第38戒 4人の時間と幸せ
「”オープン”」
そう言うと陽炎のステータスが現れた。しかし、驚くことは何もない。なぜなら、前とあんまり変わってないのだ。
「全然変わってないね」
「フッ、そう思うだろ。よく見てみろよ」
「え?」
そう言って目を凝らしてみているとルーシャがあることに気づいた。
「これ、隠蔽されてる!」
「ご名答。これは嘘情報だ。こっちが本物な」
そう言って陽炎は見せてきた。それは凄く驚くことが書いてあった。
「こ、これ、本物?ステータスオール100だなんて・・・」
「本物だよ。あと、全部じゃない知力が1万、魔力はほぼ無限だ」
「あ、本当だ・・・じゃなくて!どうしてこうなったの!?」
「古代眼を手に入れた時にこうなった」
「いや、こうなったって・・・どうしてそうなるのよ・・・」
3人は呆れて声も出なくなった。
「はぁ、強い力には大きな代償がいる。分かりきったことだろ」
「・・・そうだけど・・・」
歯切れの悪い返事だった。その時ルーシャが質問をした。
「ねぇ、魔力がほぼ無限っていうのは何?数えきれないけど・・・」
「ほぼ無限ってのは、俺の魔力超回復スキルが関係する。そのスキルは5秒に1魔力を回復する」
「そういう事ね!だから古代眼を使っても魔力が無くならないのね」
「そういう事。古代眼は5秒に1魔力を使用する。だから、使ってすぐ増えるんだ」
3人は陽炎の話を真剣に聞いている。それから、数分間自分のことについて話した。
「・・・最後に1つだけ気をつけて欲しいことがある。これは・・・」
「陽炎様、ただ今帰りました」
陽炎が話そうとしたところギルシア達が帰ってきて、部屋をノックする音が聞こえた。ノックの後ギルシアが声をかけてきた。
「そうか、皆王の間で待たせてろ。・・・3人とも、話はまた今度だな」
『んっ!』
陽炎は3人を先に行かせて部屋に残った。さっきまであんなにうるさかったのに今は静かだ。陽炎は自分の剣を手に取ると背中に装備した。そして、マントと仮面をつけ部屋を出た。少し歩くと、王の間の前に着いた。自分で作っといてなんだが、かなり大きい扉だ。陽炎は扉に手をかけ押した。
「全員膝まづきなさい!魔王様が参られましたよ!」
『はっ!』
テムがそう言うと同時にギルシア達が膝まづいた。陽炎はその真ん中を通る。足音がカツカツとなっている。そのまま陽炎は椅子に腰掛け足を組み、頬杖をついた。
「全員表を上げろ。今日は良く働いてくたな。それで、今どうなっている?説明しろγ」
「はっ!現在、私の言霊魔法により世界中に魔王様誕生の噂は流れました。しかし、サモナール王国だけ噂を流す前から知っていた模様。恐らく、何かしらの魔法により情報が漏れたかと」
「そうか。良くやった。しかし、情報が漏れたとなると今頃はこっちに向かってるくらいか・・・少し動きが早いな。まぁいい、計画を少し早めるか」
陽炎は少し悩むと命令を下した。
「δ、η、お前達2人で感知結界を張れ。敵意のある奴はすぐに捕らえろ」
『はっ!了解しました!』
陽炎は立ち上がると続けて言った。
「全員注意を怠らず、いつ戦闘に入ってもいいよう準備をしておけ!」
『はっ!』
そして陽炎は転移魔法でその場を離れた。陽炎がいなくなったのを見計らってディリーがギルシア達に話し出した。
「・・・では、皆にはこの城の防衛を行ってもらうわ。結界は陽炎くんが張ったけど、中に入ってくる人もいるかもしれない。もし見つけたらすぐに捕らえるのよ」
「・・・分かりました。1つ質問なのですが、この城自体の防御力はどのくらいなのですか?」
「かげくんが言っていたけど、この城は魔界の魔結晶に高密度の魔素を込めて作った魔界石で出来てるらしいわ。アダマンタイトの数百倍硬いらしいから壊される心配はないわ」
「了解です」
「それでは、仕事に入って貰うわ」
『はっ!』
━━一方その頃、部屋に戻った陽炎はベットの上で転がっていた。
「痛いなぁ〜・・・このベット、意思で作ってるから痛いなぁ〜」
陽炎は体を起こすとベットに目をやった。少し悩むとベットに手を置いた。
「”古代眼””真加工”」
陽炎は魔法でベットを柔らかくしようとした。そして、この魔法が始まりの合図となり長い戦いが始まった。
「いや、やわらかすぎだろ。綿100パーセントにすると沈みすぎて地面に着くぞ」
陽炎は体を起こした。あ、そうか・・・
「ベットを作ればいいのか”真加工”そして、綿を70パーセントで、ポリエステル23パーセント、ポリウレタン7パーセント・・・」
陽炎は手で布団を叩いてみた。しかし、何か違う。
「”真加工”・・・やっぱダメだ。”真加工”・・・なんか違う。”真加工”・・・クソッ、全然ダメだ・・・」
そして気づけば既に12時を超えていた。次がラストチャンスだ・・・
「”真加工!”・・・・・・・・・成功だ・・・やった!成功だ!」
陽炎はベットに飛び込んだ。ふっかふかのベットにちょうど良い沈み具合。このままの調子でシーツも作った。なんと、奇跡的に布団全部が丁度よく出来た。ふかふかのベットに新品のシーツ・・・陽炎は魔法にかかったかのように眠った。
━━翌日・・・
「・・・ん?あぁ、もう朝か・・・て、え?」
