第56戒 闇と真実
次の日・・・陽炎は森の中で目が覚めた。
「はぁ・・・当分家に帰れないな・・・」
そんなことを呟いた時、どこからか声が聞こえた。すると、魔力が陽炎の周りに集まりだ6個に別れた。そこに、悪意のある魂が宿り6体の女悪魔が降臨した。と、言っても悪意はほとんどない。
「あらあら、バカな人ですわね」
「もうちょっと上手くいく方法はあったんじゃないかな」
「クスクス」
それぞれ陽炎に言ってくる。
「まさか、出てこれるとは思ってなかったよ」
「悪意がなければ召喚されずとも出てこれます」
「クスクス」
そういうことらしい。皆出てきたということは悪意はないみたいだ。
「てか、そもそも何あれ?なんで私らのことをあんなふうに教えたのよ!?あれじゃあ私らが負けたみたいじゃない!」
「いや、負けてんだろ」
「ムッ、違いますよ!私達はは負けたのではありません。主様に惚れたのですぞ」
いや、どっちも一緒だろ!と、叫びたい気持ちを抑えて微笑んだ。
「まぁ、なんでもいいけどさぁ、お前ら個性強すぎなんだよ。あと名前も長すぎ」
「いや、わっちは短いよ」
陽炎は何も言わずに睨んだ。
「じゃあ名前決めてよ」
「いいよ。右から、リリス、リリ、マナ、エニム、リエ、サキュな」
『早っ!?』
なんの迷いもなく陽炎は名前をつけた。まぁ、つけたと言ってもちょっと端折っただけなんだがな。
「てか、まーくん私達の名前が安直って言ってたよね!?どういうこと!?」
「いや、だってお前らの名前って俺のいた世界にいた悪魔と同じ名前なんだよ」
「日本と?」
「そうそう、日本と・・・っ!?なぜ日本を知っている!?」
「フンッ、知ってて当たり前なのよ」
「何せ、私達がこの世界に呼び出す日本人を選別してますから。ま、ギリシャ神話とかの女悪魔と言われるこさ存在は大抵私達ですね」
「そうだったのかよ・・・てか、まーくんってなんだよ?」
「魔王のまーくんだよ」
人には名前をつけるのが早いとか言っておきながら自分はしれっと名前をつけるんだな。人のこと言えるのか。って思った。
「そもそも今日はなんで出てきたんだ?」
「出てきたかったからに決まってるでしょ」
大事な用事があったのかと思ったが違った。
「そんなことでいちいち出てくるなよ」
「あらあら、なんですか?それではわたくし達が迷惑みたいではありませんの?」
空気がピリついた。これは嫌な予感がする。なにか強大な力が迫っている時と同じ感覚だ。そして、リリスが手を挙げた。すると、リリスの上空に闇の雷をまとった黒い球体が作られた。
「っ!?”拘束””立方体式封印術”」
危なかった。少し遅れていれば確実に周りが消し飛んでいた。それどころか、城は確実に無くなっていた。
「あらあら、胸が苦しいですわ。体中締め付けすぎではありませんこと?」
「これくらいしないと逃げるだろ。それともあれか?これくらいでもう、死にそうなのか?」
「いえ、気持ちいいだけですわ。しかし、魔王様は甘いですわ」
リリスは拘束されながらも話を続ける。体は完全に拘束されているので動けることは無い。そのため、優位性は陽炎にあるはずだ。
「魔王様の甘さが、大切な人を死なせるのですわよ」
突如そんなことを言い放った。そして、拘束を解き手を城に向けた。これはまずい。確実に何か悪いことが起こる。そんな気持ちにしかならなかった。そして、気づいた時にはリリスの首筋に剣の刃を当てていた。
「いい加減にしろよ。俺は、俺の特別な存在に手を出すようなやつは許さねぇんだ。あいつらに手を出したら死んでもらうよ」
腕を切り落とされ首筋に剣を突きつけられたリリスはニコッと笑うと手を下ろした。
「どうやら私の思い違いだったようですわ。魔王様、その甘さは持っておくべきですわね」
「さっきと言ってること違ぇだろ」
