政略結婚
「ありがとうシェパード。そばに居てくれて」
姫は少し落ち着いたようだ。
涙が心を癒やす事も有る。
姫はしばらく俺を撫でていた。
考え事をしているようだ。
やがて姫は呟くように口を開く。
「私。グラビスの旦那さんと結婚するはずだったんだ」
えっ。
突然の言葉に俺は顔を持ち上げた。
「メネル王よ。王妃グラビスが亡くなったから、私が王の再婚相手」
いっぱいお話しましょうと言ってたが。
これまた重たい話しだ。
「私は結婚するつもりだったの。二つに分かれた国が再び一つになるんだもの」
話の背景はよく分からないが、政略結婚だろうな。
「メネル王は私の父の従兄なの」
おい。何だって。
なんとも無茶な縁談だ。
姫が俺の娘ならそんな婚姻は父親として絶対に認めないぞ。
俺はうなり声を上げた。
「ありがとう。でも王は良い方よ」
良い方でなく、良いおっさんだろう。
「メネル・オルエンティア・コロンバージュ。東域を治めるコロンバージュ家のメネル王」
姫が西域、王が東域か。
なる程。
婚姻で東西統一か。
しかしな。
姫はそれで良いのか。
「セバスティーノとテロワールは大反対したの」
家出を勧めた二人だな。
大反対は分かる。
だが、家出とは短絡的すぎないか。
かなりの政治的判断が求められる筈だが。
「国は騒ぎになってるかしら」
恐らく成ってるだろうな。
「セバスティーノとテロワール遅いな。帰ってくれば様子が分かるんだけど」
姫は眠そうに目を閉じた。
なる程。セバスティーノとテロワール。
その二人が居ないのは、姫が家出した後の様子を確かめに行っているのか。
状況次第では何時までも隠れて居られないだろうな。
姫はもう眠っていた。
俺も眠ろう。




