戦争の記憶
「今お前は反乱と言ったが、あれは戦争だな」
俺は戦争と聞いて全身の毛を逆立てた。
胸の底から嫌悪感が湧き上がる。
「国同士の戦いだからな。エルフも人間も大勢死んだぜ。今から九百年前の話しさ」
嫌な話しだ。
犬の俺からすると気が遠くなる程昔の事だとしても。
こんな話しは早く切り上げよう。
「そしてエルフが勝利して、次は人間が奴隷か。くだらない話しだ」
「そうさ。理不尽な話しだろ」
黒猫もそう思うのか。
「まあ、エルフもあの時、冷静さを欠いてたからな」
冷静さを欠いた。
少し気になる。
「エルフの勝利がほぼ決まった時、窮地に立たされた人間はおかしくなっちまった」
この話しの流れ、嫌な予感がする。
「おかしくとは。何があった。人間はいったい何をしたんだ」
「お前の察しの良さには本当に驚かされるぜ。何をしたかって。世界を滅ぼしかねないことをしたのさ」
負けるくらいならば自滅の道を選ぶ。
なんとも無意味だ。
砲弾の音。
砲弾の音が止まない。
この戦争は終わっているんだ。おまえ達の国は降伏した。
なぜ戦いを止めない。
この戦いは全く無意味だ。
「おい。おいってばよ。聞こえてるか」
黒猫が心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。
「お前。大丈夫かよ」
「ああ。すまない。大丈夫だ。考え事をしていた」
俺は今、白昼夢を見た気がする。




