第26戒 親子対決
「死ねぇ!」
「何故そうなる!?今の話からどうしてその流れに変わる!?」
陽炎の父はどういう訳か機嫌を損ねたらしい。自暴自棄になりながら斬りかかってきた。
「あっ、あっ・・・」
テム達は慌ててなにか言おうとしている。
「どうした?なにか言いたいことがあるのか?」
陽炎は素直に聞いた。すると、テムが急に大声を出した。
「あの!親子で戦うのは良くないよ!それも、殺し合いなんて余計ダメだよ!」
「テムの言う通りよ。陽炎くん、お父さんとは仲良くするものよ」
「かげくん、ここはテムちゃんの言う通りにした方が・・・」
「黙れ!」
突然陽炎が大声を出したのに3人はびっくりした。すると、陽炎はこちらを見て語り出した。
「普通に黙れ!今はマジでやばい!話とか聞いてられないんだよ!てか、ちょっとは手伝え!」
陽炎は半ギレで話す。
「だって、その中に入れないんだもん!」
確かに、と思った。この戦いが激しくなりすぎたのか見えない風の幕のようなものができている。
「それでもなんか掩護はしろよ!まじでやばいんだっての!」
陽炎はそう言いながらも普通に攻撃を防いでいる。そのため、テム達は遠くからただ見ているだけだった。と、その時、ふと疑問に思った。
「なんで親子で戦わないといけないの!?ねぇ、何があったの!?教えてよ!」
「俺も分からん!強いて言うなら、ちょっと喧嘩したくらいだ!」
「それだけ!?絶対他にあるでしょ!思い出しなよ!」
「無茶言うなよ・・・あ・・・思い出した。”炎流・紅花”」
陽炎は父の攻撃を弾くと、一旦その場から離れた。
「分かったぞ。アイツが俺にな、お前は陽炎の名前を次ぐにふさわしくないとか言ってきたんだよ。多分それだ」
「何それ・・・」
テム達は呆れて何も言えなくなった。
「ま、俺には・・・あぶねっ!関係・・・うわっ!ない事だね」
陽炎達が話しているところを陽炎の父は攻撃を仕掛けてくる。陽炎はそれをスレスレで躱しながら話を続けた。
「じゃあ、仲直りすればいいじゃない」
「それが・・・」
「それは出来ないんだよ」
突如誰の声とも分からない声が聞こえた。しかし、陽炎だけは誰の声かわかった。
「やっぱり来てたのか・・・じいちゃん」
陽炎がそう言うと、奥の方から仮面の男がでてきた。
「久しぶりだな我が息子の子供よ」
「いや、そういうのいいから。めんどくさいんだよ」
「何!?息子よ、貴様私の父に向かって何を・・・」
「息子って・・・今お前はその息子に攻撃してんだぞ。それに今じいちゃんの顔みてわかったよ。本当は帰れるんだろ。日本に」
「っ!?・・・なぜ、そう思う?」
「次元魔法・・・そう言ったらわかるだろ」
「何!?なぜ・・・」
すると突然ディリーが話に割り込んできた。
「ちょっと、話がついていけないんだけど」
ディリーはそんなことを言う。絶対話についていけるだろ、と思いながら3人の元に行くと壁際まで下がらせた。そして、相手に聞こえないように言った。
「皆、聞いてくれ。どうやら俺の家族がこっちの世界に全員来てるみたいだ」
「こっちの世界って・・・どっちの世界から来たの?陽炎くんも、家族も」
「言ってなかったっけ?俺は異世界から来たんだよ」
「・・・やっぱり・・・」
「なんだ、驚かねぇのかよ」
「当たり前でしょ。だって、こっちの世界の常識を知らなさすぎなのよ」
思い切って言ったが、どうやらお見通しだったようだ。しかし、こっからが本題である。
「まぁそれは置いといて、俺は今から父さんを殺さないといけない」
「え?なんで?」
「なんでって・・・向こうは殺そうとしてんだぞ。放っておいたらどんなことになるかわかったもんじゃない」
陽炎は当然のことを言ったつもりだった。だが、他の人からすれば親を殺そうとしている。テムは必死でとめた。
「そうは言っても、家族なんでしょ」
「家族って言っても別にどうも思わねぇし、それに、帰れるなら帰って来いよって話なんだよ。もしあいつが姉貴なら次元魔法で帰れるはずなんだ。俺を呼んだようにな」
「・・・でもしなかった。それも関係あるの?かーくん」
「そゆこと。それに、今更出てこられても俺の異世界ライフを壊さないで欲しいんだよなぁ。じいちゃんだって、別に仲良いわけじゃなかったし、唯一名前が一緒なだけだな」
陽炎の口から出たことは驚きの事だった。
「え?どういうこと?」
「俺の名前とじいちゃんの名前はかげろうって言う。それだけじゃない・・・じいちゃんのじいちゃんもそのまたじいちゃんもだ。それはそれで気持ちが悪い」
「気持ちが悪いって・・・親の悪口は言っちゃダメだよ!あと、まだ私達に話さないといけないこと残ってるでしょ。勝って帰ってきたらちゃんと言ってよね」
「え?・・・知ってたのか?」
「当たり前じゃん。・・・あまり気負いすぎてもダメだよ」
「ふっ、お前から言われるとはな」
「どういうことよ!」
「いや、テムじゃなくてルーシャからだと思ってたけだよ」
「む〜〜〜!」
テムは頬を膨らませて怒った。それを見て陽炎は笑ってしまった。
「フフフ、なんか元気でたよ」
「それならよかった♡」
突然陽炎に向かって上目遣いになった。さらに妖艶な雰囲気を漂わせている。陽炎は何も言えなくなって、思わず胸を触ってしまった。
「にゃっ!」
「あ、悪い。ついやっちまったわ」
「む〜!」
また頬を膨らませて怒った。陽炎はその光景を目に焼きつけると不敵に笑った。運がいいことに、家族は皆このやり取りが終わるまで待ってくれていた。いや、待っていると言うより傷を治したり、魔力を回復している。
「それじゃあ続きをやるか」
「もういいのか?お別れは済ませておけよ」
「影無よ、わしは先に最下層で待っておる」
「すぐに行くよ親父。この我が一族の恥さらしを殺してから・・・」
「いいから、そういうの。ダルいんだよ。”炎流・遠炎”」
「なっ!?”海太刀流抜刀術・開裂”」
陽炎の放った炎は父の前で切り裂かれた。
「・・・父さん・・・いや、影無!俺はお前らに邪魔されるつもりは無い。そもそも、お前の方から俺を突き放した。それが事実だ!それに、その技を見てわかったよ。お前らは俺抜きで何かしらの組織を作った。だから俺はお前の仲間になる気も、お前に殺される気もない!」.
