第55戒 悪魔との契約
━━2日前・・・
「傷は治りそうか?」
「無理だよ・・・かげくんは知らないだろうけど、この世界の治癒魔法は物理的な傷しか治せないんだよ」
「そうだったのか・・・」
「ごめんね」
「お前が謝る必要はないよ。俺もごめん」
「ううん、それを言うんだったらかげくんも謝らなくていいよ。それに、かげくんは大丈夫なの?」
やはり聞いてきた。流石にあの技は良くなかった。力に代償がいるとは言っているが、悪魔は・・・女悪魔はまずかった。俺が魔王じゃなければ腕の1つでも無くなっていた。
「・・・うん・・・まぁな・・・っ!?」
バチィィン!
その時、突然悲痛な音がなった。それと同時に陽炎の体が後ろに飛ばされた。頬に手を当てている。そして、目の前には泣きながら手を真っ赤にしたテムの姿があった。
「かーくんのバカァ!なんでそうやって自分を大事にしないの!?私達のことを大事にする前に自分のことを大事にしてよ!うわぁぁぁぁぁん!うわぁぁぁぁぁん!」
「っ!?・・・これはまずいな」
「ちょっ、陽炎くん?どうしたの?」
「・・・現れろ。”エイシェト・ゼヌニム”」
突然陽炎が青白い光を体から発し、女悪魔を呼び出した。
「ダメッ!かげくん!それ以上は・・・」
「やらないといけない事が出来た。じゃあな皆。行け”エイシェト・ゼヌニム”」
そういうと、女悪魔は陽炎を包み込み行ってしまった。
「かーくん・・・なんで・・・?」
テムの声が部屋に小さく響いた。
それから3時間・・・
陽炎は、帰ってきた。そして、テムが泣いた。ディリーが泣いた。ルーシャが泣いた。陽炎は笑うことが出来なかった。自分が悪いとわかっているから。なんでこんなことになったのか・・・元はと言えば、この目が悪い。あの時の夢、暗い夜道で歩いていた時の夢。その端に見えた。謎の黒い集団が・・・
「ごめんね。本当にごめんね。多分俺、これからも無茶するかもしれないからお前らが俺を止めてくれないかな」
「うん。絶対止めるよ・・・」
テムは泣きながら言う。ディリーとルーシャは泣いて声も出ない。そして、もう一度陽炎の顔を見た。左目から青白い光を放ち、体中傷だらけとなった陽炎を。
「それで、なんで急にいなくなったの?」
「あのままだったら皆が悪魔に殺されてたから」
「じゃあ、1人になって勝てたの?」
「あぁ、勝ったさ。だからこうしていられるんだ」
陽炎は平然とした顔でそう言う。だけど、どことなく疲れている。
「いつから知ってたの?自分の体の中に悪魔がいること」
「知ったのはつい最近だ。夢の中で目の端に映りこんだ。だから、試しにやってみたんだ。そしたらこうなった」
「こうなったって・・・」
3人は呆れて何も言えなくなった。確かに、契約をしたが陽炎が優位な状態で契約することが出来た。だが、契約の内容が問題なのである。
「・・・あ〜もう!そんな顔するなよな!話しずらいだろ!」
「だって・・・」
「だってもクソもねぇ!俺を心配してくれるのはありがたいがな、もうちょっと俺を信じろ!信じられないかもだけど、信じろ!いいな!」
そう言って顔を近づけた。それで照れたのか、3人は顔を赤くした。
「それでな、契約のことだけどな・・・単刀直入に言おう。俺は呪われている」
『え!?』
「ほら!すぐその顔をする!次その顔したらご飯は野菜だらけにするぞ!話を戻すがな、俺の魔法は全て呪われた。キューブ以外は全て呪われている」
「じゃ、じゃあ、魔法は使えないの?」
「いいや、使える。ただ、呪われていて少し強くなっただけだ。ただ、決闘などでは使えない」
突然のカミングアウトで現場は騒然となった。だが、ここで1つ疑問が生まれる。
「なんで勝てたの?悪魔は強いよ」
「そんなの簡単だろ。俺が魔王だからだ」
そして、それから説明は続いた。魔王の力による闇の力、陽炎自身の殺気、右目と左目の力、全てが悪魔にとって最大の障壁となった。だから勝てた。
「いや〜本当に凄かったな。これで気兼ねなく呼び出せ・・・」
バチィィン!
またもや悲痛な音が響いた。やはり同じように陽炎は飛ばされる。しかし、今回はテムではなかった。
「かげくんのバカ!なんで、そうやって自分を傷つけるの!?私達心配で胸が張り裂けそうだったよ!」
「・・・ごめ・・・」
「ゴメンじゃないよ!陽炎くんは知らないと思うけどね、私達いっつも心配なの!だから、あんな顔するの!私達の気持ちも理解してよ!」
ディリーとルーシャ、それぞれに悩みを持っていた。陽炎が、無茶をすればするほど心配になる。テムはいつも言っていた。俺のせいだ。あんな顔させたのは俺のせいだったんだ。
「・・・本当にごめん。俺知らなかったんだ。お前らが俺の事どう見てるかなんて。お前らを守ればいいと思ってた。そしたら幸せになれるとそう思ってた。だけど違ったんだ。お前らを幸せにするなは心配させないようにしなきゃダメだったんだ。心配しないためにも無茶はしちゃダメだったんだ」
「そういうこと。やっと気づいたの?」
「あぁ、やっとだ」
陽炎は1度目を閉じ深呼吸をした。そして、いつも通り不敵な笑みを浮かべた。
━━それから3時間後・・・
「思ったんだけど、かーくんのその目ってずっと光ってるの?」
「止め方がわかんねぇんだよな」
「へぇ〜、じゃあこれでもつけてたら」
そう言って出してきたのは眼帯だった。
「いや、それは無いだろ。眼帯に仮面ってのもおかしいしな〜・・・」
「え〜、じゃあこれ」
そう言って出してきたのは色違いの眼帯だった。
ピキッ!
