第32戒 フレア街の反感
辺りを探り出して数分が経った。陽炎以外の全員は皆ソワソワしながら動いている。そしてついにテムが口を開いた。
「あの・・・さっき言ってた因縁って何?」
「因縁?」
「そう。因縁があるって言ってたけど何があったの?」
陽炎は手を止めない。しかし、辺りを探りながら話してきた。
「さっきじいちゃんから言われた。セントクロス、ダークインベージョン、カオスアトランティス、この3つの軍がこの世界に転生してるって・・・」
「・・・その、3つの軍って強いの?それになんで転生したの?何人転生したの?」
ディリーの怒涛の質問に少し手が止まった。そして立ち上がると振り返り目を見て話してきた。
「順を追って教えてやる。その前に着替えさせてくれよ。この服はもうビリビリだからな」
そう言って微笑むと着替えを始めた。テム達が服なんて持ってないでしょと言わんばかりの目で陽炎を見てるが陽炎が取りだした服を見て驚いた。
「それって・・・」
「お前らが厨二病と言って買わなかった服だ。あの後買ったんだよ」
そう自慢げに言うとすぐさま着替え話の続けた。
「それで話を戻すが、俺がなぜ知っているのかはさっきも言った通り因縁があるからだ」
「それでその因縁ってのは・・・?」
「・・・革命が失敗に終わったあと起こそうとした奴らは全員処刑された。1人残らず死刑だった。そしてその死刑執行人は俺だ」
『っ!?』
「俺は何万人もの人を1人残らず殺した。多分その時に全員転生したのだろう」
「そう・・・なんだ・・・かげくんは大丈夫なの?」
「何がだ?もしかして俺の心を心配してくれてんのか?ありがとな。でも大丈夫だ」
そう言ってルーシャの頭を撫でた。そしてまた後ろをむくと辺りを探り出した。すぐに仕掛けを見つけると転移空間のようなものが出てきた。
「・・・見つかったね。早く戻ろうよ。ね、かーくん」
しかし陽炎は俯いて何かブツブツ言っている。
「何言ってるの?かーくん・・・」
そして、テムが近寄ると聞こえてきた。
「あの時は・・・ずっと正しいって思ってたんだ。でも1人、また1人って殺していくうちにあれ、おかしいなって思ったんだ。どんどん血に染っていく手を見てこれは本当に正しいのか?正義だと思ってきたことが正義じゃなかった?」
陽炎はどんどん目を血走らせ、血管を浮かびが上がらせた。その時ディリーが陽炎の目をビンタをして覚まさせた。陽炎は頬を抑えると呆然とディリーの方を見つめた。
「陽炎くん!目を覚ましてよ!」
「・・・あの時からずっと思ってたんだ・・・1年かかって全員殺した。でもこれはただの殺人だ。何がゆとりだ・・・人を殺させて悲しみと悪夢、憎悪に恐怖・・・全部負の感情だ」
「陽炎・・・くん・・・?」
その時陽炎が壁に手を殴りつけ壁が壊れた。
「ふざけるな!何が殺せだ!俺だって好きでやってる訳じゃねぇんだよ!そして、要らなくなったら用済み・・・」
「陽炎くん!目を・・・」
「うるさい!」
突然陽炎は叫んだ。その声で周りの空気が揺れた。
「目を覚ませだと?目ならとっくに冷めてるさ・・・ククク・・・ずっとだ、ずっと我慢してきたんだ。あの時もそうだ、人は殺したくないのに殺さなきゃならない!戦いたいわけじゃないのに戦わせてくる!お前らが俺の代わりに戦ったことあるか!?」
陽炎の怒りは収まらない。それどころかどんどん増していく。
「・・・いや、悪い。お前らが戦わなかったのは俺が戦わせなかったからか。まぁ、それでも気を利かして戦うのが友情とかそういうもんだろうがな。」
陽炎はそう言って振り返ると転移空間に向かって歩き出した。そして顔だけ振り向くとテム達に言った。
「もう俺とは関わるな。その方がお前らも良いだろう。じゃあな」
そう言って陽炎は転移空間の中に入ろうとした。しかし、その途中で後ろから3人に抱きつかれて足を止めた。
「お前ら・・・」
「絶対離れない!もうかーくんを1人になんてさせない!」
「たとえ陽炎くんが私たちのこと嫌いになっても私達が嫌いになんてならない!」
「かげくんのこと全然知らなかった。それでも私はかげくんが大好き!だから離れたくない!」