「そうか・・・なら、こっちも本気で行かせてもらう。それに、どれだけお前が強かろうがお前は俺には勝てん」
「いいや、勝てるさ。俺は別に弱くないし。あんたほど馬鹿じゃないからね」
「その考えが軽率なのさ・・・俺は完璧だ!お前みたいに不完全では無い!お前は俺には勝てん!」
影無は大声でそう言った。しかし、陽炎は呆れていた。それは陽炎だけでなくテム達も同じだった。
「いや、自分のことが完璧だと思ってんの?アホか、お前は」
「黙れ!”一突”」
目にも止まらぬような速さで突きを繰り出した。陽炎はわかっているかのように避けたが少し掠ってしまった。
「あ〜あ、お気に入りの服が」
「よそ見してると命を落とすぞ!”暗黒落とし”」
やはり陽炎はわかっているかのようにスレスレで避ける。それでも、影無の猛攻は続く。すると、後ろの方でテム達が何かを言っている。
「かーくん!もう隠さなくていいのよ!」
「陽炎くんがこっそりしてたこと、全部知ってるんだから!」
「かげくん、大丈夫だよ!」
「いや、何が?・・・とか聞いたらまた怒るんだろうな」
陽炎は小さくそう呟いた。
「何をよそ見している!”黒太刀”」
今度は陽炎は刀で弾いた。すると甲高い音が鳴り響いた。陽炎はすぐに後ろに飛ぶと距離をとった。
「・・・そろそろ解析終了・・・」
「何を言っている!?」
「なんでもないよ。”雷流・轟雷”」
陽炎が刀をひと振りすると無数の雷が現れた。それは四方から影無向かって飛んで行った。そして、直撃した。したはずだった・・・
「何かおかしい・・・っ!?まずい!」
陽炎は慌ててテムたちの元に戻ってきた。戻ってくるなり全員を1箇所に集めた。
「どうしたの?」
「お前ら俺の後ろに来い。”領域””多重防御結界”」
「ちょ、ちょっと!急に何よ?」
「陽炎くん、話してくれないと分かんないよ」
「お前ら聞け。今から大技が来る」
「え!?なんで分かるの。かげくん見たの?」
「なぜ見たって決めつける・・・見ては無いが、おれの技が消された」
陽炎は話しながらも結界の数を増やし、壁を生成していった。
「いいから!とりあえず自分のみは自分で・・・」
「”暗黒波動”!」
陽炎の話は途中で遮られた。それと同時にとてつもない黒いオーラと波動が向かってきた。
「くっ・・・」
パリィ!その音が無数に発生した。陽炎の作った壁は瞬く間に壊され結界はたった一つ残して全て割れてしまった。とてつもない爆風が吹き抜ける。テムとルーシャは後ろに吹き飛ばされた。ディリーは陽炎にしがみついていたが耐えきれず飛ばされてしまった。
「クソッ!さすがに・・・」
「ハハハハハ!これで私の勝ちだ!」
影無凄まじい速さで剣を陽炎に向けて来た。陽炎は影無のとてつもない連撃を防ぎながらその場を離れた。
「まだまだぁ!”暗黒双剣連撃”」
なんと影無の剣が2つに別れた。影無は2つの剣を手にすると瞬く間に陽炎の体に連撃を与えた。
「くっ、舐めるなぁ!」
陽炎はなんとか刀で防いだ。しかし影無の連撃は続く。さすがに陽炎も全て防ぐことは出来なかった。陽炎は右目を切り裂かれてしまった。右目を閉じると陽炎は残りの力を振り絞って影無の間合いに入った。
「っ!?まだ・・・こんな力が!?」
「そんな3流の言うようなこと言うなや!”水流・逆巻く激浪・渦”」
渦状を描いた逆流の波は影無の体に大きな傷を作った。
「ちっ、それだけか・・・」
陽炎は再び影無を睨んだ。
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