そこには驚きの光景があった。確かに大きくは作った。それは、陽炎が寝相が悪いからとか誰かと一緒に寝たかったとかそういう訳では無い。ただ単に、このコンディションにするにはこの大きさがちょうど良かったのだ。だから、誰かと一緒に寝るつもりは無かったのだが・・・
「え?ちょっ、お前ら何してんの?」
なんと陽炎のベットの中に裸のテム、ディリー、ルーシャが陽炎に抱きつく形で寝ていた。
(え?これ、どういう状況なの?もしかして俺、夢遊病患者なのか!?何も記憶にない・・・ベットができて最高の気分で寝て・・・)
「ん・・・んん・・・んぁぁ、良く寝たぁ〜・・・」
テムが目を覚ました。それと同時にディリー、ルーシャも続いて目を覚ました。
「あ、おはよう、ダーリン♡」
ハッとした。そして、陽炎は自分のシーツとパンツを確認した。大丈夫だ、濡れてはいない。
「んもぅ〜、どうしたの?」
「いや・・・なんで俺のベットにいるの・・・?」
「何でって、一緒に寝たかったからに決まってるじゃない」
ホットした。どうやら陽炎が連れ込んだ訳では無いらしい。
「はぁ、そうだったのか・・・お前ら一緒に寝たいなら早く来いよな」
『は〜い♪!』
陽炎は1度3人にベットから降りてもらうと着替えを始めた。カチャカチャ、サッサッ、ガサゴソガサゴソ、服を着替える音が聞こえる。そして陽炎はなにかに気づいた。
「おれのからだが濡れている。特に大事な剣を重点的に狙われている・・・ハッ!もしや・・・」
陽炎は急いでテム達の方を向いた。そこには誰もいなかった。否、誰もいないわけではなかった。
「はぁ、別に怒ってないよ」
「・・・・・・・・・本当?」
「本当だよ」
そう言うと背中の方から出てきた。なんとまあ素早いことだ。あの一瞬で死角に入るとは・・・
「そういえば、今日っていつだっけ?」
「今日は大聖歴1003年12月12日金曜日だよ」
「いや、そこまで詳しく聞いてねぇよ・・・金曜日か、てことは今日があの日だな」
「ちょっと何言ってるの?」
陽炎はブツブツ呟き出した。顎に手を当て何かを悩んでいる。考えが纏ったのか、こちらを向いて仮面をつけ微笑んできた。
「嫌な予感が・・・」
「なぁ皆、これ付けてくれ」
差し出してきたそれは目隠しだった。
「な、なんで・・・?」
「いやさ、あれだけ言ってたじゃん。この街に帰ってきたらやろうって。だからこっそり準備したんだよ。大丈夫、きっと楽しいし、気持ちよくなるから」
3人の顔が真っ赤になる。心臓の音がドキドキなってうるさい。ここで逃げてもいいのだろうが、逃げられるかも分からないしそれに、逃げたくない。3人は黙って目隠しをつけた。
「ほら、こっちこっち」
陽炎は前に進む。テムは陽炎の右腕、ディリーは左腕、ルーシャは背中という感じに抱きついて進んでいく。扉の開く音、街の人々の声、どうやら外に出たらしい。途中で陽炎は足を止めた。
「あ!まおうだ!わはははは!われこそがさいきょえのまおうなりぃ!」
子供のそんな声が聞こえた。
「こら!すみません!うちの息子が・・・」
「いや、別に構わないよ。僕、魔王に憧れてるのかい?」
陽炎はしゃがんで話しかけた。そのせいでテム達もしゃがむことになった。
「うん!だって、まおうってかっこいいじゃん!」
「そうかそうか。それはいい事だ。君に魔王になるために大事なことを教えてあげよう」
陽炎はテムがしがみつく右手で男の子の頭を撫でて、そう言った。
「え?なになに?」
「それはね、仲間や友達を大事に思うことだよ。仲間のためならどんな力も出せる。友達のためなら普段の何倍にも強くなる。だから、仲間や友達を思う力こそが魔王になるために必要なことなんだよ」
「うん!わかった!ぼく、これからもともだちとなかよくするよ!そして、これまででさいきょうのまおうになる!」
「うん。君ならなれるよ。頑張れ」
そう言って陽炎は手をグーにして男の子の前に突き出した。男の子は笑顔になると陽炎はの手に合わせるようにグーを突き出した。
「約束だ。強くなったら何時でも俺を倒しに来い。それまで絶対にやられたりしないからな」
「うん!約束だよ!」
「あぁ」
そう言ってグーを合わせた。男の子はそのままお母さんに連れられ行ってしまった。
「かーくん、子供好きなの?」
「あぁ、大好きだ。だから、守ってやりたいと思っている」
「え!?それって・・・ううん、なんでもない。そうなんだね。私も守ってあげたいよ」
陽炎は微笑むと再び足を進めた。そして、少し歩いたところで立ち止まり建物の中に入っていった。
「さ、外していいよ」
陽炎はそう言って3人の目隠しを外し始めた。目が眩しい。暗闇から突然明るい場所に来たからだ。なんとか慣れてきて目を開けるとそこは結婚式場だった。
「ここって・・・」
「これから忙しくなるしやる時は今しかないって思ってこっそり準備してたんだ」
陽炎はそう言うと3人に向き合い膝をつきプロボーズの姿勢を取った。
「改めて・・・俺と結婚してくれ」
陽炎はそう言って3つの指輪を差し出した。
『はい!』
3人は泣きながら笑顔になり、指輪を取った。
読んでいただきありがとうございます。




