第58戒 3人の神と1人の魔王
男は頭を下げると不敵に笑った。
「あなた何故ここにいるの?」
ギルシアは聞いた。
「貴方たちに会うためですよ。まぁ、ギルシアさんは必要ないんですけど」
男はそう言って肩を竦めた。
「俺に会って何がしたい?」
「そんなこと聞くんですか?分かりきったことですのに・・・良いでしょう。小生の目的を教えてあげましょう」
「御託はいい。早く言え」
陽炎は少し殺気を強くした。この男からは何か嫌な感じがする。これまで感じたこともない強い殺気。それを完全にもれないように消し去る力。
「え〜早くですか?どうしようかな〜」
「お前ふざけてんのか?殺気を振りまきやがって。俺の事殺しに来たんだろ?」
「フフフ、ご名答」
男はまた不敵に笑った。その様子を見てギルシアが前に出ようとした。だが、それを陽炎は止めた。
「やめとけ、こいつは俺が何とかする。お前は逃げろ」
「っ!?な、何故そんなことを・・・」
「お前じゃこいつに勝てない。だから・・・」
ギルシアは陽炎の言葉を遮り前に出た。
「魔王様、私は魔王様の護衛役です。ここで逃げてしまえば私は護衛失格です。ですので戦わせてください!」
ギルシアは震える足で前に出て、震える手で陽炎が前に出なように突き出し、震える声で言った。
「・・・はぁ、良いよ。でも、後ろからサポートくらいはさせてもらうよ」
「ありがとうございます」
「それで、話はまとまりましたか?」
男は聞いてきた。
「まぁな」
陽炎は答えた。それを見た男は礼をするように頭を下げた。
「では、戦う前に名前を教えておきましょう。冥土の土産というものにでも使ってください。小生はロキ、お見知り置きを・・・」
(ロキ・・・だと・・・名前だけ一致したのか?いや、あっちの世界とは関係は無いはず。だが、この男から来る嫌な感じは・・・)
「ギルシア、気をつけろ」
そう言うとギルシアは頷いた。その時、大きな風が吹いた。葉っぱが舞う。そして、最後の1個が落ちてきた。それは静かに地面に落ちた。そしてそれが、戦いが始まる合図となった。
(先手必勝!”次元斬”)
その一撃でロキの体は真っ二つになった。・・・しかし、その時驚きのことが起こった。なんと真っ二つになったはずのロキの体はまるで時間が戻ったかのようにくっついてしまった。
「何っ!?」
そして、何も無かったかのように笑って距離を詰めてきた。
「うぐぅっ!」
一瞬のうちに距離を詰められたギルシアは腹、右腕、左足を殴られかなり遠くに飛んで行った。
「ふぐぅっ!ゲホッ!ゲホッ!・・・あぅ・・・」
「あれ?手加減したはずなのになぁ?ま、いいや。君を殺そうと思ったけどいい声出すから僕のものにするね」
「え!?」
ロキは平然とそう言う。当然のようにそう言う。そのロキを見て、ロキが言ったことを聞いてギルシアの顔はどんどん青ざめていく。
「・・・や・・・だ・・・」
ギルシアは目に涙を浮かべながら言う。
「うんうん、いい声出すね。君と子供を作ったら、どんなかわいい女の子が出来るのだろう?」
「ひっ!」
ロキはそんなことを言って近寄ってくる。そして、目の前まで来た。そして、ギルシアに触れ撫で回し始めた。
「ひっ・・・やだっ・・・やめて・・・そこは・・・ヒグゥッ!やだっ!やめてっ!ひぎぃっ!」
ギルシアは悲鳴をあげる。そんなギルシアを見てロキはさらに笑顔になった。そして、体中を触り、撫でくりまわし舐めまわした。今のロキの顔は不敵に笑うと言うより、気持ち悪いだけにしか思えなかった。
「フフフ、アハハハハ!良いね!君のその顔!小生を怖がって絶望する顔だ!それにその声!聞いてて気持ちがいいよ!興奮が止まらないよ!アハハハハ・・・っ!?」
その時、突如ロキが顔から横に飛んで行った。やったのは、そう、陽炎だ。古代眼を使ってないからかなり時間がかかったが追いかけてきてロキの顔を蹴り飛ばしたのだ。
「危なかったな。間に合ってよかった」
「陽炎ぉ!うわぁぁぁん!怖かったよぉ!」
「おぉ、よしよし。怖かったな。もう大丈夫だよ〜」
陽炎はギルシアの頭を撫でた。ギルシアは泣きながら陽炎の胸に顔を埋める。
