第27戒 終結・・・その後
2人の実力は拮抗している。しかし、片目しか使えない陽炎の方が押されている。影無の連撃に手、足、胴それぞれに傷ができていく。
「陽炎くん!」
ディリーは目に涙を浮かべながら陽炎の名前を呼んだ。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
「頭おかしいのかよ、こいつ・・・”雷流・五雷撃”」
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
全ての攻撃はかき消された。影無は依然として笑っているだけだ。
「きた!”霊光・幻惑の修羅”」
陽炎は隙をついて攻撃をした。影無はかわしたがこの攻撃はただの攻撃ではない。影無がかわしたところ陽炎の刀がぼやけると突然伸びた。かわしきれなかった影無の腕を切り落とした。
「ぐあぁ!」
陽炎はすぐに後ろに飛び退いた。テム達がそこに駆けつけてきた。テムは駆けつけるなりすぐに回復を始め、陽炎の右目に布を押し当てた。
「かーくん大丈夫?今すぐ回復するね」
「ありがとう」
「でも、かげくんのこの目は治んないよ」
「気にしなくていいさ。ルーシャも出来るだけでいいよ」
「うん・・・」
影無はずっともがいている。それもそのはず、陽炎の使った技は当たれば幻の痛みを感じることになる。
「ごめんなさい。私たちがもっとしっかりしてれば陽炎くんの目も無事だったのに・・・」
「そんな落ち込むなよ。目を1つやられたくらいだろ。俺はお前らが無事ならそれでいい」
「陽炎くん・・・♡」
ディリーの顔が明るくなった。するとテムとルーシャもこっちを見ている。・・・今そんな状況じゃないんだけどなぁ・・・
「わかったよ。・・・お前らなぁ・・・」
陽炎は2人の頭を撫でた。しかし、2人は満足しない。猫のようにまとわりついてくる。更には、目をキラキラさせてこっちを見ている。・・・はぁ・・・
「1人ずつな。こっち向いてごらん」
陽炎はテムの頬に手を当て目を合わせた。そして、そのまま唇を合わせた。テムも気持ちよさそうに目を閉じた。その後ルーシャも同じように唇を合わせた。ルーシャも同じく気持ちよさそうに目を閉じた。
「くちゅ♡くちゅ♡・・・ぷはぁ♡」
「どうだ?」
「ん・・・美味しい・・・」
「それは良かった。俺も美味しかったよ」
『ん♡』
陽炎達の間に暖かい空気が流れ出した。しかし、突然陽炎が振り向くとそこには静かに立ち尽くす影無がいた。
「もうかげくんの勝ちだね」
「トドメをさしたら?」
2人は勝ち誇っている。ディリーも少し警戒はしているがやはり勝った気でいる。しかし、陽炎は違った。
「・・・何故だ?なぜ立っている?・・・あの技を喰らって立っているやつなんていないぞ」
「うぅぅぅぅ・・・」
「”拘束”」
陽炎は念の為に捉えることにした。しかし、出来なかった。鎖は影無に触れた途端破壊された。
「まずいっ!”樹木殺”」
陽炎は急いで古代樹を生やし影無を囲んだ。古代樹は影無に巻き付くとそのまま締め上げていった。
「終わりだ」
陽炎は静かに手を握った。これで潰れるはず・・・しかし、潰れることは無かった。古代樹はバラバラに破壊され一瞬で影無の姿は消えた。
「どこに・・・っ!?」
気づいたら後ろにいた。陽炎は影無の剣をギリギリでかわした。しかし、その時に右肩に影無の剣が刺さってしまった。
「クッ・・・」
「陽炎・・・何故だ?何故だ!なぜ私がここまで追い込まれている!?」
影無は急にそんなことを言い始めた。
「知るか、お前が弱いからだろ」
「違う!違う!違う!」
「違くない!そうやって今も強い振りをしている!弱いんだよ、お前は!」
「ガァァァァ!」
影無はまるで獣のように吠えた。しかし、なかなか攻撃はしてこない。
「・・・やっぱ、使わなきゃならないのか・・・」