陽炎の額に青筋が出来る音がなった。
「あのなぁ〜・・・色違いならいいってわけじゃねぇんだよ」
「え〜、それならこれは?」
そう言って出してきたのは違う種類の眼帯だった。
ピキピキッ!
さらに青筋が出来た。
「・・・」
「あ、あれ?かーくん?」
「・・・お尻を出しなさい。痛いのはすぐ慣れるから」
静かにそう言うと、テムは舌を出して自分の頭を少しこずいて、乙女な顔をした。いわゆるてへぺろってやつだ。
「てへぺろじゃねぇよ。そもそもなんで知ってんだよ」
「ごめ〜ん。冗談だって〜。本当はこっち」
そう言って出してきたのは黒い箱だった。
「これは?」
「きっとこうなるだろうと思ってさ、封印の紋章が刻んであるコンタクト・・・?レンズ?だよ。えっと・・・ギルシアが、作った方がいいって言ってたんだ」
嬉しさのあまり声も出なくなった。初めてだった。こっちからあげるものはあっても貰うことはなかった。そのためか、普通に貰うより数百倍も嬉しい。
「もぅ、何ニヤニヤしてるのよ」
「いや、嬉しいなって思ってな。開けていいか?」
「いいよ♡」
中にはレンズが入っているであろうと思われる場所があった。そこには蓋が着いており開けると中にコンタクトレンズが入っていた。外から見れば普通に見える。陽炎は手に取ってつけてみた。しっくりくる。
「それね、長い間つけていても乾かないようになってるんだって」
そうだったのか。そこまで気にしてくれたのか。
「そう言えば、誰が魔法をかけたんだ?」
「νだよ。あの子、前々から陽炎くんになにかしてあげたかったんだって」
「そうだったのか」
「かげくんは知らないだろうけど、皆かげくんに全力で奉仕したいって思ってるのよ」
「本当か?てっきり、嫌われてると思ってたよ」
「うふふ♪もっと自信を持ちなよ♡」
「それもそうだな」
陽炎は不敵な笑みを浮かべて言った。
『ん♡ん♡!』
テムがなにか求めている。ディリーもルーシャも同じく求めている。陽炎はテムに向き合った。そして、自分とテムの唇を合わせた。そして、ディリーとルーシャも同様に唇を合わせた。
「んもう♡舌まで入れたら気持ち良すぎるよぉ♡」
3人の顔が赤くなった。
「大きな力には代償がいる」
「え?急にどうしたの?」
突然陽炎が深刻な顔をして唱え始めた。
「俺は悪魔の力を手に入れ、平穏と普通をなくした。でも、俺はもっと大きなものを手に入れたんだな」
それを聞いて3人はクスクスと笑う。まるで、陽炎が何を言うか知っているかのように。
「これまでの人生を代償に俺は今この生活を、お前らと出会って結婚してなさ楽しい生活を送ることを手に入れた」
そして、陽炎は3人に向き合って高々と言った。
「ありがとう!お前らと会えてよかったよ!」
『ん♡』
3人はこれほどにもないくらい幸せそうな笑顔を作った。だが、陽炎の話はここで終わらなかった。
「そこでなんだが・・・あの、その、えーと、許して欲しいことがあるのですが・・・」
『ん?』
「えーと・・・そのー・・・フェルルとファルルを俺の嫁にしたいのですが・・・」
『ん???』
「許してくれますか?」
陽炎は手を合わせ頼んできた。その時気づいた。・・・へぇ〜そういう事だったんだー。だからあんなに私達のこと褒めたんだー。しかも、あの時のビンタも避けれたはずなのに避け無かったのもこの時のためだったのか〜・・・
「かぁくぅん!?どういうことかなぁ!?」
「だからあんなに私達のこと褒めたんだー」
「私達に怒らなかったのもそういう事だったんだー」
うぅ・・・視線が痛い・・・なんだか嫌な目でこっちを見ている。陽炎は冷や汗をダラダラと流した。それはまるで滝のようだった。
「かーくん、お尻を出して膝に手を付きこっちに向けなさい」
「い、嫌です・・・どうかお許しを・・・」
「そんなものは聞き受けません。今すぐ言った通りにしなさい」
これは本気だった。目がまじだった。言っておくが陽炎はドMでは無い。ドSだ。そうなればこれしか方法は無い。誰も傷つけなくて、なおかつこの場を対処出来る方法。それは・・・
「逃げるが勝ちだ!現れろ”オノスケリス”」
とてつもない魔力が発せられた。すると、陽炎の後ろから絶世の美女が現れた。だが、それは1目でわかる。女悪魔だ。
「また後でな!あ、式は3日後って伝えててね!」
陽炎は笑顔で逃げていった。3人はそんな陽炎を見て少し笑い、絶対にお仕置をすると心に誓った。
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