第35戒 テムの死・・・そして怒りの激突!
テムが死んだ。ガルフの手によって・・・陽炎の隣で。しかし、その時陽炎が殺したはずの男が生きていた。いや、正確に言うなら復活した。陽炎は、色んな感情で頭の中がぐちゃぐちゃになっていた・・・。
「テム・・・」
「陽炎くん・・・」
「かげくん・・・」
皆そんな陽炎の様子を見て心配している。すると突然陽炎が立ち上がった。仮面を外すとテムの胸の上にそっと置いた。
「どうしたの?ねぇ、陽炎く・・・っ!?」
突如陽炎から黒いオーラが溢れ出した。とてつもないオーラにその場の全員が動けなくなった。
「・・・おい、ギルシア。お前の側近の蘇生魔法が使えるやつは誰だ?」
「・・・え?、あ、えと・・・」
「早く言え!」
「はいっ!この人です!」
ギルシアは怯えながら側近の1人を前に出させた。その側近もかなり怯えている。
「お前、今すぐテムを蘇生させろ」
「・・・ですが、回復が・・・」
「口答えはするな。命令だ」
「は、はい・・・」
怯えながらか細い声で返事をした。すると陽炎はテムの近くに寄って胸に手を置いた。
「雑魚が。回復阻害くらいどうにでもできるだろ・・・」
「・・・馬鹿だな。無理に決まっているだろ」
遠くからガルフがそう言っている。陽炎はガン無視をして話を進めた。
「回復阻害はそれ自体の効果を消してしまえば意味は無くなる。こうするんだよ。”ダークネスヴァース”」
陽炎の手から闇の力がどんどんテムの中に入っていっている。それはテムの中の黒い力を蝕んで消してしまった。
「ほら出来ただろ。さっさと蘇生しろ」
「は、はい・・・分かり・・・ました」
側近の人は怯えながら返事をした。その後恐る恐るお願いをした。
「あの・・・1つお願いが・・・」
「なんだ?」
「ヒィ!すみません!すみません!それが、蘇生するのに女の冒険者が1人必要で・・・」
「良いだろう。いくらでもくれてやるよ」
陽炎はそう言った。その時ディリーと、ルーシャは気づいた。
「それって、まさか・・・」
「そうだ、そのまさかだ。ジェノサイドだよ!さぁ、血の滴る地獄の祭りだ!楽しみだなぁ!」
そして陽炎はとてつもなく不敵な笑みを浮かべた。その時、冒険者の1人が氷を壊して自由になった。そして、また1人、また1人と自由になっていく。
「陽炎を殺せぇぇぇ!」
冒険者の1人がそう叫んだ。それに呼応して女冒険者も叫び出した。
「おぉぉぉぉぉぉ!・・・え?」
「死ね!」
突如目の前に陽炎が現れた。陽炎は一言呟いて頭を握りつぶした・・・。それから次々に人が殺されていく。また1人、また1人と人が死んでいく。
「キャァァァァァァ!」
冒険者の1人が悲鳴をあげた。それから次々と絶望する者、戦おうとして瞬殺される者、泣き叫んで命乞いをする者が増えていった。
「これで終わると思うなよ。・・・何度も言ってやるよ。ジェノサイドだ!”炎流・地獄閻魔降臨の焔”」
辺りが焔で焼き尽くされていく。誰かが水魔法を使った。しかし、意味は無い。すぐに蒸発して消えてしまう。
「助けてくれ!助けてくれぇ!」
「嫌だァ!死にたくない!」
焔の中でそんな叫び声が飛び交う。
「・・・だったら・・・テムは殺すべきじゃなかったな。”風流・風魔降臨の・・・”」
『ダメぇ!やめてぇ!』
陽炎が、剣を振り上げた所をディリーとルーシャが飛びついて止めた。
「うぉあ!」
「ダメだよ!陽炎くんがそんなことやったらテムちゃんが悲しむよ!」
「そうだよ!こんなのかげくんらしくないよ!」
2人は必死に説得をする。しかし、陽炎の耳にそんな言葉は全く届いていない。更に詠唱を始めようとしだした。ルーシャは必死に口を押え、指を入れ止めようとした。
「痛いっ!うぅ・・・」
2人ではダメだと、ソルト達も抑えるのに協力した。5人でやっと抑え込むことに成功した。それでも、気を抜けばすぐに逃げられる。・・・と、そこでルーシャは不意に背中に痛みを感じた。
「いぎぃ!いだいよぉ!」
「・・・ガルフ・・・」
そうガルフだ。またもやガルフが陽炎の妻に手を出した。陽炎はより一層険しい顔つきへと変化した。
「お前ぇぇぇぇ!」
「陽炎、俺はお前のことは仲間だと思ってたのに!」
「それはこっちのセリフなんだよ、ボケが!永久に苦しんで死ね!”霊光・死霊之蝕悪死”」
陽炎の剣はガルフにたくさんの切り傷を作った。
「クッ!こんなもの・・・っ!?」
ガルフの手が止まった。よく見るとガルフの右手に黒い斑点が1つ出来ている。その斑点はどんどん大きさを増している。
「グァァァァァァ!」
ガルフが叫び声を上げた。ガルフは右腕を抑えると自分の手を見た。すると、黒くなった手は朽ち果て壊死していた。
「クソッ!」
ガルフは思わず右腕を切り落とした。しかし、壊死した痛みの方が大きかったのかそれほど痛がったりはしない。
「やってくれたな・・・」
「それも・・・こっちのセリフなんだよ!”風流・風魔降臨の・・・”」
