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第23戒 新階層のトラブル

 猫の猛攻は続く。どれだけかわしても次の攻撃が来る。すれすれのところでかわしてはいるが押されている。


「テムは右から炎魔法、ディリーは木の根を生やして猫を固定してくれ!」


 テムとディリーは言われた通りに動いた。しかし、状況は変わらない。


「クソッ、ルーシャを抱えたままだと動きずらいっ」


「あ・・・その・・・」


「ん?ルーシャ、お前が悪い訳では無いよ」


「そう・・・気を使われて逆に辛い・・・」


「悪いな、だが、そう気を使ってもられん」


「気づかいなしでそれだとキモイわよ」


「・・・そうか、そんなことが言えるくらい余裕なら・・・」


「え?ちょっと待って!嘘だから!謝るから!」


 ルーシャのそんな言葉は通じない・・・


「自分で戦えやぁ!」


 陽炎はそう叫ぶとルーシャを投げた。


「待ってぇぇぇぇぇ!」


 ルーシャのそんな悲痛な叫びは聞き届けられなかった。猫はすかさずルーシャに向かって爪を立て切り裂こうとしてきた。陽炎はその隙を見逃さなかった。


「はい終わり。”水流(すいりゅう)(さざなみ)”」


 猫は首を切り落とされ動かなくなった。


「よしっ、終わったよ」


 その時の陽炎の笑顔は凄かった。凄く清々しい笑顔でこっちを見てきた。ルーシャは投げられた怖さで震えていたが、その笑顔が怖すぎてさらに震えが止まらなくなった。


「どうした?」


「え、いや・・・その・・・」


「さ、行くぞ」


「う、うん・・・」


 陽炎は階段に向かって足を進めた。しかし、後ろから話しかけられ立ち止まった。後ろを振り向くと、テムが深刻な顔をしてこっちを見ていた。


「どうした?何か悪いものでも食ったか?」


「そうじゃないの・・・かーくん、ひとつだけ忘れてない?」


「な!?」


 バレた・・・と思った。自分が魔物の肉を集めて食っていることがテムにバレた。そう思った。しかし違った。


「かーくん・・・私のパンツを作ってくれないかな」


「は?」


 深刻な顔から思いもよらない言葉が発せられた。そして思い出した。16階層でテムがおもらしをしたことを。


「あ〜あれか、そういやどうしてたんだ?今まで」


「・・・パン・・・」


「パン!?お前そんなことにパン使ったのか!?」


「違うわよ!・・・その、えと・・・あのね、ノーパン・・・なんだ・・・」


「はぁ!?」


 テムは頬を赤らめながら言った。それに、自分で言ったことが恥ずかしかったのか、更に顔を赤くして手で覆って隠してしまった。


「テム・・・もしかして、今までずっとそうだったのか?」


「そうよ!それに、私の履いてるズボンのベルトが壊されたの。だから、ズボンが落ちそうなのよ・・・」


「はぁ、”生成(せいせい)”・・・ほらよ」


 陽炎はパンツを作った。ごく普通のパンツだ。しかし、それは日本の中で・・・それも日本のキャが頭文字に着く店で・・・


「な、なに・・・これ?」


「フッ・・・フフフフフ。それはな、俺のいた国で神聖な防護服とされるTバックと言われるものだ!アハハハハハ!」


「変態!こんなの履けないでしょ!ノーパンより恥ずかしいわ!」


「じゃあ返してもらおう!その布は今俺の服の切れた部分の修正に使わしてもらうよ!」


 テムは顔から火が出そうなほど真っ赤になった。それでも、ズボンとパンツだけは抑えている。


「あ〜あ、ベルトも作ったのに手が塞がってて渡せないな〜」


「う・・・この悪魔!鬼!鬼畜よ!き!ち!く!」


「なんとでも言え!俺はお前にプレゼントをしようとしてるだけだからな。いらないなら捨てちゃうけど」


「う・・・」


「どうする?ノーパンかTバックか。どっちだ?」


「う・・・じ、じゃあTバックで・・・」


 そう言ってテムはそそくさと着替え出した。たまたま、ガン見した陽炎は、たまたまテムのかわいいお尻がたまたま見えた。あくまでもたまたまである。決してわざとなどではなくたまたまなのである。


