二人の王妃
「歩きながら話そうぜ。おいらは飯が食いたい。お前は休んだ方が良い」
黒猫は腰を上げ、俺たちは村に向かった。
「まあ。なんだ。この戦争が終わった時、二人の新国王が怒りにまかせに、人間奴隷宣言を出しちまったのさ」
世界を滅ぼしかねない事に対する怒りか。
何をしたのか知らないが、何にせよ、この世界を敵に回した事は間違いない。
「新国王の怒りと悲しみは相当な物だったぜ。何しろ二人の王妃が犠牲になって終わった戦争だからな」
何だって。この話し。
いやしかし、九百年前の戦争だよな。
「ともかくよ。人間もこのまま奴隷に甘んじる気はないと思うぜ。狡猾なエルフ。貪欲な人間。二種族間の確執は収まりっこ無いぜ」
「意外だな。エルフが狡猾とは」
村のエルフ達からは想像が付かない。
「それを知らないとは幸せな奴だぜ。宮廷なんかひどいもんだぜ」
黒猫はエルフの宮廷にいたのか。
やはりな。
「まあ、エルフと人間の確執についての話しはこんな所さ」
話も終わり、村が見えてきた。
しかし。
二つの王国。
二人の王妃。
この事が俺の頭に渦巻いていた。
俺は尋ねる事にした。
「犠牲になった二人の王妃なんだが。二人の名は、もしかすると花の名前じゃ無かったか」
俺の一言に黒猫の足が止まる。
「知ってるのか」
「ああ」
黒猫は足を止めたまま黙り込んだ。
何故だろう。
悲しみの感情が漂ってくる。
「可憐なるミニリス。情熱のグラビス。エルフの間では英雄扱いだ。全くよ。英雄だなんてくだらなすぎるぜ」
黒猫の様子。
まるで姫と同じだ。
「おっと、失礼したな。その通りだぜ。メドック家のミニリス王妃殿下とコロンバージュ家のグラビス王妃殿下だ。お前、よく知ってたな。そんな事よりよ。あれがお前の村だろ。さあ。飯だ」
黒猫は村に駆けて行った。




