瀕死の狼
孕んだ雌や子犬達を集団で守り戦う仲間達に合流した俺達は狼の群れとひたすら戦い続けた。
やがてリーダーが消えた事を感じ取った狼達は次々と戦いの場を離れ山の中に去っていった。
戦いは終わった。
負傷した犬の数は多かったが、致命傷を負った者はいなかった。
集団で上手く立ち回われたからだ。
数日後、俺は周囲の異変を感じ取った。
山の木々。ざわめく風。辺りを包む気配。
何かが違う。
俺は群れを離れ、探索を始めた。
河原で俺は異変の正体を見つけた。
大きな狼が川べりにうつ伏せていた。
動く気配が無い。
狼のリーダーだ。
俺が近付くと狼は俺を睨んで唸り声を上げた。
奴も俺が誰だか分かったのだ。
更に近付いても唸るだけで全く動かない。
左目は膿んでいて腹からは死臭が漂っていた。
全身に噛み傷が付いていた。犬ではない。狼の噛み傷だ。
俺との戦いに負け、傷を負ったリーダーは群のナンバー2に追い出されたのだ。
そして水を求めてここで力尽きた。
もう長くは保たないだろう。
俺のせいだ。
生きるための戦いだった。
だが哀れだ。
俺に胸に不思議な感情が溢れた。
俺は何故こんな事をするのだろう。
唸る狼に近付くと俺はそっと狼の体をなめ始めた。




