第61戒 世界の改変
砂埃の中から女の子達が出てくる。陽炎はその子達を見て左目の仮面を外しコンタクトを外した。・・・ちなみにだが、仮面は寝ている時からつけている。冒険者には外さないように言っておいたからな。
「うふふ、もう逃げるの辞めちゃったのかなぁ?」
「主殿しかし見当たらぬがどこに行ったでござるか?」
いつの間にか囲まれていた。かなり怒っているみたいだ。
「フッ、別に逃げてたわけじゃない。それと、契約についてだが、無効にさせてもらおうかな」
「クスクス」
「何言ってるの?いくらまーくんでもそこまでは出来ないよ」
「やっぱりか。そう言うルールなんだもんな」
陽炎は少し暗い顔で言った。そして、右目の古代眼を発動した。
「そうよ。ルールは守らなくちゃ。それと、契約を無効にしたいならやめた方がいいわよ」
「何故だ?」
「だって、契約したのが私達なんだから。まーくんは私達に勝てると思ってるの?」
エニムはそう言う。他の皆も笑っている。・・・はぁ、テム達に心配かけたくないんだけどなぁ・・・そんなことを考えて前を向いた。
「ま、やるしかないよな。きっと、テム達も許してくれるさ」
そう小さく呟いて地面に手を着いた。
「何をする気なの?無駄なことはやめた方がいいわよ」
「フッ、無駄かどうかはやってみてから言ってよね”透糸閃”」
糸を引くと無数の糸がとこからか現れてきた。それはその場にいたエニム達の腕や体を切り裂いた。そして、陽炎がその隙を見逃さないことは既に知っている。
「”雷流・霹靂神の閃電”」
一瞬のうちに6人は全員両断された。普通の人ならここで死ぬのだが、やはり死なない。それどころかすぐにくっついている。
「やってくれたわね・・・”ネガティブショックウェーブ”!」
青白い光を帯びた何かは波のように陽炎に向かってきた。決闘で陽炎がフェルルとファルルに使った技だ、あの時より威力は大きい。陽炎は上に飛ぶと糸の上に立って回避した。
「何よ!そんなところから見下して!」
「クスクス」
「あらあら、死にたいのですか?」
「死ぬ気は毛頭ない。それと・・・」
陽炎の姿が消えた。気がつけば降りてきている。今すぐに攻撃しようとしたところで陽炎は小さく呟いた。
「俺の勝ちだ」
そう言うと、その場の6人の首が落ちた。少しの間、6人は状況が飲み込めずに動けなくなった。その隙に陽炎は本命をやる。
「”世界の理を変えろ。呪戒古代眼”」
陽炎がそう言うと、目の前にキーボードと、画面、が現れた。
「フッ、これを見るのも久しぶりだな。この世界に来た時以来だしな・・・オープン」
陽炎はステータス表示を開いた。凄いスピードで魔力が減っている。陽炎はそれを確認すると、とてつもなく速いスピードでタイピングを始めた。
(もうこれしかない!アイツらをいくら攻撃しても何も変わらない。それなら、契約そのものを変えてしまえばいい。アイツらは契約はルールだと言った。なら変更は可能なはずだ・・・)
「グハッ!」
「やめなしよぉ!そういうのはお姉さんが許さないわよぉ!」
「もう首がくっついたのか・・・!」
陽炎は腹に穴が空いた。サキュの攻撃で消されたのだ。3つくらい穴が空いたがそれでも続ける。そして、遠くから攻撃が来る。リエだ。陽炎は1度魔力を確認した。このままいけば5分はもつだろう。だが、何もしないと命がもたない。
「30秒だけでも残ってれば良いんだよな」
そうつぶやくと陽炎は紐を出した。
「その紐で何をしようと言うのでござるか?無駄でござる!」
「ハハッ、やって見なきゃわかんねぇよ。”呪戒軟糸線”」
一気に魔力が減るのを感じた。・・・あと4分・・・
「”呪戒創造”」
10個の剣を作り出した。さらに魔力が減る。・・・あと3分半・・・
「”呪戒インパルス”」
剣は衝撃とともに飛んで行った。普通に考えれば当たらない。だが、その剣は張り巡らされた糸で様々な方向に飛んでいきはじめた。ランダムに飛び交う剣は避けることは出来ず、だんだんエニム達にかすりはじめた。陽炎はそのすきにさらに改変を続ける。・・・あと2分半・・・