「タイミングが悪いですね。あと少しで楽しめたって言うのに」
「俺はタイミングバッチリだったよ」
2人は見つめ合う。長い間見つめ合う。
「フッ、これだけ見つめあってもお互いの実力は測れないか。ここは退かせてもらう。”ブリザードウォール”」
氷の壁を作った。作らなくても逃げられただろうが念の為だ。そして、足に力を込めジャンプを・・・することは出来なかった。
「っ!?何!?」
横から黒い何かが飛んできた。それは勢いよく陽炎達にぶつかると陽炎達を遠くに吹っ飛ばしてしまった。
ドカッ!ドゴンッ!ガスッ!スザザザー・・・
かなり遠くに飛ばされた陽炎は少しバウンドしたがなんとか受身をとることが出来た。しかし、それでもやはりダメージはある。咄嗟にギルシアを抱いたからだろうか、ギルシアは怪我がない。
「無事か?」
「は、はい・・・」
ギルシアは頷くと陽炎から降りた。
「あぁ・・・どうやら考えていたのは小生だけではなかったようですね」
ロキはそう言いながら歩いて来た。そして、その少し離れた場所から黒いオーラをまとった男が出てきた。
「そうみたいだな。ロキ」
「フフフ、そういうことですよオーディン・・・それと、デュスノミアー」
すると、後ろから謎の機械で体をおおった女がでてきた。
「チッ、最悪な状況だ」
「これは・・・」
陽炎がギルシアの体を守れるようにマントをかけた。すると、男が笑いだし話を始めた。
「アハハハハ!大丈夫だぜ、そんなのじゃ守りきれねぇからな。自己紹介してやるよ。俺はオーディン、黒曜王国・・・ダークインベージョンだ」
「私もしておくとするわ。私はデュスノミアー、古代皇国・・・カオスアトランティスよ」
2人はそう言った。この名前も日本にいる時神話で聞いた。
「あーそんなに逃げようとするなよ。どうせ逃がさないから」
「さて、全員揃ったところで終わらせましょうか」
「そうね」
3人はそれぞれ技を出そうと構える。
「”冥槍グングニル”」
「”破壊波動”」
「フフフ、”災いの痛み”」
薄い紫のオーラを纏った槍、空間を壊す波動、よく分からないが当たったら不味そうな何かが向かってきている。これはまずいと2人は悟った。しかし、避けることは出来なさそうだ。
「チッ、”領域””多重防御結界”」
複数の結界が2人をおおった。そして、3つの攻撃はぶつかった。
バリバリバリィィン!
結界が壊れる音がする。どうやらこれでは防げないらしい。かと言って新しいものを作る暇は無い。
「これは、まずいね」
「転移魔法は?」
「無理だな。何故か使えない。恐らく、妨害されているのだろう」
「そんな・・・」
ギルシアは絶望した。この攻撃は耐えきれないし防げない。そんな現実を突きつけられて。だが、陽炎は違った。陽炎は不敵な笑みを浮かべると手を挙げた。拳をぎゅっと握り・・・地面を破壊した。
『っ!?』
「ハハッ!じゃあな!地面の中まで対策しておくべきだったな!”土流・砕岩翔・拳”」
「何!?」
陽炎はもう一度地面を殴り穴を開けた。砂埃が舞う。そして、3つの技が衝突した。3つの技はそれぞれ力を膨張させ大爆発を起こした。
『っ!?』
「っ!?」
「何!?何が起こってるの・・・?」
街中にざわめきが広がった。爆発は街中から見えるほどに大きくなっていた。
「かーくん・・・」
━━ギルド前・・・
「クッ・・・う・・・」
地面が揺れだした。地面のレンガが崩れる。その時、突然地面から手が出てきた。そして、その手はどんどん伸びていき人が出てきた。ギルドにいた冒険者は慌てて出てくると様子を確認した。すると、それを見た冒険者達は驚いた。
「・・・はぁ・・・はぁ、危なかった・・・」
『ま、魔王様!?』
なんと、地面の中からギルシアを抱いた陽炎が出てきたのだ。ギルシアは気絶をしている。
「フゥ・・・何とかなったな」
陽炎は地面から出るなりその場に座り込んだ。
「ど、どうなされたのですか?」
「いや、ちょっとな。ギルドの中で休ませてくれないか」
「は、はい!分かりました!」
陽炎達は冒険者達とともにギルドに向かった。
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