「だからダメぇ!」
「それはダメぇ!絶対周りの人が死ぬでしょ!」
「あぁ、死ぬな。この街は紅蓮に染る」
「うぅ・・・そんなのダメ!そんなことしたってテムちゃんは喜ばないよ!」
その時、陽炎はハッとした。そうだ、テムはこんなことしても喜ばない。それは今まで一緒にいてよく知ってるじゃないか。陽炎は怒りを収め優しいいつもの自分に戻ろうとした・・・だが、それは出来なかった。
「クソッ!またお前か!」
そう、再びガルフが後ろから不意打ちをしてきたのだ。陽炎は咄嗟に剣で防ぐことが出来た。
「いい加減にしろ!”アルテマソードウエポン”」
陽炎の放った斬撃とガルフの剣がぶつかり甲高い音がなった。
「・・・」
「な、何よ?さっきからチラチラと・・・」
「なぁディリー、ルーシャ・・・テムは俺の事許してくれると思うか?」
「え?急にどうしたの?」
「いや、気になっただけだ・・・2人はどう思う?」
すると2人は笑顔になるとはっきりいった。
『絶対許してくれるよ』
「・・・本当にか・・・?」
「私達の言うことが信じられないの?もう、夫のわがままを聞くいてあげるのも妻の役目じゃん」
ルーシャはそう言った。ガルフの攻撃が飛んできていて聞き取りづらかったが、それははっきり聞こえた。
「・・・フフフ・・・”領域・・・限界解放”」
陽炎とガルフの周りが暗闇に覆われた。薄暗い空間で2人は向き合っている。
「ガルフ・・・俺はお前と1体1で決着をつける」
「・・・」
「これが最後だ。一撃で決める」
「そうか。良いだろう」
ガルフはそう言って構えた。しかし、陽炎は構えない。
「何をしている?」
「なぁ、なんでお前は俺にこんなに怒ってんだ?」
「・・・」
「お前のこの感じだと、前から恨みを持っていたぐらい怒っているだろ」
「・・・」
「最後に教えてくれないか」
陽炎はそう言った。するとガルフは陽炎を睨みつけると、とてつもなく怒り陽炎に、言い放った。
「ふざけるな!お前のせいで俺の母さんは殺されたんだよ!」
「何?俺のせいだと?」
「あぁ、そうだよ!しらばっくれるなよ!あの日だ・・・あの日・・・フッ、教えてやるよ。俺の母さんは盗賊でな、義賊をやってたんだよ。ある日母さんがお宝の話を持ってきた。そう、神器だよ。それで母さんは神器を取りに行った」
「それで帰ってこなかったのか?」
「いいや、違う。帰ってきたさ・・・神器を持ってな。だがな、母さんはその日神器を家の中で俺に見せてくれた。そしたらか突然黒い触手が現れた。それは母さんを俺の目の前でおかし始めた。どんどん堕ちていく母さんを見てるのは苦しかったよ。堕ち果てて弱ってそのまま犯され続けて殺された・・・」
「それと俺になんの関係がある!?」
「後で文献で調べたよ。そしたら、この世界に初めて神器をもたらした男が1000年前にいたんだよ。久遠陰朧っていうやつがな」
「・・・」
ガルフは陽炎を睨みつけた。陽炎は黙って睨み返した。ガルフの怒りは収まらず増していくばかりだ。
「まさかとは思ったよ。お前と同じ名前でな。だが、お前の技を見て確信した。だからお前が俺の母さんを・・・」
「一緒にすんなよ」
「何?」
「一緒にすんなって言ったんだよ!確かに俺の家族だ、お前の母を殺したのはな!だがな、俺の事情も知らないで俺のせいにすんなよ!・・・家族に突き放されることが、社会から捨てられることが、特別な存在を目の前で殺されることがどんなに苦しいか分かるか!?自分だけが不幸ですみたいなこと言ってんじゃねぇ!お前より不幸なやつはこの世界に5万といるんだよ!」
「うるせぇ!そうやって責任を逃れると思ってるのか!」
「責任もクソもねぇんだよ!不幸自慢なら俺だって負けねぇ!お前が無知なせいでこっちは辛い思いをしてんだよ!」
そう言って陽炎は構えた。自分が持っている中で最強の技だ。
「知らねぇ・・・そんなことは知らねぇんだよ!全部お前が悪いんだよ!」
そう言ってガルフも構え直した。2人は構えながら向き合っている。するとどこから現れたのか水滴が上から落ちてきた。そして、ポツンという音を立て地面に落ちた。それが合図となって2人同時に攻撃を繰り出した。
「”陽流四十式・聖天太陽王降臨の裁き”」
「”神器解放・ヘルファイアバースト”」
2人の力は激突した。辺りは白と黒の光に包まれ領域は保つことが出来なくなって壊れた。
「ウォォォォ!」
ガルフの咆哮が聞こえる。外からはディリーとルーシャが何かを言っている。ガルフの攻撃は陽炎の右手を貫いた。・・・それでも!特別な存在のために戦っている俺の方が強い!復讐のため、自分の怒りを抑えるため、そんな理由で戦うやつに負けられない!だから・・・
「俺の勝ちだ!」
そしてその場は全て白い光に包まれた。
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