第37戒 最初の仕事
陽炎は長い廊下を歩いている。いや、廊下と言うには少し違う。長い部屋だ。部屋の奥には階段があり少し高い位置になっている。その真ん中には豪華な椅子がありそのまわりにテム、ディリー、ルーシャが立っている。椅子の周りにはギルシア達が膝まづく形で座っている。陽炎は真っ直ぐ進みそして椅子に座った。
「表を上げろ」
『はっ!』
「では、これからの方針を話す。あれから1夜開けたが、ηどうなったのか説明しろ」
「はいっ!あれから1夜経ちましたが、この国から逃げた者はおりません。皆嫌々ながらも受け入れている様子です」
「そうか、上場の結果だな。よくやった、η」
「はいっ!ありがたき幸せ・・・」
「陽炎様、失礼ながら1つ質問があるのですが・・・」
「なんだギルシア?話してみろ」
「はっ!・・・陽炎様はサモナール王国の物であるこのステイトの街を占領したのですが、これから他国との関係はどうするのですか?」
「と、言うと?」
「このままではすぐに他国の軍が到着し攻められる危機があると思うのですが・・・」
ギルシアはたんたんとそう述べた。しかしそれは誰でも思うことである。陽炎は足を組むと不敵な笑みを浮かべた。
「フフフ・・・その心配はないよ」
「っ!?何故・・・ですか・・・?」
「まずこの国を占領した場合誰が攻めてくる?」
「サモナール王国だと思います」
「そうだ。今この国はサモナール王国を占領したわけだ。そして、我が国の戦力は未だ知られてはいない。よって、不用意に進行するのは得策ではないだろ」
「っ!?そういうことですか・・・」
「え?ちょっとどういうこと?話についていけないんだけど」
2人で納得しているとテムが言ってきた。その様子を見ると頭の上にはてなが飛んでいるようだった。
「ま、要するに今この国に攻め込んでもこちらの戦力が分からない以上返り討ちに会う確率が高いということ。だから、攻めてくる確率は低いわけ」
テムは目を輝かせてこっちを見ている。陽炎はその後に続けて言った。
「サモナール王国が手を打つのであれば2日、もしくは3日後だな」
「なんでそう言い切れるの?」
「王国からこの国までだいたい2日かかる」
「あ!なるほど!」
ルーシャはそう言って手を叩いた。陽炎はそれを見て少し微笑むとギルシア達に向き合った。
「今までの事を踏まえて今日やることはまず俺が魔王になったことを全世界に広めろ。噂でもなんでもいい。そして、国の防衛を高めろ。街を囲う壁を強くしろ。冒険者の育成も大事だが、そこは俺が行く。全員注意を怠るな!不審な人物を見つけたら即報告しろ!全員行動開始!」
『はっ!』
陽炎の話が終わると、ギルシア達は返事をするとすぐに外に出ていった。陽炎達は静かになるとその場に立ち上がった。
「それじゃあ、お前らギルドに向かうぞ」
『んっ!』
陽炎は微笑むと仮面とマントを取り出した。そして、マントを羽織り仮面をつけた。
━━場所は変わってギルドの前、陽炎達は既にそこにいた。
「て、て、て、転移魔法まで・・・かーくんが本当に人間とはおまえなくなってきちゃった・・・」
「それほどか?何となくやったら出来たな」
『嘘っ!』
陽炎はテム達から疑いの目を向けられながらギルドの中へと入っていった。ちなみにだが、このギルドは陽炎が魔王城に変えたあと、街の中心に立て替えたやつだ。陽炎は中に入ると目を疑った。なんと、ギルドに冒険者が全然いないのだ。いても数人くらいである。
「ヴィオラ!いるか?」
「はい!今行きます!」
奥の方から声が聞こえる。事務作業か何かやっていたのだろうか。ヴィオラはすぐに出てきた。
「ま、魔王様!?すみません遅くなりました!」
ヴィオラは陽炎の顔を見るなりすぐ膝まづいた。
「おい、そんなにかしこまらなくてもいいぞ。昨日までタメ口だっただろ」
「いえ、そういう訳には・・・」
「そうか、まぁいい。ところで、冒険者達はどうした。急用があったのだが」
陽炎がそう言うとヴィオラは少し困ったかのように陽炎をチラ見しだした。それでなんとなく分かった。
「なるほどな。俺との戦いで負傷してるのか」
「はい・・・」