「陽炎くん誰に言ってるの?」


「え?いや、ちょっとね」


「フゥ〜ン・・・ちょっとねぇ〜」


 陽炎は何とか誤魔化して次の階層に向かって足を進めた。


 ━━21階層目・・・


 この階層から雰囲気が変わった。さっきまでは洞窟のような感じだったが開けた場所になった。さらに、地面には草木が生え、虫が飛んでいる。


「急に雰囲気が変わったな」


「凄い・・・これほどまで変わるなんて」


「かげくんは凄いよ。まだ、1日も経ってないのにもう21階層まで来てるんだもん」


「そんな凄いか?」


「うん」


 皆それぞれ意見があるようだ。皆の話を聞きながら更に足を進めた。


 ━━24階層・・・


「だんだんジャングルになってきたな。迷わないように気をつけないとだな」


 ここに来るまでずっと林の中のような感じだったが、先に進むにつれてどんどん生い茂って行った。更に木のサイズもかなりでかくなっている。


「ここじゃ炎系統の魔法は使えないな」


「魔物はどうやって倒すの?」


「炎系統の魔法以外で倒せよ」


「分かったわ!」


 陽炎はテムの返事を聞いて、多少の心配はあったが信じることにした。しかしそれが失敗だった。それから少し歩くと植物の魔物が現れた。陽炎は切りに行こうとしたところをテムが炎魔法を使って倒した。そう、炎魔法で・・・


「バカっ!あれだけ炎魔法は使うなって言っただろ!」


「あ、忘れてた・・・」


 あっという間に炎は燃え広がった。


「あぁもう!”ウォータードーム”」


 陽炎は炎を水のドームで囲んで消そうとしたが、日の勢いが強く蒸発してしまった。


「ちっ、逃げるぞ!」


『わ、分かった!』


 4人は炎と逆の方に向かって走り出した。走って逃げていると右側に下へ降りる階段を発見した。火がすぐそこまで迫っている。間に合うかどうか瀬戸際なところだ。しかし、陽炎は迷わず階段に向かって走り出した。3人も陽炎を見て後ろから慌てて追いかけた。


「・・・あと少し・・・」


 そして、ギリギリのところで階段に滑り込んだ。あとの3人もギリギリで滑り込むことに成功した。


「はぁはぁ・・・疲れた・・・」


「はぁはぁ・・・ごめん・・・なさい・・・」


「あのなぁ・・・」


 陽炎がなにか言おうとすると横からディリーが大声で割り込んできた。


「あのねぇ、私死ぬかと思ったのよ!もうちょっと考えて魔法を使ってよ!」


『・・・え?』


 3人の声がハモった。皆陽炎がいつも通り説教をすると思ったが、まさかのディリーが先にキレてしまったのだ。3人は初めてディリーがキレたのを見て固まってしまった。しかし、ディリーの怒りは収まらない。


「ねぇ、テムは知ってるの!?私、炎にはめちゃくちゃ弱いんだよ!氷にもあまり強くないんだよ!なのになんであんなことやこんなことを引き起こすの!?もしかしてわざとやってる!?」


「い、いや・・・わざとじゃないよ・・・」


「それならもうちょっと学習してよ!本当に死ぬかと思ったじゃん!それに、謝るならもうちょっと誠意を見せてよ!」


「おい、ディリー・・・それぐらいに・・・」


「陽炎くんは黙ってて」


 ディリーに睨まれ、思わず固まってしまった。そのままルーシャのところまで戻り小さくなってしまった。


「誠意って、私だってちゃんと謝ってるよ!」


「いいや違う!ちゃんと謝るなら裸で謝るのが普通でしょ!裸で謝ってよ!」


『・・・は?』


 後ろの方で陽炎とルーシャが素っ頓狂な声を上げた。だが、誰でもこう思うだろう。何言ってんだコイツと。


「え・・・いや・・・いやだよ・・・こんなところで服を脱ぐなんて・・・」


「そんなこと言わないで早く脱ぎなさいよ!ほら、は!や!く!」


「そ・・・そんな・・・嫌だよ・・・やめてよ・・・」


 とうとうテムが泣き出してしまった。陽炎はため息をひとつ吐くと2人の間に割り込んだ。


「いい加減にしろ、2人とも。1度話を整理しろ。このまま仲が悪くなられても困る」


 陽炎の介入によって2人は1度落ち着きを取り戻した。しかし、それからが長かった・・・

読んでいただきありがとうございます。

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