29……いろいろなのっ
マホウツカイ見習いの少年リトの元に、ある日、竜の少女ファナが墜ちてきて。
飛べなくなってしまったらしいファナに、リトは「ここで過ごすか」と手を差し伸べた。
そうして2人の生活は始まりを告げ――
♪
ファナはご機嫌だった。村長の家に行く前の緊張が嘘のようだ。リトとシエルが並んで歩く前で元気いっぱいに手を振っている。
「嬉しそうだな」
「えへへ、レイミちゃん」
「そういえば、ファナの最初の友達か? 見た目だと」
「うん♪ リトはリトで、シエルはお姉ちゃんで、リトのお嫁さんになるんだよね? だから、二人とも家族なの。だからだから、レイミちゃんが最初の友達なの」
ファナは竜の子供だ。ある日、空から降ってきたファナを受け止めたのがマホウツカイ見習いであるリトだった。そして彼は、飛べなくなったと嘆くファナに居場所を提供した。それから数日が経ち、街に出ていた村長が戻ってきたところで挨拶に行ったのだった。
「懐かしいなぁ。わたしも小さいときは村長さんに憧れてた」
そうつぶやくのはシエル。彼女のリトの幼馴染だ。
「そういうもんか? かっこいいとは思うけど」
「あれくらいかっこいい女性なんて滅多にいないわよ。この村だとコトリさんとか」
果たしてあの年齢不詳の幼女村長を女性と呼んでいいのかは別にして。
「……リトリト。小鳥さん?」
「ほら、前行っただろ、服屋さん。あのマジョだよ」
「あ、あのお姉さん♪」
コトリさんはマホウツカイではないが、外見と性格からマジョと慕われて(?)いる。
「レイミちゃんの髪の毛きれいだったな。いいな。星光色」
「ん? ホシヒカリ色?」
「あ、うん。リューはね、えっと……自然の生き物だから。ヒトとは違う色の……表現? を持ってるの。言ったことなかったっけ」
「ないな。教えてくれたりするのか?」
リトが訊けば、ファナは目を細めて、「もちろんっ」と笑顔を浮かべた。
♪♪
「うんとね、リトの髪はあったかい山土色なの。それから目は朝光色」
とび色の髪と、明るい目の色を指して、ファナは答えた。
「山土色ねえ。普通の土色とはどう違うんだ?」
「ぜんぜん違うよ? 土は、粗土色とか砂土色とか秋土色とかいっぱいあって、山土色は山木肌色に似てるんだけど、ちょっと違うの。それにリトの髪はあったかい山土色だもん」
「「??」」
満面の笑みで説明するファナに対し、リトたちはうん? と首を傾げた。
♪♪♪
「えっと……わたしは?」
「シエルはね。泡水色の髪に、藍星色の目なの。リボンは高空色だよっ」
リトがシエルの方を見てつぶやいた。彼女の髪は淡い水色のポニーテイルで、留めているリボンは青色だ。瞳は気にしたことはなかったが、紺色っぽい青色をしている。
「同じ青でもいっぱいあるんだな」
「うん! シエルの蒼色はどれもきれいな色なの。川の色と空の色と星の色」
♪♪♪♪
「じゃあ、ファナはどんな色なんだ?」
「えっ、ファナ?」
「ああ。ファナの髪とか目にも色があるんだろ?」
「えっと…………うんとね、決まってないの」
「決まってない?」
「その、あんまり自分にきれいな色つけたりするの、だって照れくさいから……」
両の手を居心地悪そうにお見合いさせるファナ。彼女を見て、リトとシエルは顔を見合わせ、そしてうなずいた。幼馴染ゆえの無言の意思疎通だ。
「紅葉――うーん、そうねえ。秋葉――秋っ葉色っていうのはどう?」
「あきっぱ色?」
「いいな。じゃあ、自慢のしっぽと羽は……うん。夏木葉色だ」
赤毛が秋の葉。深緑色のしっぽと羽が夏の葉の色。美しさと力強さを表した色だ。シエルとリトの言葉を聞いて、ファナがぽかんと薄く口を開けた。
「でもって、ファナのくりくりした目は」
「夜空色ね。きれいな藍色の空の色。星が浮かんで、朝陽でより深く染まる色」
無言で二人の言葉をかみしめ、やがてファナはにっこりと笑顔を返した。
「ファナの目の色、二人とお揃いなのっ!」
最後までお読みいただきありがとうございます.
本作は,まったり日常モノです.
気が向いたときに,好きな話から読んでいただけます.
『どら×ひび』でファナを考えていたとき,
かなりの初期段階で思いついた話です.
そのうち,もっといろいろなのっとか書きたいです.
それでは次回,
『30……三人でお風呂♪』
女の子同士のお風呂にする予定がファナが許してくれませんでした.
よろしくお願いします.
今後も二人の行く末を見守っていただけると幸いです.




