第39戒 合間時間は戦いなのだ
「式まではまだ時間があるゆっくりしてるといい」
「うん。かげくんはどこに行くの?」
「まぁ、ちょっとな」
そう言って陽炎は外に出ていった。
「・・・違ったのか・・・初めてを迎えるわけじゃなかった・・・」
テムが小さくそう呟いた。
━━陽炎は街を歩いている。昨日までは全然いなかった人達も1日だった今では人が増えてきている。ギルシア達やジィーン、ヴィオラが良い噂を流して回ってるのだろう。
「フッ・・・この街も賑やかだな。なぁ、サモナール王国の暗殺者さん」
そう言って陽炎は後ろにいた女の子に指を指した。
「うふふ、気づいてたの?」
「まあな」
「そう、なら話が早いわ。死んでもらえる?」
「拒否させてもらおう」
「それなら、強制的に死んでもらうわ」
女の子はそう言うといきなり襲ってきた。
「暗器か・・・面倒だな。それに、人が多いんだ。街の真ん中で戦いたくないんだが」
「そんなことは関係ないわ」
街の人々が逃げていく。しかし、まだ人が残っている。このままでは街の人々にも被害が出るだろう。
「仕方がない。全部キャッチしてやろう。さぁ、暗き刃が舞う戦いだ、絶望の片鱗を見せてやるよ」
「そう・・・なら、見せてもらうわ!」
刃が飛んできた。ナイフかなにかだろう。陽炎は手袋をつけると片っ端からキャッチしていった。
「流石ね・・・まさか全部取られるとは思ってなかったわ。でも、これで終わりと思わないで」
さらに多くの暗記が飛んできた。それも、広範囲に。陽炎は走りながらキャッチしていく。
「はっ」
「全方位攻撃か、クソっ!」
陽炎は取った暗記で全て弾き落とした。なんと、数百は飛んできた暗記を全て捌いたのだ。
「フフ・・・流石ね、でもなんか拍子抜けしちゃった。あれだけ凄いって言われてたのに」
「それは済まないね」
「そう、分かってるなら死んでもらうわ」
「それ・・・もう3回目だわ!」
陽炎は取った暗記を投げ返した。すると、数百倍になって帰ってきた。
「うわ、やばっ・・・全部捌く・・・っ!」
陽炎はギリギリで交わした。すると後ろの方に小さな爆発が無数に起こった。・・・爆発系か、すぐに対策を打ってきたな・・・
「まだよ!」
なんとどこから出てきたのか、モーニングスターを取りだした。嘘だろ、その体のどこに隠すんだよ。胸か?胸なのか?やっぱりその大きな胸に隠すのか?
「くっ・・・」
そんなことを考えていると鉄球が飛んできた。左からは鉄球、右からは暗器が飛んでくる。流石にこの状況はやばい。
「一旦逃げるか」
陽炎は後ろに飛んだすると突如頭をなにかに打ち付けた。ドゴンッ!という音と共に陽炎は下に落ちた。
「痛ててて・・・っ!?結界か・・・」
「そうよ。こっそりはらせてもらったわ」
「へぇ〜、そうなんだぁ〜」
「いつまでその余裕が持つか、楽しみね!」
女の子は陽炎を睨みつけそう言った。仕方がない少し本気を・・・いや、今では無いな。もう少し待ってからにしよう。陽炎がそんなことを考えていると、ナイフが飛んできた。陽炎は顔を逸らして交わした・・・はずだったが、なんと背中に刺さっている。
「ちっ・・・っ!?これは・・・?」
「残念ね!それは呪石毒と言ってね、刺さった人を石にするの」
確かに陽炎の背中は石になってきている。しかし、そんなことよりいつの間に後ろにいたのか。そっちの方が気になる。
(現在分かっている情報から考えると、1つ目は生成魔法か何かだ。だが、それだと形が不格好になるはずだ。だが、これだけ綺麗に出来ていると考えにくい。2つ目は召喚魔法だ。だがそれだと詠唱や魔法陣が必要なはずだ)
「今はこんなとこかな」
「あら、何か言った?」
「何でもないさ」
陽炎は自分の背中を気にしながら女の子の武器を全て交わす。しかし、これだとジリ貧でしかない。どちらか一方の体力が尽きればそこで終わりだ。それに、かすれば石化される。解呪で解けるだろうが、それだと陽炎自身が弱体化してしまう。
「そうだ、お前の名前はなんだ?」
「言うわけないでしょ。まぁ良いわ、フェルルとでも名乗っておこうかしら」
「そうか、フェルル・・・いい名前だな。俺が勝ったら奴隷にでもしてやるよ」
そう言い終わると同時に陽炎はその場を離れた。なぜなら陽炎目掛けて鉄球が飛んできたからだ。
「なんとかしないと・・・うわぁ!」
即座に体をひねりその場を離れた。なんと、ミサイルが飛んできた。
「嘘だろ・・・」
