試み
「あら。床で寝てたの」
朝、俺を見た姫は少し残念な様子だった。
それにしても、昨晩のあれは何だったのだろうか。
気にはなる。だが今一番の関心事は魔法だった。
マナが地水火風ならば。
そうだとしたら。
何か出来そうな気がしている。
試してみるか。
俺は開けた土地と森の境目に来ていた。
ここならば誰もいない。
誰かに見られない方が良いだろう。
なにが起きるのか俺にも分からないのだから。
俺はマナに集中する。
俺とマナが一つになる。
マナとは地水火風。
取り敢えず火をイメージしてみようか。
俺の中でマナが揺らめく。
火。炎。揺らめく熱。イメージを強める。
マナの中に何かが現れる。
突然鼻先で熱い物が弾ける。
俺は思わず飛び退いた。
今のは炎だっただろうか。
もう一度試してみる。
上手く行く時もあれば行かない時も有る。
もう一度だ。
目の前のマナが揺らいで熱の固まりになる。
炎になりそうだ。
揺らめく赤い光。もっとマナに集中だ。
「お前。魔法が使えるのか。犬なのに」
集中が切れた。
目の前のマナが弾ける。
熱い。
俺は驚いて木の上を見上げる。
そこには一匹の猫がいた。
黒猫だ。
「信じられないぜ。お前、本当に犬だよな」
黒猫は木から降りると俺の目の前にやって来た。




