レビス
俺が村に行くと黒猫が子供達に囲まれていた。
「ネコちゃんだ」
「ネコちゃんだね」
「引っ掻くかな」
「引っ掻くかも」
黒猫は困た様子で俺を見ている。
「おい。走って来いよ。エルフの子供に囲まれちまったぜ」
俺が現れると、子供達は周りに集まり、黒猫を指さしては、色々と話し掛けて来た。
気の済むようにさせながらも、素っ気ない態度を取る。
子供達は次第に飽きてどこかに走って行った。
「ふー。全く驚いたぜ。それにしたって、こんな所にエルフの村が有るなんてな」
子供達から上手く解放された俺たちは姫の家に向かった。
この時間ならば姫は執務室に居るはずだ。
家に入ると姫が侍女と村の事についてしきりに話をしていた。
「あら、シェパードお帰りなさい。後ろの子はお友達」
姫を見た黒猫に恐怖心が走った。
「レビス。いや。まさか。まさかレビス王女殿下がここに」
姫が近づくと、黒猫は全身の毛を逆立てた。
「おい。お前。レビスって。姫を知ってるのか。それに何を怖がってるんだ」
「いや。怖がっちゃいないぜ。ただ、用心してるだけさ」
かなり警戒している。
「あら。怖がらなくても良いのよ」
「姫様。次に何と仰るか、私には嫌な予感が致します」
「私はこの猫を保護します」
「やはり。姫様。そんな気軽に」
「いいえ。気軽な物では有りません。この子は居場所が無いのでしょう。可哀想に。目の前に救える命が有れば私は救います」
「はぁー。姫様」
黒猫の緊張感が消える。
「ふう。どうやら、悪い奴では無さそうだぜ」
「当たり前だ。なぜ姫を警戒したんだ」
「言ったろ。エルフは狡猾なんだ。警戒もするさ。特に国を動かす奴はな」
黒猫はごまかしている。
姫を目にした一瞬、黒猫が発した恐怖心は相当に強かった。
明らかに姫を恐れた。
生命の危険を感じる程に。
有り得ないはずなのに。