陽炎は呆れかえりながらも手を離した。と、その時ギルシアから通信魔法の通信がきた。
「魔王様、街の外に正体不明の魔物が現れました」
「何?それで、どうした?」
「現在結界でおおっています」
「わかった。すぐ行こう”ゲート”」
陽炎は返事をすると転移魔法の空間を作り出した。
「クスクス」
「ちょっとお待ちくださいまし、セントクロスに気をつけることですわ」
突然そんなことを言い出した。陽炎は少し驚いたがすぐに理解して頷いた。そして、空間の中に入った。
━━場所は変わって街の外壁の上・・・
「それで、その魔物ってのはどれだ?」
突如後ろから声が聞こえた。
「魔王様、お忙しいところ来て頂きありがたく存じます」
「いや、いいさ。それで、あれか?」
「はい。ζの調べによると双頭龍と言うらしいです」
「なるほどな・・・見ない魔物だ」
「はい。あの魔物は北の方に住んでいる魔物です」
「北か・・・エンブレイズ王国か?」
そう聞くとギルシアは、はい、と返事をして話を続けた。
「ζの調査によると、右から炎、左から氷を吐き出すそうで・・・」
「だとしたら、融合はもうしてるってことか」
ギルシアは静かに頷いた。
「・・・はぁ、つくづく思うよ。最近人とばかり戦ってたけど、この世界には魔物がいたんだよな」
そういうと、ギルシアは少し困った顔をした。戦う。戦う。戦う・・・。ギルシアの脳にその言葉だけが残った。自分が呼んでしまったから、親のせいとは言っても呼んだのは自分だ。それに、あの時、日本にいた時、陽炎が出ていくのを止めることが出来なかった。陽炎は気づいてないけど・・・私も陽炎の、弟のことが・・・
「大丈夫か?どこか怪我でもしたか?」
「っ!?あ、いえ、なんでもありません」
「それならいいが・・・そうだ、俺の目と悪魔についてはどうなったんだ?」
「・・・それなのですが・・・ζが調べてくれました・・・。どうやら、その左目に憑いてるみたいです」
「何?」
「それで、その、彼女らが言っていた事は本当です。私も、この世界に来る時に会いました」
ギルシアは少し怖がりながら言ってくる。陽炎はその恐怖を軽減させてやろうと肩に手をかけ顔を近づけた。
「っ!?え、えと、その、だ、ダメでしゅ・・・っ!?・・・ゴホンッ、その、彼女らは魔王様が左目を手に入れた時に憑依したようです。そのため、左目だけは他と違う魔力回路が流れています」
ギルシアは驚きのことを言う。そして、さらに話を続ける。
「元を辿ればですけど、どうやら魔王様がこの世界に来たこと自体がイレギュラーだったようです。そして、魔王様はダンジョンの魔物を食べました。そのため、古代眼を手に入れました。それも、この世界ではイレギュラーなようです」
突然ギルシアはよく分からないことを言ってきた。何が関係あるのか、そう思っていたが静かに聞いた。
「そして、魔王様は魔王へとなられました。その力で古代眼は呪戒古代眼へと進化しました。それこそが最大の原因です。それは世界の理を変える力。それを危険視した彼女らは魔王様に憑依することにしたのです」
とても、本当のこととは思えない話だった。なぜ、ここまで知ってるのだろうか?そう思えるほどに。だが、ζはそういうことは俺よりも上だ。なら信じてもいいだろう。
「あの、魔王様、少し席を外します。あのドラゴンを討伐します。よろしいでしょうか?」
「そうだね・・・街の危険に繋がるなら討伐しておこう」
「では・・・」
「ちょっと待て、セントクロスに気をつけろ」
そういうと、ギルシアは頷き飛び降りた。そして、ドラゴンの悲鳴が上がったかと思うとギルシアが帰ってきた。
「速っ」
陽炎は小さく呟いた。
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