夢の記憶
「是非とも君の力を貸してほしいのだよ」
「私に軍人になれと」
「剣神と呼ばれる君だ。必ずや我が国の力に成るだろう」
俺は夢をみていた。
「お言葉ですが大統領。剣で銃弾は防げても砲弾は防げません」
まるで俺が犬でなくなってしまったような夢だ。
「君が軍に入る事が重要なのだよ。軍の士気も上がるし入隊希望者も増えるだろう」
何だろう。これは記憶なのか。
俺は随分と国に高く目を付けられてしまったようだ。
俺は夢の世界に深く落ちて行く。
物心付いた頃、俺は剣術の天才少年と言われていた。
成長と共に剣術の世界チャンピオン。剣術の絶対王者。
仕舞いには剣神か。
誰が言い出したのだろう。
幼少の頃から俺は剣を遊び相手にしていた。
俺が剣を振るう時、俺を囲む全ての剣が遊び相手になった。
俺の振るう剣も、相手が俺に向ける剣も。
どちらも遊び相手だ。
だから俺は剣に傷つけられることがない。
この話を理解出来る者はいなかった。
その結果だろう。剣神などと言われ始めたのは。
「君が居てくれればこの戦争は早く終わる。それだけ死者も減るのだよ。敵味方関係なく」
死者が減る。敵味方関係なく。
俺ならばそれが出来ると言うのか。
俺は考えさせてくれとその場を後にした。
軍に入った俺はできる限り戦死者を出さないように戦った。
上官に進言すると、俺の意見は良く通った。
気が付くと俺が隊を率いる立場になっていた。
降伏勧告が俺の戦いの基本だった。
そのために、圧倒的な有利を敵に見せ付けた。
あらゆる手を尽くして。
敵の要所を徹底的に叩いて有利な状況を生み出した事も有った。
この時俺は容赦しなかった。
「また敵が降伏しました。隊長は英雄です」
「英雄なんて言うな」
その言葉は烙印だ。
これ以上死者を増やしたくない。
だがらそうした。
いや。何なんだこれは。
こんな事はしたく無かった。
俺は一体何をしているんだ。
大勢の敵兵を死なせてしまった。俺のせいだ。
死者が減る。敵味方関係なく。
俺なら出来ると妻も信じてくれていた。
ああ、我が妻ティナよ俺の手は血に汚れてしまった。
俺は死んだら地獄に行くだろう。
すまない。ティナ。すまない。