陽炎はテム達に目をやった。皆は期待の目で見ている。いや、よく見たら俺が何を隠しているのかも全てお見通しのようだ。陽炎は決心した。ここでばらすことを・・・
「さすがにここまでやられたら使わない訳にはいかないよな」
そう言って右目を抑えていた布を外し、右目を開けた。するとそこには潰れていたはずの目はなく、なにか紋様が浮かんだ碧い目があった。
「お前には教える必要も無いな。もう死ねよ。”雷流・雷突”」
陽炎は影無を右目で見ると、速攻で胸を突いた。すると影無は身体中から血液を爆散させだし、もがき始めた。
「初めてやったがエグイな・・・さよならだよ、父さん・・・」
そのまま影無は身体中の血液を出し尽くし、絶命した。
「はぁ〜、やっと勝った・・・」
「かーくん!」
陽炎が疲れきって座り込むと、テムが抱きついてきた。
「うぉっ・・・よしよし、心配かけたな」
「ふにゃあ〜」
陽炎は優しく頭を撫でた。テムは猫みたいな声を出して膝の上を転がっている。そこに、ディリーとルーシャも来た。
「大丈夫!?」
「陽炎くん傷が・・・」
陽炎はそう言われると体を見渡した。確かに傷の量が半端なかった。しかし、突如不敵な笑みを浮かべた。
「もう、隠す必要もなくなったな」
そう言うと怪我が急に治りだした。体中の傷は瞬く間に治ってしまった。
「なんで!?」
「これが俺の本当の力だよ。今から真実を話すね・・・。このダンジョンに入ってからのことだけどな、俺ずっと魔物の肉を食ってきたんだ。お前らはディリーがはやす木の実とか食べてただろ。それの代わりが魔物の肉だったわけだよ」
「・・・でも、なんで死なないの?」
「魔物の肉って食べたら体の細胞が壊されるってよく言うのよ」
「超回復で何とかなったな・・・」
3人は呆然とした。
「陽炎くん・・・超回復じゃ、回復が追いつかなくて死んじゃうんだよ・・・」
「へぇ〜・・・ヤバいなそれは」
陽炎は他人事みたいに言った。更に身体中を見て回ってなんともないと言い出した。
「そんな・・・他人事みたいに言って・・・もぅ」
「まぁ大丈夫なんだし良いだろ」
「む〜!もう知らない!」
「悪い悪い」
陽炎はテム達をなだめると影無の近くに行った。近くに来ると影無は動き出した。どうやらまだ生きていたらしい。しかし、傷は深く思うように動かせない。
「父さん・・・なんでこんなことをしたんだ?」
「かげ・・・ろう・・・お前に1つ・・・言っておかなければ・・・ならない」
「なんだ?」
「家族が・・・皆来ている・・・あいつら・・・を・・・よろしく・・・頼む」
影無はそこで本当に命を落とした。完全に動かなくなった影無の体を見て陽炎は言った。
「嫌に決まってるだろ。・・・でも、最後ぐらいは聞いてやるよ。父さんの頼み」
そう言って陽炎は影無の体を持ち上げた。端の方に持っていくと地面を破壊して穴を作った。そして、そこに埋めると手を合わせて拝んだ。テム達も見習って拝んでいる。
「・・・かーくん、これからどうするの?」
「まずはこのダンジョンの攻略が先決だ。家族のことはそれからどうにかしよう」
「今のところは誰がわかっているの?」
「姉貴とじいちゃんだけだ。どうせそのうち分かるだろう。気にするな」
「うん・・・」
どこかくらい様子で返事をした。陽炎はそんな3人を見て階段のある方に向かって歩き出した。
「さ、進むぞ。まだ半分だ」
するとそこであることに気づいた。この部屋の真ん中に何かが落ちている。近寄って見ると、それは剣だった。しかし、見たこともない剣だった。影無の使っていたやつとは違う。
「これは?」
「知らな〜い」
陽炎はその剣を見渡した。不思議な剣をだ。黒っぽい紫に何かしらの模様が着いている。更には何かオーラのようなものまで出ている。隣には鞘と手紙が落ちていた。
「なぜ手紙が・・・」
陽炎は手に取って読んだ。するとそこにはろくなことが書かれてなかった。
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