3人は強く抱きついた。陽炎は3人の目を1人ずつ見つめた。よく見ると3人の目が潤っている。
「・・・本当にいいのか?この先は闇しかないぞ」
「良いの!私達だってもう覚悟は出来てるんだから」
「そうだよ。私達も同じよ」
「だからさ、かげくん・・・私達と一緒に進もう!この先どんな未来が待っていても・・・たとえ闇しかなくても!」
遂に3人は泣き出してしまった。泣いたところで俺が怯む訳がない。そんなことも分かってるんだろうな・・・。
「はぁ、どうせダメって言ってもついてくるんだろ。・・・良いだろう!俺の覇道にとことん付き合ってもらうぞ!・・・って、何笑ってんだよ」
「え?いや、ほら、かーくんはやっぱりこうでなくちゃって思っちゃって・・・」
テムがそう言うと陽炎は不敵な笑みを浮かべた。
「そうか・・・それなら俺はお前らが満足できる世界に作り替えてやる。俺が最強・・・いや、最恐だってことを教えてやる!神器と古代武器は持ったな!準備は万全だ!ここから俺の終焉の宴・・・ラグナロク・フィーストの始まりだ!面白くなってきたぜ!」
そして4人揃って転移空間の中へと入った。すると4人の体は白い光に包まれると瞬く間に消えてしまった。後に残ったのはその場に埋めた陰朧のお墓だけとなった。
━━フレアの街の遺跡に巨大な光の柱が立った。街中の人は大慌てで移籍まで走った。光が収まると移籍の中に人がいるのに気づいた街の人達は武器を持ち構えた。そして、中から出てきたのは陽炎達だった。
「なっ!?お前ら何故ここに・・・っ!?」
陽炎の姿を見た途端そこにいる人々が全員ざわめき出した。なぜなら陽炎が背中と腰に着けていた4つの武器は全て神器と古代武器だったからだ。
「お前ら・・・それ・・・」
「フッ、お察しの通り神器だ。古代武器もあるぞ」
「やっばり・・・!」
街の人々のざわめきは大きくなった。皆陽炎の方をチラ見しながらコソコソ話している。陽炎は3人を1箇所に集めた。
すると、フレアの街の代表のような人が前に出てきた。
「よぉ、久しぶりだな。移籍に行ったあと1週間も会えなかったからな」
なんとその男は陽炎達がフレアの街に来てギルドで喧嘩をふっかけてきた人だった。
「あぁ、お前か。で、何だ?俺達を処刑でもするか?」
「・・・・・・・・・俺的にはお前達に何か事情があるのだろうと思っている。だが、やはり皆は許さなくてな」
男は突然語り出した。陽炎はテム達3人を何時でも抱えられる位置に立った。恐らくだが、陽炎の予想は当たっているだろう。そして、男は話を続けた。
「だから、その、何だ?多数決をとったらな一対全員でな・・・お前らを処刑する!」
「やっぱり!テム、ディリー、ルーシャ、逃げるぞ!」
『う、うん!』
陽炎は3人を抱くとその場から飛び退いた。
「はぁっ!陽炎くん、足場を生やしたよ!」
「よくやった!”ブリザードフラワー”」
フレアの人々はディリーが生やした木の上を走って陽炎達を追いかけてきた。陽炎は氷の球を木に向かって投げると地面に埋まってしまった。
『待てぇぇぇぇぇぇ!逃げるなぁぁぁぁぁ!』
後ろからは罵声が飛んでくる。しかし、陽炎が埋めた氷の球の上に来た途端氷の花が生え全員足が凍りついてしまった。
「よし、このまま逃げるぞ。”グロウアップ・・・”」
陽炎は古代樹を生やすと3人をその中に入らせようとした。しかし、その時何かが聞こえた。
「赤き宝玉に宿りし力よ今1度この身に力を・・・”ファイアーバレット”」
「蒼き宝玉に・・・」
「黄色き宝玉に・・・」
街の人々はこぞって何かを唱えている。これはやばいなぁ・・・すると、それぞれの属性を持った魔法が飛んできた。
「”ブリザードワン”」
氷の壁を作り魔法は防いだが、やはり人が来ている。陽炎は天高く飛び上がると背中の剣に手をかけた。
「よし!これで終わりだ!”炎流・紅蓮血斬”」
ディリーの生やした大樹は両断された。先端側にいた人は落ちていく大樹にしがみつくことしか出来なかった。陽炎は空中を蹴ると自分の生やした古代樹に向かって飛んだ。落ちていく人々を横目に陽炎は古代樹の中に入った。
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