「攻めている訳では無い。まぁ、傷が治った頃を見計らってまた来るよ」
「ちょっとお待ちください。急用というのはどんなことですか?大事なことでしたら今すぐお呼びしますが・・・」
「そうだな。冒険者育成施設について皆に聞こうと思っただけなんだが・・・そこまで大事では無いからな。だが、この国の戦力増強の点で行けばかなり重要だ」
「冒険者育成施設ですか・・・あまり良い意見はないと思うのですが・・・」
ヴィオラはたどたどしく言ってきた。どうやら魔王である陽炎の言うことを否定するのが少し恐れているみたいだ。
「別に否定したから殺したりはしない。それよりなぜそう思うんだ?」
「冒険者の方達は基本的に実践を積んで強くなるという方の方が多いからです。なので対人で教える育成施設はあまり良い意見はないんですよね」
「そうなのか。それなら出直すか」
そう言って振り向いくとドアの所に男が立っていた。その男は陽炎を見つめると近寄ってきて話しかけてきた。
「話は聞かせてもらった!その話乗らせてもらうよ!」
その場の全員が呆然とした。
「おっと、自己紹介が遅れたね。俺はジィーン、ジィーン・メルフェリエス。ブルーメタル級冒険者だ」
「っ!?いたのか、この国に!?」
陽炎は思わず動揺した。なんせ、陽炎が冒険者をやっていた時の二個下の位のやつがいたからだ。
「まぁ、知らなくて当然か。ほら、ガルフとたまに一緒にいただろ」
「あぁ、あいつか。それで、何の用だ?」
陽炎は率直に聞いた。するとジィーンはふてぶてしく笑うと大声で言った。
「さっき話してた冒険者育成施設の事だが、この俺が手伝ってやる!」
「ほぅ・・・どんなことを手伝ってくれるのか?」
陽炎がそう聞くとすぐにこちらを見て、話し合いをしようと言ってきた。陽炎はそれを呑むと席につき話し合いを始めた。
━━それから数分・・・陽炎達の話は弾んだ。2人がそれぞれの意見を言い合って遂に決まった。
「これでいいな」
「あぁそうだな」
「それじゃあ俺はここらで退散させてもらうよ。これからやることも決まったしね」
「そうか。では、またどこかで会おう」
「そうだな。何か緊急事態が怒ったらすぐに呼んでいいぞ」
そう言い残して陽炎達はギルドを出た。
「・・・なぁ、受付の君・・・彼のことどう思う?君は彼について行きたいと思うかい?」
「私?当然よ!私は彼について行きたいと思うわ!」
「そんな君に悪いんだけど、少し彼について言っていいかい?」
「良いわよ」
「そうか・・・悪口な聞こえたら済まない。・・・彼は間違いなく魔王だよ。少しだけ殺気を放ってみたんだ、本当に強いのか疑問に思ってな・・・」
「魔王様は強いに決まってるじゃない」
ヴィオラが横から話をさえぎった。しかし、それを無視してジィーンは話を進めた。
「だが、あれはバケモノだ!人間が出せる殺気ではない!彼は・・・いや、魔王様は真の魔王だ!それに加えてあの慈愛心・・・あれだけの力を持ってなお俺達のような冒険者などにも慈愛をもたらす。まさに完璧だよ!」
ジィーンは息を荒くしながらそう叫んだ。陽炎達に聞こえたのではないかと思うほどに。
「それで、結局あなたはどっちなの?」
「ついて行くに決まってるさ・・・あれほどの力、きっと面白いことになる」
そう言って2人は静かに笑った。
━━再び場所は変わって魔王城・・・陽炎は自分の部屋に戻っていた。そして、当然のように3人がいる。
「それで、結局どうなったの?」
「育成施設は作ることになったよ。それで、毎回ランクが上がる事に試験を行う形になると思う」
「そうなんだ、それじゃあ国の戦力は?」
「その人次第だ。行ける時は俺が出向いて指導するっていうことも言った。その方が育成はしやすい」
陽炎はベットで横になりながらたんたんと話した。その時、ディリーが突然立ち上がると陽炎の肩を掴んで揺らし始めた。しかも何か言っている。
「そんなことよりさぁ、早く陽炎くんのステータス教えてよぉ!」
「そういえばそんなこと言ったな。良いだろう、教えてやろう」
陽炎はそいうと体を起こし足を組んだ。
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