(どっから出てんだよ。急に足が早くなったり、どっかからか武器出したり・・・ん?武器を出す・・・そういえば、武器を出してんだよな・・・服の中から・・・)
「そういう事か!」
(”古代眼”)
心の中でそう呟いた。ここに来る前に朝作っておいたスキル、”無詠唱”の効果だ。声に出さずとも魔法やスキルを発動できる。
「フッ、やはりな・・・仕方がない。少し本気を出してやろう」
そこから突如陽炎の速さが速くなった。と、言っても陽炎が初めて冒険者になった時くらいの速さだが、それで十分だ。飛んでくる暗器を全て交わしフェルルの目の前まで一気に詰めた。
「はい、終了。”ブレインダー・・・”っ!?」
魔法は発動できなかった。なんと空から鉄の槍が降ってきた。よく見れば結界は壊れている。
「惜しかったわ。ねぇ、ファルル」
「そうねフェルル」
そう言って空から降りてきたのは、目の前にいるフェルルと同じ顔をした女の子だった。
━━一方その頃、テム達はウエディングドレスの着付けと、どんな衣装にするか悩んでいた。
「う〜ん、迷うなぁ・・・」
「本当ね。ウエディングドレスなんて全部同じかと思ってたわ」
「それよりさぁ、かげくんはどこいったんだろうね」
その場の全員が黙った。しかし、すぐに探しに行きはしない。なぜなら、信じているから。どんな事があってもちゃんと時間通りに来てくれると信じているから。
「かーくん・・・待ってるよ」
━━そして陽炎は、新しく来た女の子と対峙していた。
「へ、へぇ・・・双子だったんだ・・・」
「そうよ。驚いた?」
「どうかな・・・」
かなりまずい状況だ。人1人増えただけではなく結界まで壊れた。この結界は陽炎を逃げられなくするものだが、陽炎自身も街に被害がなくて良かった。しかし、壊されたとなると街への被害は尋常じゃないはずだ。
「さぁ、始めるわよ」
「えぇ、始めるわよ」
・・・来るっ!
『”ウエポンストーム”』
2人を中心として竜巻が発生した。更にその中から暗器が飛んでくる。
「クソッ!”ブリザードウォール”」
氷の壁は竜巻を覆い隠した。しかし、竜巻はそれをものともせず出てくる。
(どうする!?炎で爆破させるか!?いや、ダメだ。竜巻が強くなるだけだ。やはり凍らかすか・・・それともキューブ?いや、ここでキューブを使う訳には・・・)
その時、遠くから男の子の泣き声が聞こえてきた。それも、聞き覚えのある声が・・・
「この声は・・・ちっ!邪魔するな!”ブリザードウォール”」
「待て!”ウインドフォース”」
「”プラズマブリザードブラスト”」
ビキビキと音を立て風だけでなく竜巻、更には暗器までもが凍っていく。陽炎はそんなことには目もくれず声のする方に全力で走った。
「君は・・・僕!どうしたんだ!?何があった!?」
「ま、まおう!うわぁぁぁぁぁん!うわぁぁぁぁぁん!おかあさんが!おかあさんが!」
よく見ると、男の子は朝出会った男の子だった。お母さんの方に目をやると腹の辺りに暗器が刺さっている。その部分から石になっている。
「ちょっと待ってろ。今助ける。”ブレイクカース””樹木呪戒・木霊の雫”」
お母さんの呪いは解け、傷は塞がった。するとお母さんは目を覚まし体を起こした。
「おかあさん!やった!やった!ありがとう!まおうさま!」
「あ、え、えと、その・・・ありがとうございます!私ごときに慈悲をくださるなど・・・」
「いや、構わないよ。元々は俺が悪かったんだ。済まない」
「い、いえ!そんなことはありません!」
「そう言ってくれると嬉しいよ。僕も、ごめんね。それに、前みたいに呼び捨てでいいよ」
「いいよ!でも、やっぱりおかあさんをたすけてくれたからまおうさまがいい!」
「フフ、わかった。さ、気をつけて逃げろ。早くここから離れるんだ」
親子は急いでその場を離れた。少し遅れてフェルルとファルルが来た。
「あら、逃げちゃったの?」
「あら、死ななかったの?」
2人はヘラヘラとそんなことを言っている。イライラする。なんでだろう?別にテムやディリー、ルーシャがきずけられた訳では無い。それなのに、凄くイライラする。自然と陽炎から黒いオーラが漏れだし始めた。
「うぅ・・・」
「うぅぅ・・・」
周りの空気がピリピリしだした。
「逃げるなよ・・・俺の国でこんなに暴れて、大事な国民を傷つけたんだ。一生をかけて体で償ってもらうぞ。フフフ・・・アハハハハハ!スタート・オブ・デスパレード!死の祭りの開始だ!」
陽炎は不敵な笑みを浮かべた。
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