「小賢しいですわ!”夜腐領域”」
剣は一瞬にして塵となって消えた。再び陽炎に目がいく。その頃にはもうほとんど改変出来ていた。おそらく本当にあと30秒で出来る。だが、魔力はまだ2分程度持つくらいには残っている。何も起こらなければ大丈夫だ。
「まぁ、何も起こらないわけないよな」
「残念だったわね!もう終わりよ!」
もう目の前までマナは来ていた。魔力はもうない。30秒以上持つくらい残ってないといけない。賭けになるがやるしかない。せめてもの思いで魔法を発動した。
「・・・・・・・・・”残剣斬”」
剣が突然現れた。それは、それぞれ6人に突き刺さるように現れた。突然現れた剣が刺さったマナは少し後退した。陽炎は起き上がる前にマナを蹴飛ばすと、すぐさま魔力を確認した。ギリギリ30秒持つくらいは残っている。
「ラストスパート!」
さらに早く指を動かす。契約の内容がどんどん改変されていく。しかし、時間は刻々と迫っている。残り10秒・・・9・・・8・・・7・・・6・・・5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・
「俺の勝ちだ!」
陽炎は力強く言った。そして、その時から、ギルシアの契約は改変され、世界は変わってしまった。
━━少しの間その場の全員は固まってしまった。世界が変わってしまった。それを知っているのは、陽炎とエニム達、あと、ギルシア、テム達、α達くらいだろう。陽炎は自分の魔力を再び確認した。実際のところ、ここで魔力が0だった場合、改変は失敗している。恐る恐る目をやった。
「っ!?」
するとそこには1とだけ書いてあった。
「ハハッ・・・ギリギリじゃねぇか・・・」
陽炎は安心したが、その上の体力が残り少なくなっているのに気がついた。しかし、目立った外傷は腹に穴が空いたくらいでそこまででは無い。どうやら、呪戒禁古代眼を使うと命を削るらしい。
「こっちもギリギリか・・・」
「うふふ・・・うふふふふふふ!あらあら、本当にやってしまわれるなんて」
突如リリスがそんなことを言って笑いだした。
「私達の完敗です。こんなこと初めてですわ」
「私もです」
「クスクス」
「私も〜」
「拙者もでござる」
「お姉さんもよ」
次々に言ってくる。だが、陽炎にはもう人の話を聞く体力も残っていない。霞む目で無理やり見つめ、消えていく意識を無理やり留めて立っている。だが、エニム達はそんなことは関係なしに話を進めていく。そして陽炎は、エニム達が話しているうちにどんどん顔が赤くなっているのに気がついた。
「あれ?なんか嫌な予感が・・・」
「それでなんですけども、わたくし達どうやら魔王様に惚れてしまったようですわ」
・・・あ、やっぱり・・・
そこで陽炎の意識は途絶えた。体中の力が抜け倒れる陽炎の体は地面に倒れることなくエニム達6人に支えられた。
「あらあら、こんなになるまで頑張っておられたのですね」
「お姉さん達が可愛がってあげないと」
「そんなことしたらまーくん怒るよ」
「クスクス」
「それもそうでござるな」
「今は休ませてあげましょう」
そう言って6人は静かに陽炎を下ろした。
「これが魔王様の力だ」
そう言って出てきたのはαだった。αはギルシアをおんぶして歩いてきた。どうやらギルシアも疲れて寝ているようだ。
「俺が見込んだだけはあるだろ」
αはそう言う。それに対して皆は何も言わず笑っている。
「やはり、魔王様はこの世界を変える力を持っている。俺は、これからも忠誠を誓う。お前らはどうする?」
「私達ですか?私達も忠誠を誓いますよ」
「やっぱり戦ったかいはあったよ。だって、私達の攻撃に耐えられる人なんて、まーくん以外にいないもんね」
「そうか、それならいい。だが、裏切ったりなどしたら・・・」
「大丈夫よ」
そう言うとαは静かに笑った。そして、陽炎を抱き抱えるとその場から飛び去った。
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