30……三人でお風呂♪
マホウツカイ見習いの少年リトの元に、ある日、竜の少女ファナが墜ちてきて。
飛べなくなってしまったらしいファナに、リトは「ここで過ごすか」と手を差し伸べた。
そうして2人の生活は始まりを告げ――
♪
マホウツカイ見習いの少年リトの家。居候中の竜の少女ファナと幼馴染のシエルとの夕食を終えて。リトが食器を洗っていると、ファナが服の裾を引っ張った。手にはパジャマが見える。
「いいぞ、入ってきて」
「……えと、今日はシエルと一緒に入るの」
「ああ、そうなのか」
わざわざ報告に来るファナの律義さに微笑ましいものを感じて、リトは口元を緩めた。
「うん。それでね。リトも一緒に入ろ?」
「ああ――って、待て」
「うん! リトが洗い物終わるまで待つの」
きらきらと笑顔を浮かべてうなずく。
「じゃなくて。一緒に入らないからな」
「どうして?」
「どうしてって――そりゃ……シエルと一緒に入るのはまずいだろ。女の子なんだし」
「でもファナも女の子だよ? リューだけど」
以前、ファナがどうしてもと言って、押し切られるまま二人で風呂に入ったことがあった。子供とはいえ、多少は身体が女の子っぽく成長している彼女との風呂は、なかなかに気まずいもので。リトは見まい見まいと目をそむけているのに、ファナの方からくっついてくる。
ファナは男女の性別にほとんど頓着しないのだ。ファナが話す様子から、子を産めない自身は雌と見なされまいと思っているらしく、そんなところにリトは人と竜の違いを感じていた。
もっとも、裸をじっと見られたりしたときの羞恥心は持ち合わせている。
「……だめ?」
「いや、だめじゃないんだが。よくもないというか」
「――わかった。待ってるからっ」
しっぽを振りながらぱたぱたと小走りにいなくなったファナの背中を見送る。
「……ま、シエルが注意してくれるだろ」
♪♪
「おかしい」
目の前が真っ白。リトの視界はタオルで作った目隠しで遮られていた。
「なぜ俺はこうされてまで一緒に入らないといけないんだろう」
「ぶつぶつ言ってないで。頭流すから」
シエルの声が背中から聞こえ、次いでシャワーが掛けられる。このおおざっぱな掛け方はきっとファナだろうとリトは思った。彼はイスに座らされ、二人に身体を洗われていた。
――ファナのお礼なの! などと言われてしまえば、断る気も失せた。なのに、
「シエルくすぐったい」「がまんがまん」「うう、はんげきっ」「ひゃうっ――えい」「ふにゃっ」
今度はファナとシエルが洗いっこをして、一人、浴槽に肩まで浸かっているリトのことなど頭の片隅にすら残っていないように感じた。
リラックスできるかっ、リトのぼやきをよそに、二人はきゃいきゃいと洗いっこを続けた。
♪♪♪
そしてリトはのぼせた。何十分も浴槽に放置されたせいだった。
「……ごめん」
シエルの謝る声が頭上から降ってくる。リトは今、柔らかな枕に頭を載せて休んでいた。その枕は、正しくは膝枕と呼ばれるものだ。
「ま、いいよ。シエルにこうしてもらえると……まあ、なんていうか」
「膝枕くらいならいつでもするけど」
「まじ?」
「……目がえっちだからやめた。もうしない。またリトがのぼせたときまでしない」
と、幼馴染の少女はくすくすと笑って、リトの頭を子供にするように撫でたのだった。
♪♪♪♪
シエルを家まで送って(と言っても歩いて片道五分だ)戻ってきたリトを、ファナはにこにこ顔で出迎えた。短い付き合いだが、リトは彼女がなにかを企んでいると踏んだ。
「えへへ、リト、こっちこっち」
ファナに呼ばれるがままに膝枕される。シエルとはまた違う感触の一方で、鼻に届くリンスの香りは同じもので、さっきのシエルを思い出してどきりとした。
「……むぅ、リトのえっち」
ファナに指摘され、リトはため息をついて起き上がった。そしてファナの頭を抱き寄せて、自身の太ももに頭を載せる。いい位置に頭があるので、ついでと髪を撫でれば、
「ふふ、リトのひざまくらっ♪ ねえリト、また入ろうね?」
「ファナがのぼせるくらいに長く、な」
最後までお読みいただきありがとうございます.
本作は,まったり日常モノです.
気が向いたときに,好きな話から読んでいただけます.
お風呂といいつつ,メインは膝枕.
するのもされるのもどっちも嬉しい,という話でした.
獣耳・しっぽ娘なら毛づくろいとかあるんでしょうが…….
やはり出すべきか.
それでは次回,
『どら×どら1……ヒトクイ?』
番外編.ファナの村でのお話です.
よろしくお願いします.
今後も二人の行く末を見守っていただけると幸いです.




