2人は陽炎に顔を近づけた。
「いや、そうするなら耳を近づけろよな。てか、体を近づけろ」
『あ、はい・・・』
2人はまた恥ずかしそうに顔を赤くした。そして、椅子をベットに近付け聞く姿勢をとった。
「あの時な、ちょっと調査に行っただけだったんだけどな、なんでかロキがいたんだよ」
「ロキ?」
「あぁ、セントクロスの奴な。で、そいつと戦ってたらダークインベージョンとカオスアトランティスが来てとにかくやばい技を使ってきたんだ。何とか地面に潜って逃げてきたんだよ」
「地面に潜るって、どうやって?」
「土流を使った。あれは剣がなくても使える技ばかりだからな」
2人はなんとなく分かったような気がした。そして、陽炎から離れた。どうやら皆何か気にしてるみたいだ。
「あ、そう言えばだけどさ、フェルルとファルルに言ってなかったな。俺と結婚しようぜ」
しかし、そこまで驚かなかった。
「なんだ、もう知ってたのか」
「うん・・・」
「それなら話が早い。2日後に、式をあげようと思っている」
陽炎の話を聞いて2人は少し俯いた。
「・・・俺のことが嫌いか?」
「ううん。・・・でも、なかなか決心がつかないの。どうしたらいいの?」
「・・・俺がお前らと結婚したいのには3つ理由がある」
陽炎は突然そんなことを話し出した。2人は不思議そうに見つめたが話を聞くことにした。
「・・・1つ目は、お前らが1度俺の事を殺しに来たということだ。お前らはそのせいで恨まれているかもしれない。2つ目は、俺のイメージアップになるということだ。お前らと結婚することで俺が強いから結婚出来るということを自分の国に広める。すると、俺のように強くなろうとするヤツらが出てくる。俺の事が好きな人からすれば、結婚出来るかもしれないと強くなるか、家事など人間性を高められる」
凄い理にかなった理由だった。でも、全然期待していたのとは違った。全て政治的な理由だ。
「そして、この最後が1番重要だ。最後は、俺がお前らのことを好きだからだ」
2人は少し嬉しそうに顔を上げた。やっと自分達が望んでいたことを聞けた。私達のことが好きだから。その言葉は彼女ら2人にとってとても幸せな言葉だった。でも・・・
「それでも、やっぱりまだ決められないよ」
「もう少し、考えさせて」
2人は苦しそうに言ってきた。まだ会って間もない。2人にとっても、まだ俺のことがよくわかっていない。
「良いよ」
陽炎はそう答えた。と、言うより、そう答えるしかなかった。ここで無理やり結婚できるが、ずっと嫌われたままだと苦しい。陽炎は優しい声でそう答えた。
「・・・ただし、条件がある」
『条件?』
「そう、条件として俺の頼み事をひとつ聞いて欲しい」
陽炎がそう言うと、2人は静かにうなづいた。
「ありがとう。で、頼み事ってのは、俺は今からギルシアと二人きりで話がしたい。少し席を話して貰えないかな?」
「え?2人きり?」
なんと、ルーシャが食いついた。予想外だった。てっきりテムが食いつくかと思ったが、ルーシャだった。
「な、何を話すの?」
「俺らのこれからの事だ」
そう言うと、ルーシャはショックを受けたような顔をした。
「そ、そんな・・・さっき、2人にプロポーズしたばかりなのに・・・」
どうやら誤解しているらしい。でも、説明するのもめんどくさいのでそのままにして部屋から追い出した。その際にテムとディリーが笑顔で見つめてきたのでやっぱり後で説明した方がいいと思った。
「・・・はぁ、やっと出ていったよ」
陽炎はそうつぶやくとギルシアのベットの近くに座った。
「なぁ、起きてんだろ」
「・・・・・・うん」
ギルシアは静かに返事をした。そして、体を起こして陽炎に顔を向けた。
「魔王様・・・ごめんなさい。私のせいで怪我を・・・」
「あぁこれ?大丈夫さ。あいつらには黙っててくれよ」
ギルシアは顔を下に向けると目を合わせないように違うところに目をやった。
「そう気に病むなよ。お前だってだいぶやられただろ」
「わ、私は魔王様の護衛です!魔王様が怪我をしないようにするのが私の役目です!ですが、逆に魔王様は私のことを守って怪我をしました。本当は私が守らなければならないのに・・・」
ギルシアは泣きながらそう叫んだ。どうやら護衛である自分が犠牲になって陽炎を守らなければならないのに、逆に守られたことが自分を責める原因になっているみたいだ。そんなギルシアを見て陽炎は自分の腕に目をやった。その腕は焼けただれ真っ赤になっている。
「そんなこといいよ。あの時はそうしなきゃ2人とも殺られてた」
「ですが、私が体をはって守らなければなりませんでした。そうだったら、魔王様が傷つくことはなかった・・・」
「でも、そうしたらお前は生きていなかった」
そう言うと少しギルシアは驚いた顔をした。
「魔王様は優しいです。ただの護衛である私のことを心配するなんて・・・」
ギルシアは泣きながら俯いた。陽炎はそんなギルシアを見て少し目を瞑って考えた。これ以上何か言ってもきっと自分を責める。かと言って何も言わなければギルシアはずっと自分を責める。
「・・・・・・なぁ、ギルシア・・・」
陽炎はなにか言おうとしてやめた。ギルシアは不思議そうに見つめた。
「・・・いや、琉義亜姉さん。泣かないで。俺の大好きなする姉さんで居てよ」
「っ!?そんな・・・私は・・・私はあなたのことが大嫌いなのよ!そんなこと言わないで!」
「もう、嘘つくのはやめてよ。本当の気持ちを教えてよ。俺知ってるんだ。嫌いなんて嘘だよね?」
「本当よ!あなたなんて・・・」
「じゃあ、なんで泣いてるの?」
気がつけば床がびしょびしょになるほど涙を流していた。どれだけ拭いても止まらない。
「ごめんね、俺内緒で1度姉さんの心の中読んだんだ。スキル・テレパシーだよ。そしたら本当のこと知っちゃってさ」
「そんな・・・ダメ・・・ダメなの!私はあなたのことが大嫌いなの!近寄らないで!あっちいってよ!うわぁぁぁん!」
遂にギルシアは泣き出してしまった。
「泣くなよ。なぁ、姉さ・・・」
「ダメ!今は触らないで!」
ギルシアはまるでなにかに怯えるように触れられないようにする。まるで触れたら死ぬかのように。その時、陽炎の頭の中の謎が解けた。なぜギルシアはこんなに俺から嫌われようとするのか、なぜギルシアはあんなに女悪魔達について知っていたのか、なぜ日本にいた時とはこんなにも違ったのか。その全てが解けた。
「あらあら、もう分かっちゃったの?」
「クスクス」
「拙者達のことは秘密のはずでござるがな」
「っ!?も、申し訳ございません!で、ですが、教えたわけでは・・・ふぐぅっ!」
女悪魔はどこからともなく出てきて、ギルシアを吹き飛ばした。
「やっぱりか・・・やっぱりお前らが・・・」
「うふふ、そこまで分かったのねぇ。よく出来ました、ぼくぅ」
気がつけば周りは女悪魔に囲まれている。
「お前らが・・・姉さんをこんなふうにしたのか・・・」
「そうよ。それがなにか?」
「・・・なら・・・・・・・・・お仕置が必要だな」
そう言って不敵な笑みを浮かべた。
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